第20話 消された帰還点
赤晶鉱山は、迷宮都市ラクトから半日ほど北にある。
魔力を蓄える赤い結晶を産出し、灯石や魔導具の材料を王国中へ送っている。坑道の一部が自然迷宮とつながっているため、採掘夫にも冒険者資格が必要だった。
鉱山会社の監督官ゼムは、俺たちを歓迎しなかった。
「救助登録など、作業員を軟弱にするだけだ」
「現場から依頼がありました」
「誰が勝手に――」
採掘夫たちの視線を受け、ゼムは言葉を飲み込んだ。
結局、試験として一班二十三名の登録だけを許可された。
俺たちは鉱山入口の石台へ《帰還点》を設置した。灯石を鉄枠に収め、鍵をかける。
「警備は?」
「会社の衛兵がいる。余計な心配だ」
ゼムが鼻を鳴らす。
坑道へ入ったのは俺、リゼ、ティナ、フィンの四人。二十三名の採掘夫へ救助札を配り、作業経路と集合場所を確認する。
下層ほど空気が熱く、赤い結晶が脈のように壁で光っていた。
「振動、やっぱりあります」
フィンが足を止める。
俺にも分かった。一定間隔ではない。何か重いものが、さらに奥で動いている。
「今日はここまでだ。地上で図面と照らす」
ゼムからは最深部まで調べるよう言われていたが、契約外だ。全員へ集合をかける。
その時、坑道の奥で爆発が起きた。
熱風が駆け抜け、灯りが一斉に消える。
「点呼!」
返事が重なる。
二十二名まで確認できた。班長のバドだけがいない。奥の作業区画から、彼らしい悲鳴が聞こえた。
地図では、その先にも作業区画がある。
「リゼ、守りを。ティナは負傷者の確認。フィン、出口の状態を」
俺は帰還紋を起動した。
まず登録済みの二十三人を地上へ戻し、身軽になってから救助へ向かう。
そのはずだった。
青い線が伸びない。
《帰還点を検出できません》
「そんなはずはない」
もう一度魔力を流す。
反応は同じだ。
「ユアン?」
リゼが俺の顔を見た。
「入口の帰還点が消えている」
「爆発で壊れたのですか?」
入口は何層も上だ。今の爆発が届く場所ではない。
鉄枠に入れ、鍵もかけた。偶然では壊れない。
誰かが地上で、意図的に消した。
暗闇の奥から、二度目の爆音が響いた。
そして救難鐘が、三回鳴った。
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