第17話 二度目の迷宮
二度目の暗闇は、少しだけ狭くなかった。
フィンが昨日と同じ場所で深呼吸し、地図へ印をつける。
「ここまでは変化なし。足跡が二つ増えています」
「向こうも俺たちを警戒しているな」
防音罠の手前で止まり、ドーガから借りた長柄鋏で糸を切る。結界が一瞬だけ黒く光り、消えた。
昨日は撤退理由だった罠が、今日は準備済みの障害に変わる。
排気口の壁へ着くと、リゼが小槌で薄い部分を探した。三度目の音だけが低く響く。
「ここです」
音を立てないよう、目地を少しずつ外す。地上で待つ農夫たちが水路側から細い管を差し込み、湿らせた藁へ火をつけた。
革袋を押す。
白い水煙が、巣の奥へ流れ込んだ。
すぐに騒ぎが起きる。
ゴブリンの叫び。足音。だが、こちらへは来ない。地図どおり、広い中央路へ逃げている。
「第一段階、成功」
俺たちは別の小道を通り、広場の横へ先回りした。
リゼが畑側の出口へ大盾を置く。フィンは北の空洞への道を残し、目印の灯石を並べた。
最初のゴブリンが広場へ飛び出してきた。
目をこすり、咳き込んでいる。俺たちを見つけて棍棒を上げたが、北側の灯りを見るとそちらへ逃げた。
次々と続く。
十、十五、二十。
小さな個体もいる。ティナが数えながら、逃げ遅れた一匹を杖で北へ誘導した。
「戦わないんですね」
「畑から離れれば依頼は達成できる」
最後に、鉄兜をかぶった大柄な首領が現れた。
仲間が逃げる中、そいつだけは北を見なかった。
腰の角笛へ手を伸ばす。
「吹かせるな!」
リゼが駆けた。
大盾と大斧が正面からぶつかる。
今度は、剣を抜く時だった。
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