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外れスキル《撤収》しかない転生者、全員生還の冒険者ギルドを作る ~「逃げたら負け」の異世界ですが、命を持ち帰る俺たちが攻略率一位です~  作者: kaiくん
第二章 帰るための冒険

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第11話 加入希望者はゼロ

《帰還灯》開業初日。

 俺とリゼは、傾いた机を挟んで向かい合っていた。

「来ませんね」

「来ないな」

 外はよく晴れている。

 軒先の盾看板には、子どもたちが描いた青い灯が輝いていた。扉も開け放してある。朝から何人も足を止め、看板を読み、俺たちと目が合う前に立ち去った。

 依頼の相談は三件あった。

 加入希望者はゼロだ。

「昨日は、あれほど拍手されたんだけどな」

「助けてもらうのは歓迎でも、臆病者の一員になるのは嫌なのでしょう」

 リゼは淡々としているが、書類をそろえる手が少し速い。

 独立ギルドとして認可されるには、戦闘職、探索職、治癒職を一人ずつ含む五名以上の所属が必要だ。今は盾騎士のリゼと、資格停止中の俺だけ。

 仮登録期間は三十日。それまでに条件を満たせなければ、看板を下ろさなければならない。

「戦闘なら私が担当できます。あなたを探索補助と数えるとして、治癒師と、あと二人です」

「一番人気の職ばかり残ったな」

 治癒師は引く手あまただ。まともな者なら、設立したばかりの貧乏ギルドを選ばない。

 昼を過ぎた頃、救出したハンスたちがやって来た。

「俺たちを入れてくれ!」

 十一人全員が胸を張っている。

「実習に失敗した俺たちじゃ、普通のギルドには入れない。でも、ここなら役に立てる」

 うれしい申し出だった。

 だからこそ、俺は首を横に振った。

「今は駄目だ」

「どうして!」

「君たちは救助されたばかりだ。恩を返すために進路を決めるな。それに傷も治ってない」

 ハンスが反論しかけ、リゼが口を開いた。

「一か月後、まだ入りたいと思っていたら試験を受けに来てください。その間に基礎訓練をやり直しましょう。無償で教えます」

「本当に?」

「ええ。ただし、撤退訓練からです」

 子どもたちは顔を見合わせ、今度は笑ってうなずいた。

 夕方、彼らが帰ったあとで、俺は収支帳を開いた。

「家賃、灯石代、訓練用の薬。銀貨二枚は今日で消えた」

「私の貯金が少しあります」

「それには手をつけない。食事代くらい俺が――」

 言い終える前に、腹が鳴った。

 リゼが無言で干し肉を半分差し出す。

「初任給の前払いです」

「雇われてるのは君の方だろ」

 半分を受け取った時、扉の外に人影が立った。

 白い外套を着た、小柄な少女だ。治癒師の杖を抱きしめ、何度も看板と手元の紙を見比べている。

「あの……こちらは、治すのが遅い治癒師でも募集していますか?」

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