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10話 決戦、色欲戦

「うん…約束通り、全員を手中に収めてきたか。それにしても時間がかかったな。期限まであと3日だったぞ」


「間に合ったんだから良いだろ。さっさと始めようぜ」



その後、色欲以外全ての龍の民を味方に付けた俺は、ゼノとの最終決戦に臨もうとしていた。



「まぁ、そう急ぐなよ。少し話をしよう」



ゼノは椅子を二つ作り出すと、それに座る。



「俺は今する気は無いが」


「そう言うな、スキル寄生(パラサイト)の元人間。なぁ?」


「ッ!?」



全身から冷や汗が吹き出る。何故だ…何故こいつはそれを知ってる…?



「ほぉ、やはり当たってたか」


「お、お前…(ブラフ)だったのか?」


「いや、ほぼ予想は付いてたな。今までは気付かなかったがお前、魂が二つあるんだよ。それにな、流石に話が通じなさすぎだぜ。おい、起きろよ怠惰」



ゼノからとてつもない濃い魔力が当てられる。俺は気を失ってしまう。



「…久しぶりだな、色欲。お前と最後に話したのも随分昔の事だ」



俺に代わり、この身体の元の持ち主であるアルバトロスが人格を表す。そのままゼノが用意した椅子に座る。



「あぁ。俺はこうして今までやってきたが、お前もお前で苦労したようだな。まさか人間に身体を奪われるとは」


「…それは確かに事実だが、正しくはない。吾が本当にスキル程度で身体を奪われると思ったか…?」


「…なるほどな。明け渡したか。正しく怠惰だな。お前らしい」


「その通りだ。そして、それは最後まで変わらない」



アルバトロスの人格が帰り、俺の意識が戻る。



「はっ…今のは…?」


「お前の人格を押し込んで、アルバトロスの奴を無理やり出させたんだよ。ま、直ぐに引っ込まれちまったが」


「お前…なんであいつの名前を…?」


「簡単な事だ。俺もその肉体と同じ、七龍そのものだからだよ」


「なっ…!?」


「ま、俺の方は肉体は違う。お前は精神(なかみ)は別だが、肉体は七龍だ。俺は肉体は俺の血族だが、記憶と精神を『継承』させている。つまり、この中で唯一人本物が戦いに参戦していたとという訳だ。お前がアルバトロスの肉体を使って現れるまではな…」


「継承…?それはあの伝説の力か…?」


「…?あぁ…()()()、人間にも『継承』の能力を与えたとか言ってたっけか。あれは確か、『能力と魔力の継承』だったかな…?因みに、俺は『精神と記憶の継承』だ」


「…だから女なのに男口調だったのか」


「それは関係ないな。最早元の性別など俺には意味のない事だ。確かにここ最近は女続きだったが、最初は男ばかりだったぞ」


「…あんたの話もいいけど、そろそろやらないか?」


「そうだな。話に付き合わせた。始めるとしよう」



椅子から立ち上がり、身体を動かし始めるゼノ。それを見て俺も戦いへの準備を始める。



「ゼノ、確認だがどちらかがもう一方のことを認めるまで続けるんだろ?そして、殺しは無しだ。いいな?」


「あぁ、それで構わない。さて、やるか」



お互いが向き合い、俺達の間を風が通り、遂に戦いが始まった。



「身体強化!」


「部分龍化」



拳と拳がぶつかり合い、蹴りが交差する。

ゼノが龍の息(ドラゴンブレス)を放ってくる。俺も後から放ち、対抗する。結構、接戦出来てるんじゃないか?



「突発のこれにも対応できるか…じゃあ肩慣らしは終わりだ。そろそろ本番だな」



は?今なんて言った?()()()()()()だと?じゃあ今までの攻撃は準備運動に過ぎないってことか!



「さぁ…ついて来い!ジェイドぉ!」


「まじかよッ!」



その宣言通り、ゼノの攻撃は一気に加速した。なんとか間一髪の所で重症は避けているものの、いくつか細かい攻撃が当たり始めている。

それも要因の一つにあったのか、正直今は劣勢だ。



「おいおい、こんなもんかよ、ジェイド!お前が使ってるアルバトロスの肉体はそんなもんじゃないぞ!」



ゼノの言葉に返している余裕も無い。このままじゃ駄目だ。そう考えていた時だった。



『魔力を使え…』



はぁ?何だよ、この忙しい時に!



『魔力を使えと言っているのだ…』



お前と話してる余裕無いんだよ!分かんないかなぁ!

魔力使えば良いんだね?やりますよ!


やけくそになった俺は全身に魔力を流していく。すると。



「…見える」


「やっと身体に追い付いてきたかよ?」



俺は奴のパンチを素手で止める。ゼノの攻撃が先ほどより見えるようになったのだ。


お前…もしかしてこれを教える為に?



『いや、それはまだ準備段階に過ぎぬ。いいか、擬人化させたその肉体には二つの制限を掛けておいた。一つが以前解放させた、お前がその身体に慣れる為の制限だ。今回外すのはもう一つ。その肉体本来の能力を解放させる』



え?つまり…俺は今まで重りを付けて戦っていたようなもんってこと?



『そういう事だ。だが、今回制限を外すにしても一時的だ。お前はまだこの力を常に制御する事は出来ない。あまりに強大すぎる』



分かった…いずれその制限を解放出来るよう、努力するよ。今は一時的な超パワーアップって事だ?



『お前が身体に真に馴染むには数十年はかかるだろう。それはそれで別の問題が発生するが…まぁいい。その時説明してやる』



よし、今は聞きたいことは後回しだ!やってくれ!その力、耐えてみせる!



『…気を付けろ』



◇◇◇



「おい、何か来ないのか!このままなら、こっちから行くぞ!」


「…悪い、待たせた。続きやろうぜ」



俺は身体中から溢れる魔力を操作し、身体に張り巡らせ、俺自身を包む。先ほどより角が伸び、尻尾も太くなっている。



「ほぉ…さっき俺の攻撃を止めた時より更に強くなってるな。何をした?」


「別に。だが、どうやらこれが『怠惰』の力ってやつらしい」


「良いねぇ。まだまだお前との戦い、楽しめそうだ!」



再度、拳同士がぶつかり合う。しかし先ほどとは違い、衝撃で地面にヒビが入り、音が後からやって来る。



「はっはぁ!お前…面白いぜ、ジェイド!お前みたいな奴は久しぶりだ!」


「俺もそう言ってくれて嬉しいよ。だが、お前にもう一つ教えてやるよ、敗北ってやつをな」


「良いな良いなぁ!是非とも教えてくれよ!」



俺達の戦いは非常に分かりやすいものだった。こちらが拳を出せば、向こうも返してくる。向こうが蹴りを繰り出してくれば、俺も蹴りで対抗する。


俺はこの純粋な戦いが楽しかった。時間を忘れ、ゼノとの戦いを楽しんだ。龍の肉体に宿ってから初めて楽しかった戦いかもしれない。

一体どれほど時間が過ぎただろうか。俺達は息を切らし、お互いかなり消耗していた。



「行くぞ、ジェイド…こいつは俺の一番の技だ。お前も最高のものをぶつけてこい!」


「あぁ。お互い恨みっこなしだ!」



俺は魔力を圧縮させ、それを幾つも重ねていく。ゼノも巨大な魔力の塊を形成している。



「…行くぜ」


「来い、ジェイド」


「-崩魔終殲-」


「…最高だよ、お前。-天魔燼滅-」



二つの魔力の塊が正面からぶつかり合う。



◇◇◇



ぶつかり合いの後、地面に寝転ぶ俺達。



「おい、生きてるか、ジェイド!?」


「あぁ、当分動けそうにねぇけど」


「そうか…ふふ、はははははっ!」


「…何笑ってんだ」


「やはり俺の目に狂いはなかった。お前は最高だ!」


「はいはい、ありがとよ」


「俺は珠が消滅するまでか爆発をしのいでの耐久戦かと思ったが、あんな方法を取るとはな。そしてそれは、おそらく正解だった」


「今日は早く帰るって約束してんだ。あんま長々とやってらんなかったんだよ」


「ははははは!女達との約束の方が大事か!それもそうだな!俺もあいつらを待たせてる」


「…」



俺達の間に沈黙が流れる。ここからは本題に触れなければいけないだろう。



「…。まぁ、先の話をするか」


「それ、今度じゃ駄目か?」


「駄目だな。俺は今日、お前の下に付くことを決めた」


「なんでだよ!?」


「うるさい!細かいのは次にしろ!俺は、お前の下に付く!良いな!?」


「なんでそんな偉そうなんだよ…もうなんでもいいや…」



こうして龍の民統一戦は終わりを迎えた。

そして、とある地にて全員が集合し一堂に介する。



「暴食の龍の長、カルラ=グラトニー」


「憤怒の龍の長、ノヴァ=ラース」


「強欲の龍の長、ソラ=グリード」


「嫉妬の龍の長、ジゼル=エンヴィー」


「傲慢の龍の長、アスラン=プライド」


「そして、最後に色欲の龍の長、ゼノ=ラスト」


「「「「「「我等、怠惰の龍の長、ジェイド=スロウスに忠誠を誓おう」」」」」」


「あぁ、宜しく!」



俺達の戦いは一先ずここで終わったみたいだ。

でも、ここからも俺達の人生は続いていく。じゃあ、またいずれ。

ここまで読んでくれてありがとうございます!

1話を出した時は全く続ける予定などなく、何か案が浮かぶかもしれないという事で連載として投稿しました。

そして2話を出した後に今の統一戦の構想が浮かんだのです。所々文字数多くなったり、展開上最後の方に攻略がまとまってすみません!

ひとまず統一戦は終わったのですが、今回書かなかったことや、その先も考えていますのでその都度報告します。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


眞弥。

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