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スラッガー⚾️  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
10/29

夏合宿と高熱と父さんの夢

僕のチームは夏の大会が終わると、

毎年(もと)の近くに合宿に行くんだ。


そこは、目の前に富士山が見える大きなそうごう運動場で、野球場やサッカー場、なんめんものテニスコートや、陸上競技場まであるとても大きなせつなんだ。


宿泊施設もかんしてて、合宿をやるにはうてつけなんだ。



六年生も毎年最後にその合宿に参加して、

監督から「デンジャラス」の卒業証書を

もらって卒業して行くんだ。


もし、県大会に出場する時は、六年生は卒業せずに大会に向けたとっくんのための合宿になるはずなんだけど、まだ一度もそうなった事がない。



耀のサッカーチームも同じ場所で、

毎年合宿をやってるけど、

日程にっていが全然違うから耀は来なかった。


保護者も希望きぼうすれば参加できるけど、

母さんも仕事がいそがしくて来れなかった。



◇◇ 



合宿はちょう楽しかった。


練習が終わると、保護者の人達が作ってくれたカレーをみんなでおなか一杯食べたんだ。


僕達も少しつだったよ。

人参にんじんやジャガイモや玉葱たまねぎかわをむいたり、

飯盒はんごう炊爨すいさんのやり方も教わった。

はんあまい感じがして美味おいしかった。


めいぶつのホウトウなべも食べたよ。

味でさんさいながネギや豚肉がたくさん入ってて、メッチャ美味おいしかった。



近くのキャンプ場に行って、バーベキューもやったんだ。スイカりや、キャンプファイアもやったよ。


バーベキューは本当に美味おいしかった。

すみでお肉や野菜を焼くと、

何であんなに美味おいしいんだろう。

僕は食べすぎておなかが苦しくなっちゃった。


スイカりは意外いがいむずかしかった。

僕はタオルでかくしをして、みんなの声を聞きながら、思いっ切りスイカをぼうたたいたつももりだったけど、はずしちゃって、地面をたたいてた。



キャンプファイアの時は緒方コーチがギターをいてくれたんだ。


緒方コーチはギターが凄く上手うまくて、僕達は緒方コーチの伴奏ばんそうに合わせて肩を組み、いろんな曲を大声で歌ったんだ。

みんな声を出しすぎてノドがれちゃった。


監督と貴史君が振付ふりつりで、


女々(めめ)しくて』


を歌った時は、最高におもしろかった。


監督が貴史君のあしにしがみついた時は、

しすぎて、みんなおなかかかえて笑い

ころげてた。



◇◇



二日目の朝は、みんなでレンタル自転車をりて本栖湖を一周したんだ。



富士山がクッキリと大きく見えて、

とてもれいだった。


自然の景色けしきって本当にばららしい。


青い空と白い雲、山の緑と湖の水と、

富士山のコントラストがばつぐんなんだ。


湖ではおおぜいの人達がカヌーをいでた。


一周して自転車をり、岸辺きしべまでちかづくと、湖の水が透明とうめいんでてとても綺麗だった。



◇◇



僕がこうねつを出したのは、

三日目の朝だった。


その日は合宿の最終日。


午前中の練習が終わったら、みんなでパノラマ台に登って、富士山を見て、宿舎に戻ったら六年生の卒業式をやって、夕方頃には貸切バスに乗って地元じもとに帰るていだったんだ。



だけど僕は朝起きた時から、頭がボーッとしちゃって、美味おいしそうな朝食が食堂のテーブルの上にならんでるんだけど、全然食欲がわいてこなかった。


僕がテーブルについてボーッとしてると、

となりの席に座った聖司君が心配して、

声をかけてくれたんだ。 


「翔太、どうしたの? 全然食べてないじゃん。体調たいちょうわるいの?」


「うん、僕なんだか食欲しょくよくい。頭がボーッとして、体がフワフワする」


すると聖司君は、ぐに別のテーブルに座ってた監督とコーチにつたえてくれた。



緒方コーチが心配そうにやって来て、

僕のひたいに手を当てた。


「翔太君、大丈夫か? あついな、やっぱりねつがあるな」


って言ったんだ。


体温計ではかってみると、三十九・七度も

あった。



すると今度は監督が来て、僕のオデコに手を当てた。


「やれやれ、翔太もねつか。お前も、もう直ぐ大人おとなだな。あっ、こりゃヤバイな。翔太お前、今から直ぐかえれ。さっき、お前の母さんには電話しといたから、母さんの病院でてもらえ。たぶんだと思うけどな」


って言ったんだ。


僕は登山もしたかったし、凄くざんねんだったけど、緒方コーチの車で、みんなよりひとあしさきに帰ることになったんだ。



自分が病気だと思ったたんきゅうに体の力がけちゃって、立っているのもつらかった。


緒方コーチの車に乗り込んでシートベルトをめると、助手席をたおしてもらって、直ぐに横になったんだ。


「翔太君、病院に着くまで寝てな。たぶんつかれが出たんだよ。君は大会前からずっと頑張ってたからな」


緒方コーチが運転しながら言ったんだ。 



◇◇



僕は車の中でな夢を見た。


夢の中に父さんが出て来て、

僕と野球をやってるんだ。


夢の中の僕は三歳か四歳くらい。



あつなつの小学校のグラウンド、セミがたくさんいている。


僕は子供用のプラスチックのバットを持ってる。父さんは赤いのあるゴムボールを僕に向かって投げてた。僕がまだ小さいから父さんは下から投げてた。


「いいか翔太、ファーストストライクをねらうんだ。ボールをよく見てバットを振れよ。たまが来たらまよわずるんだ」


って、父さんが言った。


僕は父さんが投げたボールを、思いっ切り打ち返したんだ。


そしたら、ゴムボールは父さんの頭の上をいきおいよくえて行った。 


「翔太、凄いぞ、ホームランだ!」


って、父さんが大声で言った。


僕はうれしくて、くつをパッタンパッタンいわせながら、その場で飛び跳ねて喜んでる。



そしたら急に場面が変わって、

夢の中に耀が出て来た。


耀はこん色のかたを着て花火をしてた。


すると突然とつぜん、僕の方をキッとにらんで、


「私が作ったチョコ返して!」


って、僕に言ったんだ。


僕はひやあせをダラダラ流してる。



すると、また急に場面がわって、

今度は僕は大きなホールみたいな所に

いるんだ。


黒い服を着た人達がおおぜいいる。


白やむらさきの花がたくさんかざられて、おせんこうにおいがする。


だれかのおそうしきみたい。


母さんが黒い和服わふくを着て、

白いハンカチを目に当てて泣いてる。


さいだんほうを見ると、四角しかくがくぶちに入った誰かのえいがあるんだけど、光がガラスに反射はんしゃしてるし、まぶしくてよく見えない。


近づいて行って、白いひつぎのぞいてみると、

知らない男のひとが目をじて寝てた。


はだいろあさぐろくて健康けんこうてきな感じ、とても死んでるようには見えない。


()てよ、この人どこかで見たおぼえあるぞ]


って僕は思うんだけど、誰だかなかなか思い出せない。


すると僕の頭の中に、さいあくかんひらめいた。


[もしかして、これはとうさん?]


僕は、


「ウーッ!」


ってうめき声を上げて、そこでハッと目がめたんだ。 


「翔太君、大丈夫かい?」


緒方コーチがうんてんしながら僕をかえった。


体中に冷や汗をかいてて、気持ち悪かった。


車は高速道路を走ってるみたい。


僕は夢だと分かってホッとしたんだ。


「うん、大丈夫です」


って言って、僕はまた寝ちゃったみたい。



母さんがつとめてる病院に着くと、

緒方コーチが肩をすって起こし

てくれた。


「翔太君、着いたよ。きみかあさんの病院だ」


まだおひるまえだった。



母さんが病院のげんかんくるませで、

心配そうに僕をってた。

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