第25章 1回目の練習
次の金曜日、正斗と通は、体育館の前で扉が開くのを待った。ガラガラガラ、扉が開くと、そこには安藤康先生がいた。
「こんにちは。」
「おう! こんにちは! いい挨拶だな。」
正斗は褒められた。後ろには、幼稚園1~3級の人が10人ほど並んでいた。
「よし! 入ってこい!」
するといきなり後ろの人たちが正斗と通を押しのけて運動場に入っていった。中に入ると、生徒は体育館の壁沿いをぐるぐると走っていた。すると安藤がこっちに来た。
「これが個々のクラスの準備運動だ。体育館の壁に沿って10周走るんだ。だいたい1kmぐらいかな。さあさあ早く走りなさい。1位の人はもう5週目に行っているよ。」
正斗は足が遅いのだ。しかも年少。あっという間に通から引き離された。何分かかるだろうか。正斗以外の全員が走り終わったときでも、まだ6周しか走っていなかった。
「遅いぞ――。正斗――。スピードアッッップ――――――。」
安藤が叫んだ。そして9周目で力尽きてしまい、倒れこんでしまった。
「よくもそんなんであんなボール投げられるな――。」
安藤はあきれたような顔をして抱き上げた。
「さあ、練習を始めるよ! 2人1組でグループを作って!!」
安藤は1グループに対して1つボールを渡した。同じ級同士で練習を行うようなので、通とは別の人とペアを組んだ。名前は大平千尋だ。年長だ。そもそも幼稚園1級は正斗以外全員年長だ。
「正斗君っていうの。年少さんなのにすごいね。」
千尋は優しく正斗に声をかけた。
「練習開始!」
安藤の大きな声が響いた。正斗はさっそくありったけの力でボールを投げた。すると千尋が手を出す間もなく腹部に当たり、後ろに倒れてしまった。
「だいじょうぶか?」
安藤が駆け込んできた。
「正斗君。君に投げる練習は必要ない。手加減して投げてくれ。」
千尋は、『なんで年少の人に手加減されなきゃいけないんだよ!』と思った。
「次はよける練習でーす。」
ぶっきらぼうに千尋は言った。
「手加減しなくていいわよ。」
正斗はありったけの力を出して投げた。さっきよりも早く投げた。すると、よける間もなく鼻にボールが当たった。そして後ろに倒れた。
「大丈夫か?」
安藤が駆け寄ってきた。
「だから手加減しろって言っただろう。」
千尋の鼻からは、鼻血が出ている。
「だって千尋が、『手加減しなくていい』て行ったんだもん。」
「千尋も強がりはやめなさい。正斗くん、わしとやろう。」
正斗は本気の力を出していくらでもボールを投げられるようになった。そして、記念すべき第1回目の練習が終わった。
第26章へ続く。




