第48話:病室での、小さな誓い
お読みいただきありがとうございます。
第48話は、母との対話です。
「形」よりも「心」を重んじる母の言葉に、志保たちは救われます。
しかし、物語はここで終わらず、新たな嵐の予感が……。
静岡から戻り、東京の病院へ転院した母を見舞う。
午後の日差しが差し込む病室で、母は少しずつ血色を取り戻していた。瀬尾さんが持ってきた淡いピンクのカーネーションを眺めながら、母はふと、窓の外に視線を向けた。
「志保、瀬尾さん。……この前は、変なこと言ってごめんなさいね」
以前の「早く形にして安心させて」という言葉を指しているのだと、すぐに分かった。私は言葉を探したが、母は穏やかに続けた。
「あなたたちが実家まで一緒に来てくれた時、二人の背中を見ていて思ったの。ああ、この子たちはもう、紙切れ一枚の約束なんかより、ずっと深いところで繋がっているんだなって」
母は痩せた手で、私の手と瀬尾さんの手を重ね合わせた。
「結婚してもしなくても、どっちでもいい。でもね……。志保が倒れた時に、真っ先に駆けつけてくれるのが瀬尾さんであってほしい。瀬尾さんが辛い時に、一番に隣にいてあげるのが志保であってほしい。……お母さんは、ただ、二人がずっとそうやって寄り添っていてくれたら、それで十分よ」
それは、古い呪縛からの解放だった。
親を安心させるための「義務」としての結婚ではなく、互いを慈しむための「選択」としての関係。
「……お母さん。ありがとう」
「ありがとうございます。……約束します、お母さん。僕が一生、志保さんの隣を離れません」
瀬尾さんの声は、病室の静寂に深く響いた。
それは婚姻届への署名よりも、私にとっては重く、尊い誓いのように感じられた。
病院を後にする時、夕暮れの廊下を歩く私たちの歩幅は、以前よりもずっと揃っていた。
外部からのプレッシャーが、母の慈愛によって「祝福」へと変わった瞬間だった。
けれど、そんな幸福な余韻を打ち消すように、私のスマートフォンが激しく震えた。
表示されたのは、会社からの緊急連絡。
この時の私はまだ知らなかった。母との誓いを交わした直後に、私のキャリアを根底から揺るがす「究極の選択」が待っていることを。
第48話、いかがでしたでしょうか。
お母さんの理解ある言葉に、思わず目頭が熱くなる回でした。
「一生、隣を離れません」という瀬尾くんの言葉は、プロポーズ以上の重みがありましたね。
次回、物語は衝撃の展開へ向かいます。
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