第47話:家族の肖像、二人の境界線
お読みいただきありがとうございます。
第47話。厳格な父が隠し持っていた、息子への想い。
親子の不器用な繋がりと、それを静かに見守る志保の優しさを描きました。
「……あんな言い方しかできない人なの。ごめんなさいね、志保さん」
父との刺々しい会話が途切れた隙に、瀬尾さんの母親が私をキッチンへ招き入れた。
リビングでは、瀬尾さんとお父様が沈黙したまま、冷え切ったお茶をすすっている。
「涼介が会社を辞めた時、あの人は本当に激怒したわ。でもね……」
お母様は、戸棚の奥から古びたファイルを取り出した。
そこには、地域のフリーペーパーや、かつて『Lumière』が小さく掲載された雑誌の切り抜きが、日付順に丁寧にスクラップされていた。
「これ、主人が自分で集めているのよ。涼介には『遊びだ』なんて言っているけれど、誰よりも息子の動向を気にしている。……不器用な人なの」
スクラップの余白には、お父様の筆跡で「客筋は悪くない」「花の鮮度が上がった」といった、批評めいた、けれど愛情深いメモが書き込まれていた。
私は胸が熱くなるのを感じた。
親子の境界線。それは時に鋭く互いを傷つけるけれど、その根底にあるのは、あまりにも重くて、けれど確かに存在する「期待」という名の愛だった。
「お父様、本当は……」
リビングに戻ろうとした私を、瀬尾さんが制した。
「……言わなくていいよ、志保さん。母から何か聞いたんだろうけど。……今は、これでいいんだ」
瀬尾さんはお父様の厳しい視線を真っ向から受け止めていた。
和解したわけではない。理解し合えたわけでもない。
それでも、彼はお父様に対して「自分はここで生きている」という決意を、逃げずに示し続けていた。
帰り道、夕闇に染まる住宅街を歩きながら、瀬尾さんは私の手を強く握った。
「志保さん、今日はありがとう。……君が僕の味方でいてくれるだけで、僕はもう、誰に何を言われても傷つかずに済むんだ」
家族という、切っても切れない縁。
その複雑さを知った私たちは、自分たちの「形」をどう作るべきか、これまで以上に真剣に考え始めていた。
第47話、いかがでしたでしょうか。
お父さんのツンデレ(?)ぶりが発覚しましたね。
面と向かっては言えないけれど、応援している。
そんな大人の家族のリアリティを感じていただければ幸いです。
物語はいよいよ、二人の将来を左右する大きな決断へと近づきます。
応援してくださる方は、評価やブックマークをお願いいたします!




