第35話:甘い綻びの先にある、確かな約束
お読みいただきありがとうございます。
第2部、ついに完結です。
紆余曲折を経て、ついに将来への「約束」を交わした二人。
大人の恋が、一つの完成形を迎える瞬間を見届けていただければ幸いです。
引越しの荷解きが半分ほど終わった土曜日の夕暮れ。瀬尾さんに誘われ、私たちはマンションの屋上庭園へと向かった。
代々木上原の街並みの向こうに、燃えるような夕日が沈んでいく。
「志保さん。今日、ここに来たのは、あなたに伝えたいことがあったからです」
瀬尾さんは柵に手をかけ、遠くを見つめながら語り始めた。
それは、店を大きくすることでも、かつての証券マンに戻ることでもなかった。
「僕はこれから、この場所——『Lumière』を、志保さんのような働く人たちが、自分を取り戻せる場所にしていきたい。そして、その場所を守りながら、僕は一生、あなたを一番近くで支え続けたいと思っています」
彼は私に向き直り、ポケットから小さな箱を取り出した。
中に入っていたのは、派手な宝石ではなく、シンプルで重厚なシルバーのリングだった。
「これは、契約や縛りではありません。志保さんがどこまで高く飛んでも、帰ってくる場所は僕の隣だという『約束』の印です」
私は震える指でそのリングを受け取った。
三十八歳。もう人生に新しい「約束」なんて現れないと思っていた。
傷つくのが怖くて、一人でいる方が楽だと自分に言い聞かせてきた日々が、遠い過去のように感じる。
「……瀬尾さん。私、あなたを信じて良かった。綻びだらけの私を見つけてくれて、ありがとう」
彼が私の薬指にリングを滑り込ませる。その銀色の輝きは、夕日を反射して、私たちのこれからの道を照らしているようだった。
完璧じゃなくてもいい。若くなくてもいい。
ただ、この温かな鼓動を分かち合える人がいる。
私たちは深い接吻を交わし、オレンジ色に染まる街をいつまでも眺めていた。
甘い綻びを越えた先に待っていたのは、何よりも強くて優しい、二人の新しい現実だった。
第2部「甘い綻びと戸惑い」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
仕事の危機、宇佐美の襲来、そして自分自身の不安……それらを乗り越えたからこそ、この指輪の重みが志保の心に響きます。
物語はいよいよ第3部「大人の恋のハードル」へ。
同棲生活の始まりと共に、さらなる現実的な問題(親の問題、海外転勤、将来の形)が二人に立ちはだかります。
「二人の幸せをもっと見たい!」と思ってくださる方は、
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