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夜更けのルミエール〜花と珈琲を愛する年下の店主が淹れるハーブティーは、忘れかけていた恋の味がした〜  作者: 寝不足魔王


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第33話:鎧の下に隠した、本当の願い

お読みいただきありがとうございます。

第33話は、志保の「降伏」と、二人の本当の和解です。

「完璧」を捨てた志保が手に入れた、本当の幸せの形を描きました。


 彼の胸の鼓動が、泣きじゃくる私の耳に心地よく響く。

 瀬尾さんは、インクで汚れたその手で、私の背中を何度も、何度も優しく撫でてくれた。


「……怖かった。あなたが私のせいで、またあの辛い数字の世界に戻ってしまうのが。……私のせいで、あなたが壊れてしまうのが、一番怖かったの」


 腕の中に顔を埋めたまま、私は心の内を吐き出した。

 瀬尾さんは少しだけ私を離し、私の目尻に溜まった涙を親指でそっと拭う。


「壊れませんよ。かつての僕は、誰かの期待に応えるために数字を扱っていた。でも今回は、志保さんの未来を守るために、僕自身の意志で戻ったんです。……これは、僕にとっても『再起』だったんですよ」


 彼は私の手を取り、その手のひらに自分の額を預けた。

「志保さん。あなたはいつも、完璧なディレクターとして、強く気高くあろうとする。それもあなたの魅力だけど……僕が一番守りたいのは、そんな鎧の下に隠れている、泣き虫で不器用な、僕だけの志保さんなんです」


 その言葉に、胸の奥にこびりついていた最後の「虚勢」が溶けて消えた。

 三十八歳。いい加減しっかりしなきゃいけない。人より秀でていなきゃいけない。

 そんな強迫観念から、私はようやく解放された。


「……瀬尾さん」

「はい」

「私、もう一ノ瀬ディレクターじゃなくていい。……あなたの隣で、ただの志保でいたい。かっこ悪くても、若くなくても……あなたのそばにいても、いいかしら」


 瀬尾さんは、あふれんばかりの愛おしさを湛えた瞳で私を見つめ、力強く頷いた。

「もちろんです。むしろ、それ以外の場所には行かせませんよ」


 深夜のルミエール。

 散らばった資料と冷え切った空気の中で、私たちはようやく、飾り気のない本物の心で結ばれた。


第33話、いかがでしたでしょうか。

ついに志保が、自分の「弱さ」を幸せとして受け入れました。

「鎧の下の志保さん」を愛してくれる瀬尾……最高に甘い展開ですね。


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