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夜更けのルミエール〜花と珈琲を愛する年下の店主が淹れるハーブティーは、忘れかけていた恋の味がした〜  作者: 寝不足魔王


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27/70

第27話:ルミエールの外は、土砂降りの雨

お読みいただきありがとうございます。

第27話は、心身ともに限界を迎えた志保の「雨宿りさえできない」孤独を描きます。

一番会いたい人の隣に別の誰かがいる。その残酷なコントラストにご注目ください。


 早退の許可を求める際、上司の目は明らかに冷ややかだった。

 オフィスを出ると、空は私の心を見透かしたように、重く、どす黒い雲に覆われていた。

 傘を持つ気力さえなく、降り出した激しい雨に打たれながら、私はふらふらと歩き出した。


(……どこへ行けばいいの)


 タワーマンションの自室に戻れば、そこにあるのは無機質な静寂だけだ。

 気づけば、足は代々木上原の坂を登り、あの場所へと向かっていた。

 『Lumière』。

 

 雨に煙る窓の向こう、琥珀色の光の中に、私は彼の姿を見つけた。

 瀬尾さん。昨夜、私があんなに酷い言葉で傷つけてしまった人。

 

 謝らなきゃ。

 そう思ってドアに手をかけようとした瞬間、私の動きが凍りついた。

 

 店の中、瀬尾さんの隣には、またあの結衣さんがいた。

 彼女は瀬尾さんの腕を親しげに掴み、何事かを楽しそうに話し、笑っている。瀬尾さんもまた、昨夜の険しい表情を消して、彼女に穏やかに微笑み返していた。

 

「……そう、よね」

 

 自嘲の言葉が、雨音に消える。

 昨夜、私自身が言ったのだ。「あの子みたいな子の方がお似合いだ」と。

 彼は私の望み通り、私のような面倒で重い女ではなく、あんな風に無邪気に笑う光のそばにいることを選んだ。ただ、それだけのこと。

 

 ずぶ濡れのスーツが、鉛のように重い。

 私は店に入ることもできず、雨の中に立ち尽くした。

 一歩、店の中へ踏み出す勇気さえ失った三十八歳の私は、ただ震えながら、自分から手放したはずの温もりを、遠くから眺めていることしかできなかった。


第27話、いかがでしたでしょうか。

ついにどん底まで落ちてしまった志保。

雨の中、店に入れない彼女の姿に胸が締め付けられます。

ここからの逆転はあるのか……。


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