第26話:嫉妬は、三十八歳のプライドを削る
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第26話は、公私ともに追い詰められる志保の姿を描きます。
宇佐美の冷酷な追い打ちが、志保の誇りを容赦なく削り取っていきます。
一睡もできないまま、朝を迎えた。
鏡に映る自分の顔は、隠しきれない疲労と後悔でひどく老け込んで見えた。
瀬尾さんにあんなことを言いたかったわけじゃない。分かっているのに、心が一度ささくれ立つと、制御が効かない。
重い足取りでオフィスへ入ると、異様な熱気がフロアを包んでいた。
「一ノ瀬さん、おはようございます。……例の大型案件、クライアントから急ぎの指名が入りましたよ。ただ、僕の方に」
宇佐美君が、勝ち誇ったような笑みを浮かべて私のデスクに歩み寄る。
彼の手にあるタブレットには、クライアントからの直接メール。そこには『担当を一ノ瀬から宇佐美に変更してほしい』という旨が、丁重な言葉で綴られていた。
「……どういうこと? 私、昨日まで先方の担当者とやり取りしていたはずよ」
「あなたの『不安定さ』が伝わったんじゃないですか? 最近のミス、そして昨日の不自然な早退。……クライアントは敏感ですから」
宇佐美君の声が、周囲の部下たちにも聞こえるように響く。
私の完璧だったキャリアが、音を立てて崩れ落ちていく。
これまで守り続けてきた「一ノ瀬志保」というブランドが、たった数日の綻びで、いとも簡単に若い才能に取って代わられていく。
「嫉妬で見苦しくなる前に、身を引くのも『大人の作法』ですよ、一ノ瀬さん」
彼の囁きは、昨日私が瀬尾さんに投げつけた、卑屈な言葉と重なった。
プライド。三十八年間、それだけを頼りに生きてきた。
でも、仕事も、恋も、自分で自分のプライドを削り、ボロボロにしてしまった。
震える指先を隠すようにデスクの下で握りしめる。
瀬尾さんに謝りたい。今すぐにでも彼に抱きついて泣き叫びたい。
けれど、自ら突き放した私に、もうその資格があるのかさえ、分からなくなっていた。
第26話、いかがでしたでしょうか。
仕事での担当変更……バリキャリにとってこれ以上の屈辱はありません。
ボロボロになった志保に、救いの手は差し伸べられるのか。
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