第25話:元同僚の影と、瀬尾の沈黙
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第25話、ついに二人の間に大きな亀裂が走ります。
余裕のない時ほど、一番大切な人を傷つけてしまう。
38歳の志保が抱える孤独な叫びを描きました。
結衣さんが嵐のように去った後の店内は、耳が痛くなるほどの静寂に包まれた。
瀬尾さんが淹れ直してくれたコーヒーから湯気が立っている。けれど、私はそれを見る気力さえなく、カウンターの木目をじっと見つめていた。
「……ごめんね、志保さん。結衣は昔からああいう性格で、他意はないんだ」
「……分かってるわよ」
可愛げのない返事が口をつく。
分かっている。彼女に悪気がないことも、瀬尾さんが私を大切に思っていることも。
でも、今の私には、その「優しさ」さえも自分の惨めさを際立たせる装置にしか見えない。会社では宇佐美君に居場所を奪われ、ここでは「仕事ができる年上の女性」という役割を演じることにも疲れ果てていた。
「志保さん、顔色が悪い。……何かあったなら、話してほしい」
「話してどうなるの? 瀬尾さんに、私の仕事のミスを肩代わりしてもらえるの? それとも、失われつつある若さを返してもらえるの?」
言ってはいけない。そう叫ぶ理性を、どす黒い感情が塗りつぶしていく。
瀬尾さんの顔から、いつもの穏やかな色が消え、痛ましいものを見るような表情に変わった。
「……どうして、そんな風に自分を傷つけるんですか」
「傷ついているのは事実よ。……ねえ、瀬尾さん。あなたには、あの子みたいな……結衣さんみたいな、明るくて、未来だけを見て笑っている子の方がお似合いなんじゃない? 私みたいな、過去の栄光に縋ってボロボロになってる女じゃなくて」
瀬尾さんの手が、ピクリと震えた。
彼はそのまま、何も言わずに視線を落とした。
激しい怒鳴り合いになる方が、まだマシだったかもしれない。
彼から返ってきたのは、拒絶よりも重い、深い「沈黙」だった。
「……失礼するわ」
耐えきれず、私は逃げるように店を飛び出した。
背後でドアのベルが悲しげに鳴ったが、彼が追いかけてくる気配は、今夜だけはなかった。
第25話、いかがでしたでしょうか。
ついに言ってしまった志保……。瀬尾の沈黙が胸に刺さります。
二人の恋はこのまま綻びてしまうのか。
ハラハラする展開ですが、応援していただけると嬉しいです!
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