第19話:日曜日の代々木公園、つないだ手
お読みいただきありがとうございます。
第19話は、初めての「外デート」です。
暗い店内では見えなかった、年齢差や社会的な目が、志保の心に影を落とします。
日曜日の昼下がり、代々木公園は家族連れや若いカップルの活気で溢れていた。
私は、ベージュのロングスカートにフラットシューズという、仕事場では絶対に見せないカジュアルな装いで、隣を歩く瀬尾さんを意識しすぎていた。
隣を歩く彼は、シンプルなニットにデニム姿。店で見せる時よりもさらに若々しく、時折すれ違う女性たちが彼に目を向けるのが分かった。
「……志保さん、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。今日はただの休日ですから」
瀬尾さんが笑って、私の右手をそっと包み込んだ。
温かくて、逞しい手。
けれど、繋がれた瞬間、私は反射的に周囲を見渡してしまった。
もし部下に見られたら。もし知り合いのクライアントがいたら。「三十八歳の女が、四つも年下のイケメンと浮かれている」と後ろ指を指されるのではないか。
そんな強迫観念に負け、私は自分から、するりと手を解いてしまった。
「……ごめんなさい。なんだか、落ち着かなくて」
「…………」
瀬尾さんは空中に取り残された自分の手を見つめ、それから寂しそうに、けれど無理に作るような笑顔を浮かべた。
「……そうですね。一ノ瀬ディレクターは、有名人ですから」
「違うの。そういう意味じゃなくて……」
言い訳をしようとして、言葉が詰まる。
違う。私はただ、自分が「不釣り合い」だと思われるのが怖いだけだ。
若くて、自由で、これから何にでもなれる彼と。
一つのキャリアを必死に守り、若さを失いつつある私。
公園の広場では、若いカップルが笑いながら追いかけっこをしていた。
その眩しさが、今の私には酷く残酷に思えた。
「志保さん。僕は、あなたと手を繋いで歩けるだけで、十分に誇らしいんですよ」
瀬尾さんは、立ち止まった私の前に回り込み、もう一度、今度は逃がさないように両手で私の手を包み込んだ。
「誰がどう思おうと関係ない。僕が見ているのは、世界で一番綺麗な僕の恋人です」
彼の真っ直ぐすぎる瞳が、私の卑屈な自意識を射抜く。
私は情けなさに泣きそうになりながら、今度は解かないように、彼の指を強く握り返した。
第19話、いかがでしたでしょうか。
つないだ手を離してしまう志保……。大人の女性だからこその「臆病さ」に共感していただけたら嬉しいです。
それでも真っ直ぐに向き合ってくれる瀬尾の包容力が、今回も光ります。
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