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アルディア大陸戦記~空を制する者~  作者: 杉本らあめん


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第14話 王国中枢会議

 王国軍のレーン工業地帯占領から、数日。ルーヴァリア王都は、勝利に沸いていた。

 通りには国旗が掲げられ、新聞は連日、戦果を大きく報じている。


「ダッツ帝国の要衝陥落」


「レーン工業地帯占領」


 ――その見出しは、人々に確かな高揚を与えていた。だが、王国軍総司令部の空気は、それとは少し違っていた。王国軍総司令部会議室。煌びやかな装飾品に重厚な扉。部屋の中心の円卓を囲むように座っているのは、王国の中枢の人物。第一声を発したのは、その中でもひときわ大柄な男だった。


「問題は、フラング共和国の出方だ。」


 王国軍最高司令官シュランタ。円卓には、シュランタの他に、総司令部副司令官であるトーラス上級大将。そして外務、内務大臣に財務官僚。さらに数名の高級将官が並ぶ。


「レーン工業地帯は、単なる前線拠点ではない。」


 外務大臣が静かに言葉を継ぐ。


「ダッツ帝国にとって、最大の工業基盤の一つ。兵器生産の中枢です。」


「つまり我々は――」


 財務官僚が口を挟む。


「資源を手に入れたと同時に、標的にもなった。」


 短い沈黙。誰もが同じことを危惧するに至っている。


「帝国軍のレーン奪還作戦は、確実に来る。」


 シュランタ総司令官の声は断定的だった。


「しかも、大規模にだ。」


 地図の上に、複数の矢印が引かれる。北方からの増援、東からの迂回、そして――


「帝国のみであればこれまで通り、空で叩ける。問題は西だ。」


 外務大臣が指で示したフラング共和国。


 これまで直接的な対立までは至っていなかったものの、国境付近で圧力は受け続けている。


「いまのところ公には中立を保ってはいます。」


 将官の言葉に外務大臣の視線が鋭くなる。


「ダッツ帝国が資源供給を絶たれ、王国有利に傾く中、フラングがどう動くか…。」


「王国がこのまま帝国を侵攻すればいずれ、フラング共和国は大国と化した我ら王国と対峙することになる。」


「そうなる前に帝国支援に回る可能性がある、か。」


「あるいは我らと手を組んで帝国と相対するか…。」


 シュランタは低く呟く。


「最悪なのは、帝国と共和国の対王国共闘だ。帝国の南方方面軍とやりあうだけでも、我らは確実に押されていた。空でなんとか勝ったというだけに過ぎん。レーンを失った今、帝国は中央軍の派遣も含めて本腰で我らに向かってくるだろう。それに留まらずだ…」


 間を開けて続ける。


「共和国が西から仕掛けてくるとなれば、戦力差は圧倒的だ。空があるとは言えども、たかだか数機だ。二つの戦線で数で押し切られれば、我々に勝機はない。」


 空気が一段重くなる。


「共和国は今回の占領について何と言っている。」


 シュランタが外務大臣に問う。


「地域情勢安定の観点から王国のレーン占領は誠に遺憾である、と。」


「なにが地域の安定だ。奴らから圧をかけてきたのではないか。」


 一人の将官が愚痴る。


「それだけか。」


「それだけだ。共和国も我々の航空戦力を見て、対応を決めかねているのではないか。」


「どちらにも転びうるな…。」


 しばしの沈黙――


「どちらにせよ、航空戦力の大幅な増強が急務ですな。」


 沈黙を破ったのは、これまで口を閉ざしていたトーラス上級大将だった。


「最低でも十機。対帝国と対共和国。それぞれ五機ずつ隊を組んで、二つの戦線に派遣できれば戦えるのではないですかな。」


「戦闘機については予算さえ通していただければすぐにでも。ただ…パイロットの養成にはそれなりの時間が必要かと。」


 答えるのは、兵の編成を担う将官だ。


「予算はなんとかする。手続きを始めてくれ。」


 財務大臣が即答する。


「レーン工業地帯の占領を確実なものにしてはどうか。」


 内務大臣が口を開く。


「…具体的には?」


「レーン工業地帯の早期復旧と再稼働。それと作業員の確保。」


 シュランタが頷く。


「復旧だけでは足りん。滑走路の整備も必要だ。レーンの補給拠点を航空基地として再整備させよう。」


「軍だけでは足りん。行政も送り込む必要がある。」


「すでに手配は進めている。」


 外務大臣が一枚の書類を机に置く。


「同時に、外務省からフラング共和国へ特使を派遣しておこう。」


「牽制か?」


「そうだ。あわよくばこちらに引き込みたい。」


 迷いのない答え。


「“レーンはもはや我々の領土である”と示しつつ、“敵に回ると空から襲うぞ”と暗に伝える。」


 財務官僚が苦笑する。


「虚勢だな。まだ我々にそこまでの力は無いというのに。」


「外交とはそういうものだ。」


 外務大臣は淡々と言った。


「よし。ある程度まとまったな。」


 シュランタ総司令官が切り上げにかかる。


「では、そういうことだ。また次回の会議で進捗を共有してもらおう。“緊急”じゃなければよいがな。」


 シュランタはそう言って会議室をあとにした。




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