行き止まりにつき、共同戦線
ゼファリス王国を目指す旅の途中、ウィータとムラクニは山越えの先にあるルワン村へ辿り着く。
しかし、王国へ続く街道は地震による地崩れで完全に寸断されていた。
村では街道復旧を巡って騎士と村長が激しく対立しており、二人は王国直属騎士団の副隊長・ケルシアと出会う。
旅が始まって早々、思いもよらぬ足止めにあってしまうのだった。
「さて、どうするかなぁ」
宿で部屋を借り、二人で悩みながら、これからの話をしている。
「家を出て、早速行き当たってしまったな」
「行き方としては、ざっくり分けて二つ。一つはここでしばらく滞在して、道が舗装し直されるまで待つ方法。二つ目は、どんなに荒れていても国の方向へ無理矢理突っ切る方法だね」
どちらとしても微妙である。資金が底をついて飢えるか、森を彷徨って飢えるかと言う話だ。
二人で俯き、腕を組み、妥当な解決法を模索する。ふと、ウィータが立ち上がって外を覗いた。すると、村人の声が聞こえてきた。
「いやぁ、畑作りの時は助かったわぁ。しっかしあんた。何で俺の農耕なんか手伝ってくれたんだ?」
「そりゃぁ、うちが万屋だからだな。あんたんとこの収穫が無いと、うちの稼ぎが減っちまう」
「でも俺は農業を楽しむことが目的だぜ? お前にはメリットが無いだろう」
「バカ言え、俺は家を裕福にするためにやってんだ。目的が互いに違うとも、その手段でそっちもこっちも願いが叶うなら、快くそっちの方法に乗っ取って手伝ってやるってもんよ」
「そう言うもんか…なるほど納得した」
談笑をする麦わら帽子をかぶった男と少し無なりのいい男に、ウィータを指をさした。
「あれでいいんじゃないか?」
そうを聞いたムラクニも、「あ~」と同感した。二人は宿に荷物を預けてから、先ほど見えた馬舎の方へ向かった。
その頃。
「はぁぁぁぁ……」
馬舎の隣にある小屋で、一人の少女が机に突っ伏していた。
「なんでこのタイミングで私なんスかぁ……」
ケルシアは騎士団へ入った日から、一人の騎士に憧れていた。
シルフィード騎士団の副団長だ。強く、美しく、誰よりも人を導くその姿に憧れ、自分もいつかあんな騎士になりたいと思っていた。
そして、その副団長が長い遠征から帰ってくる。
ようやく会える。
そう楽しみにしていた矢先だった。
任務。
しかも遠方。
「絶対間に合わないじゃないッスか……」
机に額をぶつけながら嘆いていると
コンコン
扉を叩く音が響いた。
「はいはーい!」
慌てて姿勢を正し、顔を軽く叩いて気持ちを切り替える。
目の前には先程出会った金髪の少年と武士の青年。ウィータとムラクニがいた。
「あっ!」
ケルシアが目を丸くする。
「さっきの旅人さん!」
僕が軽く頭を下げると、ケルシアは不思議そうに首をかしげた。
「どうしたんスか?」
「単刀直入に言うと...調査とやらを手伝わせてください」
一瞬時が止まる。彼女は数回瞬きを繰り返した。
「いやいやいや、急すぎるッス!」
「迷惑でしたか?」
「いや、迷惑どころか嬉しいッスけど!」
ぱっと表情が明るくなる。
「でも、本当にいいんスか?」
「もちろん」
僕が頷くと、ケルシアは勢いよく両手を握った。
「助かるッス!」
この上ない吉報にケルシアの顔がパァッと明るくなった。一人だとどうにも事が進まないが、三人ならまだやりようがある。さっそく二人を中に入れて支度をする。
椅子へ腰掛けたケルシアは、ふと思い出したように首を傾げる。
「でも、どうして急に?」
さっそく彼女は一つの疑問を投げかけてきた。そして、それに対する答えはもう見ている。
「さっき道端で村人と言い合ってたのは、その調査のためですか?」
「そうッスね。私、今すぐにでも任務を終わらせて帰りたいのに、村長が「ここは俺達の土地だ!」ってごねるんスよ~」
「なら話は簡単だ。僕たちは早く国に行きたいし、君もいち早く国に帰りたい。一緒にやれば、どちらも叶えることが出来る」
「分かったッス!これは手伝いと言うより共同作業ッスね。そうときたら、一緒に頑張りましょー!」
3人で机を囲い、作戦を立てることにした。まず、ケルシアが話を切り出す。
「一番の障壁はあの村長ッス…!あの村長が頑固なせいで、この村で動こうにも動けないんスよ」
ケルシアは貧乏ゆすりで怒りと焦りをあらわにしながら椅子にどかっと座る。
「一度、状況を整理しよう。まず、ケルシアはどんな命令を受けて此処に来たのだ? 具体的に、出来ればそっくりそのまま教えてほしい」
ムラクニに顔を向けてから、次は上を見上げて考え込む。
「命令ッスか? えっと…確か…」
「ケルシア、ちょっといいか?」
執務室の椅子に深く腰掛けた騎士団長は、書類をめくりながら気だるげに声をかける。
「先日の地震の件だがな。幸い人的被害は報告されていない。ただ、ルワン村へ続く道と、ゼファリスの蒼風街道の一部で陥没や地崩れが起きている。」
団長は机に頬杖をつきながら続けた。
「放ってはおくと面倒だ、急を要している。詰まるところ、状況確認と復旧作業の下準備だ。」
「お前にはルワン村周辺での被害箇所の調査と街道の舗装作業を任せる。崩れた場所の規模や地盤の状態を確認しながら、通行に支障が出ている箇所を順次整備してこい。」
書類に判を押しながら、団長は淡々と言う。それを見ながらケルシアの顔が青くなる。
「魔物討伐や救援任務じゃない。危険も少ないし、内容自体は単純だ。ただ距離があるからな。往復と作業を含めれば、しばらくの遠征になるだろう。」
「あ…あのぉ、団長?」
そして書類を差し出した。
「任務名、『ゼファリスの蒼風街道被害調査および舗装作業』。」
「ケルシア、お前を本任務の担当に任命する。現地を確認し、必要な箇所の整備を終えた後、結果を報告しろ。」
「特に難しい仕事じゃない。肩の力を抜いて行ってこい。」
少し間を置いてから、面倒そうに付け加えた。
「ただまあ、遠出には変わりない。道中で変な厄介事だけは拾ってくるなよ。報告書が増える。」
「私にとってはコレが厄介事ッスよ! なんでこのタイミングで私への任務なんスか!」
団長は頭をかきむしり、目を細めてケルシアの方を向き直す。
「嘘だろお前…散々任された任務をそれっぽい理由付けてサボったの忘れたのか? この一年で何回任務を断った?」
「…ッ! えと、それはぁ…」
ケルシアは以前から、副団長が帰ってくると噂を耳にしては、お出迎えするためにスケジュールを空けていた。それは任務も同じで、予定が被ればどうにか逃げていた。そのつけが回ってきたと悟ったケルシアは何も言い返せなくなった。
「まぁお前のことだし、多分あいつのためだろうとは思うが、今回ばかりは諦めろ」
「団長の鬼ぃぃぃ...」
何度か説得を試したケルシアだったが、ついに期日が近づき、やむなく行くことになった。
「って感じッスね」
「今思い出しても悲しいッス」
それを聞いたムラクニは腕を組む
「なるほど、私情云々はともかく、この仕事にとくに危険は無いという事か。あとやっぱり、交通止めされているのはこの村周辺だけ。それはありがたい話だ」
ムラクニがチラッとケルシアを見たの気付き、ウィータが代わりに質問する。
「地崩れが起きたところは、どれぐらいダメな状態だったんだ?」
「状態も何も、あれを直すのは無理ッスね。完全に道が森と山と一体化してるッス」
ならケルシアはその解決方法を考えたはず、でもまだ動き出さずにここに居た…、もしかして村長と揉めてたのはそれが原因?
「それで、色々やり方を模索して、この村の土地を少し借りようと思ったんス。…そしたらめちゃくちゃ怒鳴られた末に何も話をしてくれなくて」
だからあんなに揉めていたのか。そうやって僕は納得しかけた、その時だった。ムラクニが静かに口を開く。
「んと、ケルシア。 一つ、聞いてもいいか?」
「はい?」
「任務の調査任務はやったんだよな?」
「もちろんッス!」
「地崩れが起きた場所も見たし、村の中も全部歩いたッス!」
自信満々な返事だった。
けれど、それを聞いたムラクニは目を閉じ、小さくため息をつく。ケルシアには、その反応が予想と反しており、冷や汗を掻いた。
「もしかして…足りないッスか?」
「うん、まったく」
この会議の始まってから一番最初の進展は、ケルシアのボロが発見された事だった。
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投稿が三週間も空いてしまったことについて深くお詫び申し上げます。ここ数週間、「原神」と言うゲームにどハマりしてしまい、毎日ログインするうちに執筆を忘れてしまいました。以後悔い改め、自戒していきます。




