表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒鬼火の子  作者: ツナクラ
3/11

入隊&移住

「では、ここに署名と血印を」

言われるがままに正夫は書類に氏名を書き、持っていたナイフで指を少し切り、血印を押した。

- - - - - - - - - - - - - - - - -

彼を看護してくれたハンナという少女も、去年にこの国に移住したらしい。まだ地形に詳しそうではなかった。(周りは黒い森で囲まれてるので、軍関係者は地形に詳しくなければ作戦に支障をきたすのだが・・・・)

場所を教えてくれたのはいいものの、自分の移住先と手続きする役所がわからなかった正夫。

「ここに移住するための手続きはどこで・・・?」

「あ、そうか。今日からこの国に住むんだったんだね。じゃあこれから基地に行きましょ。」

「き、基地!?役所じゃないの?」

場所の意外性に驚く彼に彼女も少しびっくりしていた。

「え?知らなかったの?ここに住む15歳以上の男女は全員軍に入るのよ。だから、基地は役所も兼ねてるのよ。住民登録もそこでやるの。」

また1つ謎ができてしまった。

ここの軍は住民管理の仕事でもやってるのか?

そう思ってる彼をよそに彼女は

「じゃあ、もうちょっと休んだらいきましょ。私もまだやることがあるし。」

そう言って彼女は小走りで別の部屋に駆け込んだ。

一人になって正夫は考え込んだ。

この国の住民票は軍が管理することになるけど、なんでわざわざそんな負担のかかる作業をやるんだ?ましてや軍だよ。日々訓練で多忙な兵士にそんな仕事できる?雑務部でもあるのか?

考えても謎は増えるばかりだった。

ふと、彼は思った。

そういえば彼女は何者なんだ?軍に入ってるのはわかったが、住民であること以外、なにもわからない・・・・等級は?所属は?

そんなくだらないことを考えてるうちに、もう15分もたっていた。



彼女が部屋に入ってから30分、やっと出てきた。

正夫はもう起き上がってた。さっきまで乱れてた毛並みと髪はもう整えてあった。彼女は常に綺麗であったが。

「じゃ、行きましょ。あ、あとナイフとかも忘れないでね。必要だから。」

何に必要かはわからなかったが、とりあえず持ってきてた小型ナイフをポーチに入れた。

木のドアを彼女が押し、自分は後に続いた。

外に出て、彼は一瞬目を疑った。

周りは、金色の絨毯のごとく生えてる麦畑で満たされ、噂で聞いてた荒地とはえらい違いだった。家も数件建っていて、道では子供が遊んでいた。狼、犬、竜、鼠・・・色々な種の獣人の子供が、じゃれあっていた。

「どう?ちょっと驚いた?私も去年ここに住み始めた時に初めて知ったの。前は荒地だったらしいけど、軍が食料確保のために麦畑を作ったんですって。」

彼女はそう説明しながら、黄金の絨毯の脇を通った。彼もついていった。

麦畑とはいえ、高さはサトウキビと同じくらいの高さだった。上には麦らしく、ちゃんと穂がついていた。風が吹くと、穂も流されて、金色の絨毯は波立った。まるで風に吹かれる毛のように・・・・

しばらく歩くと、麦畑が途切れ、周りはあの森になっていた。木々の高さはさっきのよりも倍近く高かった。そのせいか、光があまり差し込まず、湿気の多い暗い森であった。光が差すところには花畑や池があった。

その美しさに余所見をしていた正夫を呼び戻すかのように彼女は、

「この森の先に基地があるの。この森も基地が所有していて、訓練所として使ってるの。あ、あれよ。」

彼女が指をさしたさきにいたのは、木に乗っている4人グループ編成の獣人たちであった。だが、何かが違っていた。体は全身、ベルトらしきものがあり、全員ゴーグルをかけていた。一人が木から飛び降りたかと思うと、グライダーを開いた。

こんな狭いところでグライダーは無理でしょ。

そう思った彼であったが、結果は違った。

彼らは展開したグライダーを自由自在に操縦し、木々の間を簡単にすり抜けた。

「あれは奇襲の訓練よ。夜間にやる作戦で使われる戦法だけど、今日は昼にやってるみたいね。」

彼女の説明を聞きながら、一行はさきに進んだ。


20分ぐらい歩いたとこか、やっと基地に着いた。

彼はまたも驚いた。敷地の境界を示す鉄格子が左右はるか彼方まで続いていた。滑走路も整備され、格納庫や司令塔、訓練所、その他の施設もある、巨大な基地だった。

「着いたね。ここが私たちの拠点『第一ニセコ基地』よ。空軍と陸軍が共同で使ってるの。因みに私は陸軍に入ってるの。」

ゲートに着き、彼女が身分証明書らしきものを出した。衛兵はそれを確認すると、敬礼をした。もちろん、彼女も。

目的を告げると、衛兵はゲートを開けた。

施設まではまだ道が続いてた。

周りをみると、射撃の訓練、格闘術の訓練、模擬戦闘・・・・いろんな訓練がやっていた。空軍はというと、所持してる航空機(旧式のF-22やF-15など)をしてるところ以外は、なにもやっているようには見えなかった。

「今上で空軍の模擬空戦がやってるでしょ。わかる?」

上を見ると、青い空の真っ只中で飛行機のドンパチがやっていた。ドッグファイトの訓練だろうか、全然ミサイルを撃たない。機銃の咆哮がここまで聞こえる。両者とも腕のいいパイロットなのか、全然弾が当たってない。

「さ、行きましょ。」

さきを急ぐかのように、彼女は彼の腕を引っ張って行った。

施設について、住民登録並びに入隊の手続きを行った。手続きは別の部屋でやるらしく、関係者に案内された。通された部屋は狭かった。しばらくここで待つよう言われた。

しばらく待ってると、ドアが開いた。入って来たのは老犬の事務員だった。

「えっと・・尾高正夫さんですね。」

しわが少し目立つ犬の小父さんのような事務員に確認された。

「はい。」

もちろん、迷いなく答えた。

「ええっと、東京都江戸川区〇〇町ですね。移住先はどこにしますか。」

「じゃあ、ここにします。」

地図を指で指した場所は、ハンナの家だった。

「あら、私のとこと一緒ね。」

ちょっと嬉しそうな顔をしてた彼女だった。

「看護もしてくれたし、何かお礼をしたいし、それに・・・・」

喉まで来てた言葉を吐き出すのを事務員の声がとめた。

「え~、わかりました。では、次にあなたの所属する軍も決めます。あなたは・・・えっと・・・・」

老眼なのか、リストの載った紙をジィ~っと見てる。

大丈夫か?

ちょっと馬鹿にした感想が頭の中に走った。

「え~っと、あなたは『獣人同盟陸軍ニセコ方面第3師団第2軍第7小隊』にはいることになってますね。よろしいですか?」

老眼鏡越しからギロッとにらんだ老犬の事務員。

「はい、わかりました。」

ちょっと悪寒が走った。

老犬とはいえ、この人も軍に所属してるのだろう。睨みは蛇並みだ。

「あら、私の所属してる小隊だわ。すごい偶然ね!」

キャッキャキャッキャとはしゃぐ彼女。ちょっと赤らめる顔を彼はした。

「では、ここに署名と血印を」

そうか、ここでナイフを使うのか。

謎がまたひとつ解けた気がした。

彼は言われるがままにナイフをポーチから出し、渡された住民票兼入隊手続きの書類にサインをした。そして、出したナイフで指を少し切って、血印を押した。

「はい、ありがとうございます。今からあなたはわが国『フォーゲル』の住民、並びに獣人同盟軍の一員として認めます。頑張ってくださいね。」

細々とした励ましの言葉をもらい、老犬は部屋を退出した。彼らも部屋を出て、施設を後にした。

ハンナは正夫にこう言った。

「これから2人で頑張りましょ!」

うん、と返答した彼の手を、彼女の左手が包んだ。彼らの波乱なる人生が始まるのはこれからであった・・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ