7 亜美菜
今日は文章の量が本当に少ないのですが、ぜひ読んでいってほしいです。
「何か用って⋯⋯話そうと思って来たんだよ?」
「うん。話すって、何を?」
え、と、亜美菜が呟くような声を出す。そして、のびのびとした「いつもの声」でたずねた。
「でも美花とみなちゃんは友達でしょー? なんでー?」
(そういえば、あみなちゃんの一人称は『みなちゃん」だった)
他の人だとしっくりくるのに、亜美菜の一人称を聞くと違和感を覚える。最初は、のびのびとした、ほわほわとした印象のある亜美菜にぴったりだと思っていた。だが、仲良くなっていくとそのイメージは半分間違っていると分かってしまった。
「友達⋯⋯か」
「うん、色々遊んだもん!」
子供っぽい口調で、アミナは言う。高校生になったのに、中身はあまり変わっていない。純粋で、単純。
「⋯⋯突き放しておきながら、都合が悪くなった途端仲良くするのが友達なの?」
「えっ⋯⋯」
美花がそう言うと思っていなかったのか、戸惑っている。確かにあの頃の美花は「そういう人」だった。周りの人に合わせて、相手をただただ褒めて。
「⋯⋯あみなちゃん。私は――」
「みはなちゃーんっ!」
言いかけたのを遮られた。遮ったのはもちろん美穂だ。タイミングが悪いと思いながらも、続きを言わなくて済んだことにどこかほっとしていた。
美穂は肩を上下させている。
「はあ、はあ⋯⋯」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「ええっと⋯⋯みはなちゃん。この人は?」
(え、もしかしてお姉ちゃんはあみなちゃんのこと知らないの?)
確か教室で亜美菜が話しかけてきたとき、美穂は教室の外からその様子をじっと見ていたはず。そう思ったが、おそらく、亜美菜が一気に大人びたからその時美花と話していた人だと気づいていないのだろう。
(それかただ忘れてるだけ、とかかな)
美穂ならあり得る。確かに、教室の外から美穂に見られたことは何度もあったが、美穂はそういうのは覚えていないだろう。
ただ、美穂の記憶に、亜美菜のことが深く刻まれていないことにほっとした。今の関係を説明するのは難しいからだ。
「えっと、こんにちはー。みなちゃんだよ! 美花とは、」
「私とは同じクラスになった、はじめましての人だよー」
無理やり遮って、初めて出会ったということにした。少し棒読みになってしまったが、美穂は納得したようで、亜美菜を上から下までまじまじと見つめる。
(あれ? 「みなちゃん」っていう言葉は、確かあみなちゃんが送ってきたメッセージに書かれてたよね? 気づいてないっぽい⋯⋯?)
「これからみはなちゃんと仲良くしてね、みなちゃん!」
「え、え? これから、仲良く?」
亜美菜が戸惑っている。初対面という設定を作ってしまったせいだろう。美穂は「お姉さんっぽいこと言えた!」と喜んでいる。すれ違っている感じが、美花には面白かった。亜美菜のことは、もうどうでもいいかもしれない、と思った。
家に帰ると、美穂はもう帰ってきて、私服に着替えていた。服の前と後ろを反対に着ているのは、突っ込まないでおこう、と美花は思った。
「みはなちゃん! おかえり!」
「ただいまー」
「みはなちゃんに友達できたみたいで嬉しいな!」
自分のことのように喜んでくれる美穂に、「友達ではない」というのは申し訳ないと思った。代わりに他の言葉が出てきた。
「うん、ありがとうね」
亜美菜のことは、また後で考えようと思った。今は、美穂の優しさに浸っておこうと思った。
お読みいただきありがとうございます。




