6 初登校
「よぉし! 学校行こーっ!」
「お姉ちゃんは元気だねー」
棒読みで言う。
悩みが吹き飛んでも、現実と向き合わなければいけないときはある。
昨日、入学式で配布されたクラスの名簿を確認した。「あの人」がどこにいるか、確認するために。
それはすぐに見つかった。美花の名前のいくつか上に、「佐々木亜美菜」と。つまり、美花のクラスメイトだった。
同じクラスということは、必ず、どこかでかかわらなければいけない。関わりたくないのもあるが、今は喧嘩別れした気まずさもある。出来ることなら、これから顔を合わせたくない。
いじめや、悪口など、決定的なことではない。だからこそ、扱いづらかった。
「じゃあ、行こうか」
とりあえず、そう言って気分を入れ替えた。
学校につくと、美穂がやたらとそわそわしていた。
「美花ちゃん⋯⋯クラス間違えたらどうしよ⋯⋯」
「今気をつけたら大丈夫でしょ」
(たしかに少し心配だけど、別に間違えるくらいこの間の出来事と比べると大したことじゃないし)
美花は焦げたきゅうり入りカレーや延々と続くスクランブルエッグの地獄を思い出し、苦笑いをした。
「じゃあ、クラス行ってくるね!」
「はーい。行ってらっしゃい」
手を振り、自分も教室に入ろうとする。すると、遠くの教室から声が聞こえてきた。
「ごめんなさい! クラス間違えちゃいましたーっ!」
「⋯⋯」
それは間違いなく美穂の声だった。
(なんていうか、むしろ安心した⋯⋯)
なぜかほっとして、美花は胸を撫で下ろした。これで間違えなかったら、逆に、美穂のことを心配してしまったかもしれない。
とりあえず今は自分のクラスに集中しよう。そう思って美花は前を向く。一人のクラスメイトと目があった。これからは「あの人」に集中しよう。そう、美花は思った。
その後、先生が簡単に自己紹介をして、その後にクラスの中で自己紹介をする。美花は、「白咲美花です。双子の姉がいます」くらいの簡単な自己紹介をした。皆それくらいだったから、何となく合わせた。
合わせる癖を直したいと思いながらも、きっとこれからも皆に合わせていくだろう。美花は、そう思って亜美菜の方を向いた。
真顔で、真剣な顔。少し怖い印象すらあるかもしれない。でもそれが「普通の顔」で、性格は緩く、ある意味付き合いにくい人だと美花は知っていた。あの頃は仲の良かった相手だからか、今でも覚えている。
「次の人ー、自己紹介お願いします」
「はい! 佐々木亜美菜です。趣味は読書です。最近あるアニメにハマっています。よろしくお願いします。それで⋯⋯」
(結構長いね、自分のことを色々知ってほしいのかな)
自己主張が強めだからな、と、今はもうのんびりと眺めている。もう関わることはないだろうと、油断していたのかもしれない。
「えーっと、では、このメンバーでこれからよろしくお願いします!」
先生の声がした。自己紹介をぼーっと聞いていた美花はびくっとした。
ほとんど知らない人なので名前や好きなものは殆ど覚えられていないが、これからの学校生活で覚えていくだろう。
「せんせーい、先生は自己紹介しないんですか?」
誰かと思えば亜美菜だった。「陽キャ」と言うほどではないが、亜美菜は割と目立ちたがりの性格をしている。そんなことも懐かしいなんて思ってしまう。
「えー、じゃあこれからの説明をしてからにします。今日は特に何もありませんが、明日からは⋯⋯」
美花は、先生の説明を聞きながらも、美穂のことを心配していた。他のクラスだから確かめられなくて少し不安になっていた。
(まあ、初日だし特に変なことしてないよね)
美花は、そう信じることにした。
「では、他のクラスと自由に行き来していいですよ」
その言葉を聞いた途端、皆が一斉にざわざわとし始めた。半分くらいはクラスを出ていく。
(私も一応、お姉ちゃんを見に行こうかな)
美花は椅子から立ち上がった。その時、後ろに気配を感じた。そっと振り返る。
「あみなちゃん、何か用?」
驚くほど、普通の声が出た。
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