5 お菓子パーティー
お菓子パーティー始まります。
少し文章量が少ないかもしれませんが、ぜひ最後まで読んでいってほしいです。
美花は、人に振り回されてばかりだった。
幼稚園のときは天使を演じ、友達の女の子たちを、メロメロにする、とまではいかないが、ある程度の人気があった。別に演技が得意なわけではなかった。だけど、気がついたらそんな立ち位置にいたのだ。
小学校に入ると、目立たない少女になっていた。それも、意識して演技していたわけではなかった。というか、演技ですらないかもしれない。ただ、陽キャと陰キャの中間のような立ち位置にいた美花は、なんとなく目立たないという選択をした。もしかしたら、無意識に、誰かが口にしていた、「目立ちたがり」という言葉から避けたかったからかもしれない。
中学校からは、何となく「自分」を出せているような気がしていた。ただ、皆に合わせているところは変わらなかった。「はっきりしない変わり者」は、誰かに、どちらかに合わせるしかないのかもしれない。
美花はずっとそういう人生だと思っていた。
「んー、このアイス美味しいね」
「みはなちゃんはこれがほんとに好きだよね。そこまで高くないし。あ、でもお財布の中めちゃ減ってたけど⋯⋯」
美花はドヤ顔になって返事をした。
「実はね⋯⋯安いから十個買っちゃったの!」
「おおー⋯⋯」
リアクションしながらも、意識は昨日のことにあった美穂は、ドキドキしながら聞いてみた。
「⋯⋯昨日はどうしたの?」
「⋯⋯」
黙り込んで、俯く美花を見つめる。顔を覗き込もうとすると、美花が思いっきり顔を上げたので、少しびくっとした。
「みなちゃんっていう、小学校からの友達、かな。その子が一緒に学校行こうって、誘ってたの」
そう言いながら、アイスをかじる。飲み込むと、また続けた。
「でも断ったよ。お姉ちゃんと行きたいし」
「それに、」と言って、言いかけておきながら、 美花はアイスをまたかじった。しばらくかじったアイスをもぐもぐと食べる時間が続く。
「⋯⋯」
「⋯⋯それに、何!」
思わず口調を強めて聞くと、何がおかしかったのか笑われてしまった。そしてやっと飲み込んだようで、美花が口を開いた。
「⋯⋯それにわざわざ避けて連絡先交換しないようにしたのに、クラスのグループからわざわざ個人で繋げられただけなんだよね、もう縁切ったつもりだったのに」
縁を切るという言葉が出てきて、ぴたりと動きが止まった。そのみなちゃんという人は、縁を切りたくなるほど嫌な人なのだろうか。
なんだかそんなことを気にしているのは自分らしくないなーと思って、美穂は他のことを考えることにした。何となく美花を見つめる。
美花はぷくーっとほっぺを膨らませている。その姿は、子供にしか見えない。実は美穂より子供みたいな人なのだろうか。
「あ、いけないいけない。最初からみはなちゃんは私の妹で、一応私より子供なんだった!」
「え、何の話?」
双子とはいえ自分が姉であることを忘れていて、美花は理解できないだろうが美穂まで笑い転げてしまった。
お菓子パーティーを終えると、二人でゴミを片付けた。早く起きたおかげでまだまだ時間はある。なので少しゆっくりすることにした。
「ねえ、みはなちゃんはお菓子どのくらい食べた? 私めっちゃ食べちゃったー。太っちゃうかもー」
「アイス二個にポテチ半分、お姉ちゃんが好きなチョコを五個、おせんべい三枚⋯⋯」
「え、大丈夫? そんなに食べて」
目を丸くしている美穂に、美花は元気に返事をした。
「うん、朝ごはんもいける!」
「やべーな⋯⋯お前何者だ⋯⋯」
(お姉ちゃん、キャラ変わってるよ)
いつもと口調が違う美穂に心のなかで突っ込む。ただ、喋り方が変わっていても、中身は変わっていなかった。相変わらず床に落ちていたお菓子のゴミで滑って転んでいる。
「朝ごはん、何食べたい?」
「いや、今日はオレが作るじぇ」
(え、誰? まださっきのキャラ続けてるんだ)
でも噛んでるなー、と思いながら笑った。
「いや、大丈夫。私が作る」
「何で! みはなちゃんひどいー!」
(あ、やっと戻った)
キャラが戻ったのを確認し、なんだか安心した。すっ転んだり水をぶちまけたりしながらその口調は少し、いや、かなり違和感があったからだろう。
「あ! 言い方間違えた! えっと、なんて言えばいいかなー。ひどいぜ、かな⋯⋯?」
ずっとその喋り方で会話しようと思っていたのか、美穂はやっと気づいて声を上げた。そんな美穂を見ていると、なんだか元気づけられた。さっきまでの悩みなんて、すっかり吹き飛んでしまった。
お読みいただきありがとうございます。




