第15話 王宮パニック。過剰防衛と繁栄のロンド
人生やり直しには、保険が必要です。
転生強化型社畜・三枝正樹27歳は困惑していた。
異世界転生保険株式会社のスタンダードプランでこの世界にやって来て、はやくも2ヶ月。
潰しがきく特性(前世・器用貧乏)を高評価され、転生ケア事務所に苦情処理兼教育係として正式採用。
その際には、アルセリア王国の国王ランドールにも拝謁を賜った。
遠くから旗を振るのではなく、目の前3メートルに「なま」国王だ。
そりゃあ当然、緊張した。
『だけど、これよりは、ましだよなあ』
訳のわからない事態には数多く出会ってきたが、これはダントツではないだろうか。
いま。
三枝は剥き出しの地面に正座して、国王と向かい合っている。
問題は。
王国のトップたるランドールが、地下牢の中にいることだ。
「ええと、陛下」
「おお! 待っておったぞ、お助けマン!!」
思わず周りを見回し、自分以外の誰かを探した三枝正樹は悪くない。
鉄格子の中にいる国王に手を握り締められた。
「三枝くん! 急に呼びつけてすまなかったね」
アルセリア国王ランドールは、日頃から国民とフレンドリーに接する、愛すべき王として名高い。
「いえ。それはよろしいのですが」
『なぜ、あなたがそちら側に?』
もしかしてクーデターでも起こったのだろうか。
そんなデリケートな事態だったら、迂闊に口には出せない。
忖度の国に生まれ、長い物には巻かれろDNAに支配され、事なかれ主義が骨身を形作る三枝は困惑した。
「昨夜、王妃の部屋に行こうとしてね」
「はあ?」
謎が錯綜した。
「ええと。王妃様と喧嘩でもなさったんですか?」
思わず聞いてしまった。
王族の夫婦喧嘩、怖いな。
地下牢行きとは。
「ああ、違うんだよ」
ランドールは二パっと笑った。
「廊下のトラップが新しくなっていてね」
「はあ」
ますますわからん。
「それで、私をここにお呼びになったのは……」
牢獄の鍵開けスキルなどありませんが、と言う三枝に被って、階段の上から慌ただしい足音と叫び声が聞こえてきた。
「陛下!!! ご無事ですか!!!」
近衛兵数人が血相を変えて駆け寄って来る。
「あああ、陛下、おいたわしい」
侍従長らしき老人が泣きながら牢を開ける。
「大事無い」
悠然と立ち上がるランドールは、さすがの風格だ。
パジャマだけれど。
「ささ、陛下。まずは、御身を清めて……」
侍従長が上着を差し出す。
その言葉を掻き消して、凄まじい咆哮が地下を揺るがした。
ビクリと身体を震わせた人々の顔が強張る。
恐怖ではない。
やれやれ。うんざり。
そんな感情を、ありありと浮かべたのだ。
「ランドール王! そこにいるのだろう!!??」
音量がちょっと落ちると、なんと言っているかがわかった。
「これで、ようやく分かったろう!!!」
「漆黒竜どの!!」
「我の部屋をトラップ代わりに使うなと、何度言えば良いのだ!!!」
こちらの声が圧倒的に小さいので、向こうに通じていないらしい。
ランドール王が片手を指揮棒がわりに振った。
全員が声を合わせる。
「ドゥーギン卿!!!」
「なんだ!!!!」
「2時間後に謁見の間においで頂きたい! 対処いたしますゆえ!」
三枝が理解したのは、王宮にはドゥーギン卿と呼ばれる漆黒竜がいるということだけだった。
アルセリア王国、首都の中心部にある王宮の地下には、輝く漆黒のウロコの竜が住んでいる。
身の丈6メートル、折りたたんだ背中の羽根を広げると20メートルを楽に超える漆黒竜は、名をシグムンド・ドゥーギンと言う。
これまた、転生者(物?)だった。
そして、彼は国王直属の大蔵卿の要職にあった。
数年前、漆黒竜が転生ポイントに出現した時。
さしもの転生ケア事務所長アンドレイ・ネメシュも、驚きに目を見開いた。
現れたドラゴンの最初の挨拶が「儲かりまっか」だったので。
漆黒竜シグムンド・ドゥーギンは自己紹介を続けた。
「我は、心の底から金が好きだ。金は至高の存在だ。光り物は体に優しい」
ネメシュは、ふむふむと頷いた。
なるほど、それでドラゴンになったのか。
ドラゴンが黄金を好むのは、定番の設定だ。
集める、楽しむ、守るがひとりで完結する。
そして、この漆黒竜。
前世は、史上初の債務の株式化を実行した凄腕大蔵卿だったらしい。
だが、国家を救おうとして、結果的に民衆を破滅させた男は、それを深く悔いていた。
そんな彼に、異世界転生保険株式会社が提案した保険は「国富循環・改善型促進プラン」。
かくしてこの世界に降臨した漆黒竜を迎えたのは、転生者大好きランドール王だった。
今や、シグムンド・ドゥーギン卿は、国王の個人財産や王室費、国家予算の管理責任者。
公明正大な大蔵卿として辣腕を振るっている。
ところが、だ。
その竜は、王宮警備責任者と実に相性が悪かった。
こちらもまた、転生者。
妻の部屋を訪れようとした国王を、地下牢に飛ばしたトラップを仕掛けたのも、彼だ。
行き過ぎ警護で、王宮の平和な日々が跡形もなく失われる有り様らしい。
ことは転生者絡みなので、転生ケア事務所から三枝を呼びつけた、とのこと。
地下牢の中から、一回きりの使い切り転送陣を使って。
「なぜ、自室にお戻りにならなかったのですか、陛下」
三枝の疑問はもっともだろう。
「いったん部屋を出てしまうとね。転送陣では帰れないんだよ」
モゴモゴと、ランドール王は、悲しそう。
「セキュリティーが厳しくてね」
『国王自身すら弾く自室のセキュリティー、って、なんだ?』
首を傾げすぎた三枝は倒れそうになった。
「本末転倒も良いところだろう」
ふんっっっ! とドゥーギン卿が鼻で笑った。
止めてあげてほしい。
侍女さんたちの髪が、えらいことになるから。
「今度こそ、カトオのふざけた警護をやめさせるぞ」
ババン!! と謁見の間の扉が開かれた。
「そうはいかん!!!」
何処にでもいそうな中年男だった。
身を包んだ宮廷のお仕着せが、いろいろ変だったが。
三枝は、思わずマジマジと見つめてしまった。
肩から斜めがけポシェットと、腰の道具ベルトに水晶玉が山ほどぶら下がっていて、一歩歩くごとにガッシャガッシャ賑やかだ。
「なぜ陛下を壁際に座らせているんだ!!??」
「王座が、そこにあるからですよ!!!」
「なんと愚かな! 背後の石壁は安全確認をしたのか!」
「当たり前だ!」
「カーテンで覆ったら、刺客が潜めるだろう!」
「レースに、どうやって隠れるんだ!」
「非常脱出路と、囮はどうした!」
侍従と近衛兵たちを相手に一歩も引かない意気込みは買うが、これは……
三枝はランドール王と視線を交わした。
気の毒な王は、絶望感に打ちひしがれている。
「王とは国家そのものだ!!」
カトオは王座を背に立ちはだかった。
「私の使命は、襲撃者が諦める警備システムで王をお守りすることだ!!!」
漆黒竜が前脚を振り下ろした。
「愚か者が!!!」
全員が床をコロコロ転がる。
「国家の働きを止めて、なんの警護か!!!」
王子の犬が侵入者判定され、警備ゴーレムに半日追い回された。
王妃侍女が吊り網の罠にかかった。
宰相が、毎回、顔認証水晶玉に誤認識され、出勤出来ない。
「西回廊の吹き矢」
「青絨毯は落とし穴」
「厨房裏に睡眠ガス」
注意事項を見逃したうっかり新人の被害が増大。
そして、侵入者と認識されたスタッフが、漆黒竜の部屋に次々転送されるのだ。
確かに王宮最強生物ではあるが、その度に仕事を邪魔されるシグムンド・ドゥーギン卿は、ブチ切れた。
今度誰かがカトオの警備システムで転送されて来たら、王宮ごと焼き払ってやると宣言。
「と、いう訳でね、お助けマン」
「そのけったいな肩書きはお断りしたいです、王様」
「この転生者たちを話し合わせて欲しいんだよ」
「王妃の寝室を訪ねられないの、辛いんだよね」
ランドール王が心の中で呟いたつもりの本音は、カトオの「内心暴露警備水晶玉」によって、謁見の間に大きく響き渡った。
転生ケア事務所の三枝正樹と、漆黒竜シグムンド・ドゥーギン、そしてカトオは、竜が使える部屋があまり多くないため、そのままそこで話し合うことになった。
『うーむ、険悪』
胃の痛みを堪えながら、三枝はまずカトオに話しかけた。
「カトオさん、って、前世、加藤さんなんですか?」
「はい」
カトオは、前世の自分を語り始める。
「以前は、日本で内閣情報調査室の分析官をやってました」
「テレビ番組みたいな職業、きた」
「脅威分析が専門だったんですが、古代史のハンニバルやハドリアヌス、マキャベリ、孫子、ナポレオン、近代のクラウゼヴィッツまで読み込んでも、うまくいきませんで」
しょんぼり。
「当たり前だ。ただの軍事思想マニアが、頭の中で理想的な警備案をひねくりまわしたところで、陰謀論と被害妄想に過ぎん」
漆黒竜の鼻息が、相変わらずすごい。
「国王も、好奇心のまま、何でもかんでも拾ってくるのが悪い」
一国のトップがケチョンケチョンだ。
「こやつ。王宮警備の最高責任者、王宮防衛卿なんざに任命されて舞い上がったのだ。前世では絶対に出来ない理想警備を、 異世界で全力実装できる、とな」
そして、恩人の国王ランドールに狂信的忠誠を捧げている。
「ああー、それはまずいですねえ」
三枝は眉の間を揉んだ。
この世界に来ていらい、峡谷のように深い皺が刻まれ始めた。
「ランドール王は『平和時の支配者として理想的』なのに、好奇心が強いために、積極的に転生者を受け入れるような善人でしょう?
国民との距離が近いのが嬉しい方なのに、たぶん、カトオさんの警備で、『そんなに警護を厳しくしなくても、自分はそこまで憎まれていないはずなのだけど』って、ちょっと的外れに嘆いてらっしゃると思いますよ」
「おぬしのは、『警備という偏執』じゃな」
愕然としたカトオに、漆黒竜が気持ち良さそうにトドメを刺した。
「前世からの知識は本物ですが、この世界の、王宮という生活の場に、戦場の論理を持ち込んだのがいけなかったのではないでしょうか」
転生ケア事務所の苦情処理兼教育係の三枝の言葉は、混乱した頭に染み込みやすい。
「あなたの理想は『盾』ですが、使い道を間違えれば、一番守りたい相手を閉じ込める『檻』になります」
項垂れた男の肩をたたく。
「王宮防衛卿の務めは、ランドール王が王として、人としていられる環境を守ることですよ」
ちょっといい感じにまとめたと自画自賛した三枝は、カトオの号泣に巻き込まれて辟易とした。
同じ抱きつかれて泣かれるなら、アカリの方が良いなあ、と思考の逃避。
さて。
『もう1匹? 1頭? の方は、どうしよう』
漆黒竜は、ズラリと並んだ牙を見せつけた。
どうやら笑ったらしい。
「我にカウンセリングは必要ない」
尻尾を中心に身体を回して、カトオに向き直る。
「我の執務室に転送陣で間抜けを送り込んで来なければ、我はかまわぬ」
最後に鼻息を吹きかけるまでが行程なのか。
炎とか出されるより良いけれど。
シグムンド・ドゥーギン卿は、炯々と光る目を三枝に向けた。
「それより、お助けマン殿」
「違います」
これ以上、妙な肩書きは増やしたくない。
「我が作った『アルセリア王立交易会社』で、カトオを警備に使いたいのだ」
それは一体、なんですか、と、またも三枝は側転しそうなほど首を傾げた。
「前世の知恵を正しく活用しようと思ってな」
漆黒竜は、ウロコの間から、魔法のように数枚の白金貨を取り出して見せた。
「おおーーー」
給料でももらった事のない最高額の通貨に、三枝はゴックンと唾を飲んだ。
「どれだけ金を鋳造しても、貴族や金持ちどもの金庫に眠ったままでは、ただの光る板だ。富は、流れて、循環してこその価値だ」
「ですねーー」
その光る板から目を離せないけれど。
「それで、これを作ってみた」
シグムンド・ドゥーギンは、今度はやけに絢爛たる紙を取り出した。
『そのウロコ、高次元のポケットなの?』
「我の『アルセリア王立交易会社』の出資証券だ」
こよなく金(カネ and キン)を愛する漆黒竜は、王宮の予算から直接インフラや軍事にお金を出すことを嫌った。
数字が減るから。
そこで、彼はまず、国が土地や特権を出資する形でアルセリア王立交易会社を立ち上げた。
王宮は、この会社に「今後開発する未開拓地のすべての権利」「主要街道の関税徴収権」「特定の魔法素材や鉱物の独占販売権」などの利権をすべて与える。
利権は「株式化」されて、国内の貴族、豪商、余裕のある平民にまで広く売り出された。
「この株で、街道の通行料や、鉱山から出る利益の配当が永久に手に入る!」の宣伝で、富裕層は熱狂した。
特に、出資証書の、とことん追求した豪華絢爛さが、貴族や富豪たちを煽った。
光の当たり方で真珠色に輝く「白精霊の羊皮紙」が使用され、証書の縁には、王宮の専属職人が手がけた、緻密な金銀のエッチングが施されている。
文字はラピスラズリの微粉末を混ぜた魔導インク。
もちろん偽造防止の魔法陣が、常に証書を薄く光らせている。
半年ごとに、王宮では国王主催のパーティーが開かれ、購入者ひとりひとりに王が言葉を賜る。
どうしても出席が叶わなくても、王宮から特殊郵便馬車で届けられる招待状も、証券に劣らぬ芸術品だった。
株を買う際に、金貨の袋を運ぶ必要はない。
王宮の広間で、豪華な出資証書を受け取ると同時に、提示するギルドの割符で「国家擁護特設口座」への送金が一瞬で完結する。
音もなく、莫大な富が国家の血肉に変わる、いささか倒錯的な喜びがクセになると評判だ。
漆黒竜シグムンド・ドゥーギンは、さらに、あざとかった。
出資証書のコレクション要素を、これでもかとばかりに高めた。
アルセリア王立交易会社の出資証書を、産業、インフラ、軍事に分け、それぞれ美々たるデザインを施したのだ。
「良く売れた」
「そりゃそうでしょ」
三枝は、ちょっと苦々しげに同意した。
前世でトレーディングカードを集めた事もあったので。
『余裕があったら、軍事出資証書、欲しいかも』
王宮の空を舞う竜の透かし彫りが、マジでかっこいい。
『一狩りはしないけどな』
富への貪欲さと、少年の憧れを同時に突くとは。
卑怯なり。
三枝は、ぐぬぬと親指を噛んだ。
「熱狂が極まれば、実体のない価値が膨らみ続ける。だが膨らんだものはいつか弾ける。泡沫のようにな」
シグムンド・ドゥーギンの声は苦かった。
「我は、それを望まない」
前世の彼の心は、まだ血を流している。
「絶望に泣く者を、それを踏みつけにして驕る者を、この世界では作りたくないのだ」
自己嫌悪を振り切るように、漆黒竜は鼻息の嵐を三枝にぶつけた。
「だから、それ、やめてもらえませんかねーーー」
三枝は文句を垂れる。
壁際まで吹き飛ばされながらだったので、ドップラー効果が生じた。
漆黒竜が、意外と繊細な爪に出資証書を引っ掛けて、カトオに振って見せる。
「この資金で、国全体のセキュリティ案を立ててみてはどうだ」
「おお、良いじゃないですか、カトオさん」
だが、カトオの顔色は冴えない。
ついでにしゃがみ込んでしまった。
「……無理だ……」
前世で、知識だけは国家機密級のミリオタだったが、実務では上司に「慎重すぎて動きが遅い」と疎まれた。
同僚には、善意100%の被害妄想狂、と揶揄された。
自分でもわかっていた。
死角があると動悸がする。
不安を少しでも解消するために、データの収集に心血を注いだ。
防衛省の出版物だけでなく、英米の情報をリアルタイムに得たくて、駅前留学の個人レッスンに通った。
Janes Defence Weekly とJoint Force Quarterlyを定期購読するためだ。
給料から家賃と最低限の必要経費以外、全てを注ぎ込んだ。
夢の旅行先はハドリアヌスの長城巡りだった。
カール・デーニッツの「ドイツ海軍魂」を泣きながら毎晩読んだ。
そんな自分が情けなくて、夢を追ってみようかとも考えた。
子供の頃は、作家になりたかった。
ところが、想像力がない。語彙が足りない。
ひとの心の動きがわからない。
せっかく転生できたのに、またやらかした。
国王ランドールを失望させてしまった。
滂沱の涙を流すカトオに、三枝は尋ねた。
「憧れていらしたのはスウェーデン国王『北方の獅子』グスタフ2世アドルフですよね」
「……え?……」
「前世・加藤様の主契約『国家危機管理適性転生プラン』には、こちらでの『もしもの時の北方の獅子特約』が付いております。
王宮限定だったカトオ様の職権を国全域に広げ、インフラ整備や軍備拡張の警備を行えるようなりますね」
面白そうに目を輝かせている漆黒竜を見上げる。
鼻息の直撃を受けない位置から。
「先週却下されたカトオ様の『大階段に設置する自動突撃ゴーレム重騎兵中隊』ですが。これを国境配備でいかがでしょう」
「年間、金貨7万枚ほどもあれば良いか?」
あっさり答える大蔵卿に、カトオは固まった。
「我の元で働くなら」
漆黒竜が、無敵の魔法の言葉を囁いた。
「予算制限は、無い」
アルセリア王国が世界の覇者になった瞬間だった。
そうして、現在。
無事に転生ケア事務所に帰ってきた三枝正樹は、事務所長アンドレイ・ネメシュに報告を済ませていた。
転送陣ではなく、王宮の馬車で送ってもらった三枝は、村で結構目立った。
嬉しくなかった。
「カトオさんのトラップに、スタッフがひっ掛かる回数は、かなり減ったようです」
「なによりですね」
「大蔵卿も、心穏やかに金貨を数えているそうです」
「喜ばしいですね」
「王妃様が、無事に部屋に侍ることが出来るようになった侍女たちとパジャマパーティーを頻繁になさるので、相変わらずランドール王は訪れられないそうです」
「どうでも良いですね」
国王だけ不憫である。
「ともかく。我が社の、前世社会で適合できなかった方々を、ここで適宜再配置する目的が果たされて、なによりでした」
『おお。企業理念の建前が美しい』
「でも、今度は勝手に転送されないでくださいね」
三枝が国王に強制的に転送されたため、急遽、午後の講習を引き受けた所長は、そう念を押した。
『わあ。あからさまな本音』
不可抗力を責められるのは、前世もここも変わりがなかった。
ともあれ。
悲哀を漂わせる三枝を所長室から追い出したネメシュは、前世からの悪癖である葉巻を薫せた。こればかりはやめられない。
世の中、かくしてことも無し。
結果良ければ、全て良し。
ちなみに、王宮防衛卿カトオによる改造トラップ王宮は、漆黒竜・大蔵卿のアイディアで、ファミリー向け週末限定ダンジョンとして公開され、せっせと小銭を稼いでいる。
カトオの「内心暴露警備水晶玉」も面白ギミックガチャの人気商品。
民との交流を好むランドール王は、たまにSRキャラとして訪問者にグリーティングしてご満悦とのこと。
異世界は平和である。
今日のところは。
【第15話・終】
面白いと思われたら、ブックマークや☆で応援して頂けると励みになります。
Xでも更新情報などを呟きます。
@OhashiS202604 (大枦詩乃@異世界転生保険株式会社)




