第2話 老人たち、幽霊に!
「……おい、起きんか爺さん」
頭上から、妙に軽薄な声が聞こえた。
(ん……? ここは……?)
ジョンソンがゆっくりと目を開けると、そこは上下左右も分からない、一面真っ白な不思議な空間だった。
体を起こそうとして――ハッとなる。
(腰が……痛くない!?)
あんなに重かった体が、信じられないほど軽い。
横を見ると、ベネットも、ジュピターも、清蓮も、ポカンとした顔で自分の手を見つめていた。
「わしの膝が……動く?」
「老眼も治っておる……矢の先までくっきり見えるぞ!」
「鼻水も出ん! いくらでも魔法が練れるぞ!」
歓喜の声をあげる四人の前に、一人の老人が立っていた。
白い衣をまとい、長い髭をたくわえた男だ。
「ワシは神じゃ。おぬしら、転移陣の上で死んだおかげで――」
神が誇らしげに何かを語り始めようとした、その時。
ジョンソンは神の顔をじっと見つめ、思わず言った。
「お前……だいぶ老いとるな?」
「お互い様じゃよ!!」
神は真っ赤になって怒鳴り散らした。
ひとしきり口喧嘩をした後、神はコホンと咳払いをして言った。
「えー、話を進めるぞ。おぬしらは死んだ。間違いなく死んでおる。じゃが……あのダンジョン最深部にあった『黄金の転移陣』の上で死んだことで、少々おかしなことになってな」
神が指を鳴らすと、四人の体が淡く透け始めた。半透明の、まるで霊体のような姿だ。
「おぬしらは『死ぬことができなくなった』。いくら攻撃されても消滅せん。まあ、雑に言えば不死身の幽霊じゃな!」
「幽霊……?」
四人が顔を見合わせる。
「そこで頼みがある。世界の端にある神々の遺跡へ行ってほしいのじゃ。あまりに危険すぎて生きている冒険者は全滅するが……死んでおるおぬしらなら行ける!」
「面倒だな」
「断る。帰って酒でも飲みたい」
あっさり拒絶するジョンソンたちに、神はフッと意地悪な笑みを浮かべた。
「報酬は、『生き返りの秘宝』と……どんな病や老いも癒やす『神代の秘薬』じゃが?」
その瞬間、四人の目がギラリと光った。
「……詳しく聞こう」
こうして、平均年齢七十九歳。
死亡済み、元・腰痛持ち、元・近視の老眼持ちと魔法アレルギーや膝関節痛。
しかし『絶対に死なない』幽霊冒険者パーティーの、さらなる二度目の冒険が幕を開けたのだった。
つづく




