↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハムスターモンスター転生 〜自由を求めた最弱種、知力で獲物としての宿命を断ち切り、進化の果てに天災と畏れられる〜  作者: ひつま武士
第一章:自由を求めて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/30

第6話:初レベルアップ

広大な草原に、池のように黒い地面が広がっていた。

風が通るたび、その周囲に残った火が細く揺れる。


その中心──

3メートルはありそうな“獣の形をした炎”が、まだ息づくように揺らめいていた。

赤い尾を引く残光が、空気にゆっくりとほどけていく。


──その炎に、茶色く丸いもふもふが寄り添うように密着している。


ハムマルは小さく震え、耳を後ろへぺたりと畳んでいた。

焦げた草の匂いが鼻に刺さり、ウルフに圧し掛かられている下半身がじんじん痛む。


(……重くて、びくともしない……)

(このまま無理に抜け出したら……きっと、そこで全部終わっちゃう……)


ハムマルは意識を集中させると、


──“ダストテイル”


暗い赤光が渦を描き、炎尾は腹の周りにぐるぐると巻きつく。

その熱が、体の奥にじわりと染み込んでいく。


少しでも回復しようと、

少しでも、目の前のウルフにダメージを与えようと、

ハムマルは震える前足を伸ばし、炎尾をさらにウルフの背へ押しつけた。


火花が散り、草原の空気が一瞬だけ熱を帯びる。




──振り返れば、とうにHPはゼロになっていておかしくなかった。


(それにしても……よく残ったな、HP……)


ハムマルは、ウルフに噛まれたはずの場所へ前足を伸ばし、わさわさと毛をかき分けた。


(……??)


触れた感触に違和感が走る。


(……なにも傷がない……)

(こんなにHP減ってるのに……?)

(血も出てないし、スキルの炎で焼き消えたんだとしても──)

(このHPなら、傷もあって……血が流れてるか、滲んでてもおかしくないのに)


もそもそと身体をひねり、見える範囲を確かめる。

炎尾の光が揺れる影を地面に落とす。


(どこもなんともない……毛もハゲてない)

(ぼさぼさに……なっちゃってるけど)


風が通り抜け、乱れた毛がふわりと揺れる。


その一方で──


ウルフの姿は、あまりにも対照的だった。


体毛はすべてに炎が揺れ、


毛の薄い足は黒く焼け焦げ、


胴体の炎が消えた部分も、炭のように崩れかけている。


さらに、血と思われる青い液体が、

ひび割れた皮膚の隙間から滲み──草の上にぽたり、ぽたりと落ちていた。

青い滴が地面に触れるたび、微かな蒸気が立ちのぼる。




すると──5秒ほど後──


<経験値100を獲得しました>


続けて──


<レベルが上がりました>

<レベルが上がりました>

<レベルが上がりました>


(おおぉ!?)

(勝った? 勝ったんだよね!?)

(今──ウルフが息絶えたってこと??)


丸っこい三角の耳が力強くピンと立つ。


さらに──


<戦いに初勝利しました>

<特典が送られます>

<『魔石化』スキルを獲得しました>


ハムマルは慌ててステータスウィンドウを開く。

その瞳は期待にきらきらと輝き、

乱れていた毛並みも、どこか艶を取り戻したように見える。


──“レベルアップ”──それは、心躍らせる魔法の言葉。




だが、ウィンドウに浮かぶ緑光の数値を見た瞬間──


--------------------

名前:ハムマル

種族:スターダスト・ハムスターモンスター

状態:普通


LV:4(3up)

HP:20/40(15up)

MP:20/150


体格:5

筋力:8(3up)

敏捷:8(3up)

知識:10

思考:15


備考:

ハムスターモンスター種の最下級

--------------------


胸の高鳴りが、風に吹かれた火の粉と共に消えていく。


(HP・MPは、レベルアップで回復しないのか……ハードだな……)

(HPは最大値が15増えて……)

(その15が使えるHPにもなってるっぽいのが……まだ救いだな)

(でも……頼みのMPが……そのままなのが厳しい)


そして──ふと、一つの気づきが浮かぶ。


(HPは体格×筋力みたい──分かりやすっ!)

(ってことは、MPは知識×思考か)


数字の並びが理解の中で淡く脈打つ。

緑光を映すつぶらな瞳が揺れ、ピンと立ったばかりの耳が力なく垂れる。


(このステータスアップ、筋力と敏捷しか上がってないのが偶然なのか……?)

(偶然であって欲しい……MP上がって欲しい……)


ふっと風が止み、草の音が一瞬だけ静まる。

広大な草原にぽつんと置かれた背中は、しゅんと一回り小さく丸まっていた。



◇



報酬として得た新スキルのことも気になり、

ハムマルはサブスキル欄を順に開いていった。


--------------------

・熱回復

100~1000度の熱でHPが回復する。

範囲内なら熱いほど回復が速い。

--------------------


(炎に包まれている間、すごく心地よかった──)

(俺が生き残れたのは“1000度の熱”と──コレのお陰だよな)


小さい前足でポチポチとステータスウィンドウを操作する。


--------------------

・ほお袋収納

LV×10kgまで、口に入るものを収納可能。

収納内は時間が経過しない。

--------------------


(これも便利だな!)

(容量と大きさの制限あるけど、あると無いとでは大違い!)

(時間停止もありがたいな)


──この時ハムマルは、収納系スキルでは当たり前の“生き物は収納できない”という縛りがないことに気がついていなかった。




ハムマルは次のスキルへ視線を移す。


--------------------

・魔石化

死骸を魔石に変えられる。

--------------------


(シンプル! 説明すっくな……)


そう思いながら、ハムマルは少しでもHPを回復しようと、

まだ炎を帯びているウルフの死骸に、前のめりに身体を預けた。

じわっと伝わる熱が心地よく、毛皮の奥まで染み込んでいく。


すると──


“ピコッ”


軽い音とともに、視界にダイアログが開いた。


<魔石化しますか? [Yes][No]>


(えっ?……あ、はい……)


──驚きのまま、反射的に[Yes]を選んでしまう。


次の瞬間──


ウルフの死骸がふっと掻き消え──


足元に小さな魔石がコロンと転がった。


(えっ! こんな感じ!?)

(あっ! もう少し火で回復したかっ──)

(あっ、でも、ノーダメージで出られたからいっか)


ハムマルはピョンっと跳ね、座り直して丸くなる。




その魔石を見つめた瞬間──

腹の奥がきゅうっと反応し、無性に食べたくなる。


(……超腹ペコの時に……)

(おにぎりとタコのウインナーが目の前にあるような……)

(……ゴキュ……)

(歯が折れたりしないよね……?)


前足でつまみ──

ポイっと口に入れ、そっと噛むと──


“カリッ”──軽快な歯応えの後、


“サクッ”──心地よく歯が通り、


“ホロッ”──ほどけて消えた。


(うま~~~いぃ!!)


──それは、初めて“和牛のすき焼き”を食べた時のような衝撃だった。


すると──

身体の内側にシュワシュワと泡が弾けるような感覚が広がり、全身へ染み込んでいく。


(!?)


慌ててステータスを確認すると、


──『MP:120/150』


一気に100も回復していた。


(やった!!)

(これでまだ戦える!)


ハムマルは思わずガッツポーズする。

しかしその前足は短く、

斜め上に向かって小さく“グータッチ”しているようだった。




ハムマルは、戦いの最中には見なかった“コアスキルの三つ目”を開く。


--------------------

・ダストバースト:MP1000

????

?????集落?吹き飛ば???????????

--------------------


(……えぇ……)

(最大MPが足りないから……?)

(読めるとこだけでも……なんか物騒な感じが……)

(まぁ、使えないから別にいいか……“MP1000”なんて遥か先だろうし)


頭の中がもやもやし──首筋の毛が逆立っていた。


ハムマルはスキルを使う時の“あの感覚”を思い出す。


(あの力を沸かせても──“三つ目”のスイッチ感じないな~)

(…………)

(なんか、身体の中で“シュワシュワ、パチパチ”って、コーラみたいな──)


──スキル発動前、炭酸ジュースを振ったように身体の奥から湧き上がる力。


(戦っている時は、身体が勝手にスキルを使ってる感じだったけど──)

(意識するだけで簡単にできるね)


──そしてその力は、すぐに身体へ戻っていく。


(面白いな、本当に炭酸みたい)

(炭酸は……振ってシュワシュワさせても、コロコロ優しく転がせば簡単に液体に戻るし)


考え込み、逆立つ頭の毛並みを、風が撫でていく。


(…………)

(スキルはMP──マジックポイントを使うから)

(要は、コレが魔力なのかな?)


その刹那──


<『魔力知覚』スキルを獲得しました>

<進化条件『魔力知覚』を達成しました>

<『シューティングスター・ハムスターモンスター』に進化しました>


──脳裏に再びアナウンスが響いた。


そして──


星屑のような粒子が


身体を覆うようにふわりと舞い


その姿を変えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。