↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハムスターモンスター転生 〜自由を求めた最弱種、知力で獲物としての宿命を断ち切り、進化の果てに天災と畏れられる〜  作者: ひつま武士
第二章:『狩る側』と慢心せし者たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/29

第20話:狂い咲く歯列の花冠

荒野の隆起を轟音が貫く。

ひび割れた大地が──揺れ──震える。


爆炎が頂上の巣穴の入口を歪ませ、土煙が立ち昇り──

砂粒も、石も、岩も、爆音と共に弾け飛び、熱を帯びた空気が斜面を駆け下りる。


爆風はさらに──


色鮮やかなのも、


焼け焦げたのも、


幾つも、


幾つも、


巨蜂を爆ぜ飛ばし──天空へと撒き散らした。


──狭く閉ざされた空間に満ちる膨大な炎、その熱で限界まで膨らみきった圧力が、一気に巨蜂の壁を食い破っていた。




最後に吹き飛んだハムマルは、

スキルによる体の軽さで、最も爆風に押され、

渦のように乱れ散る巨蜂の中へと突っ込み──ピンボールのように跳ねまわる。


外殻の硬い感触が、衝突のたびに身体の奥に鈍く響く。

最後には地表へと弾き飛ばされ──斜面の先の先へ落下した。


「ンギュゥッ!」


勢いで丸い体が転がり続け、土埃が舞い上がる。


(……な、……なにが……)


地面にペタッと貼り付くような、妙な姿勢で何とか止まり、


(……うぅ……)


“デデーン”という重い効果音が脳裏に響き、視界の端に小さな半透明のダイアログが開く。


──『状態:痙攣/[蜂のアイコン]』

──『HP:9/72』


(……なんだ……これ……)

(……さっきレベルアップして無かったら……死んでた……?)


炎化身の“目のような紋様”も、“× ×”のようになっていた。




上空では──


無数の虫の羽の破片が、


砂埃に混じり、


陽光を細かく砕き、


鈍い虹色を散らして──風に舞う。


吹き飛んだ巨蜂たちの背は、すべて羽の根元だけになっていた。

空を掴む力は失われ、重力に引かれるまま──地表へと叩きつけられていく。


──“ドガッ!”、“ゴトッ!”


<経験値30を獲得しました>

<経験値30を獲得しました>

……


──“ドザッ!”、“ガシャッ!”


<経験値30を獲得しました>

<レベルが上がりました>

……


荒涼とした空気の中──

脳裏のアナウンスと、乾いた衝突音が鳴り続けた。




しかし──

ハムマルの頭上まで見通す広い視界に──ゆらりと黄と黒の影が侵食してくる。


それらの腹部の先端から、

黄光の線が幾本も走り──光のランスへと収束する。


──その瞬間、ハムマルを包む炎化身はふっと掻き消えた。


“光棘”が一斉に、地表にぽつんと現れた朱色の毛並みへと向けられる。


(!?)

(まだいたのか──!)


短い四肢に力を込めるが、

爪先はプルプルと震え、腹はぺたんと地面へ落ちていく。


(くそっ! 動け! 動けって……)


背中に力を入れようとしても、毛並みがわさわさと揺れ、首を僅かにもたげられただけ。


(HP残ってるじゃん!……頼むよ……)


すると──

尻尾だけが、ぴこぴこと動いた。


(!!)


──“メテオテイル!”


火花が尾の先に灯り──伸び上がる炎が地面を照らす。

ハムマルは、もふもふの体を地に擦らせながら、炎尾を弾き続ける。


幾本もの光棘が一直線に突っ込んでくる。


──“ボウゥォォ!”


炎尾が大地を押し、砂が熱で舞い上がる。

ハムマルの体が浮き上がった、その時──


──“ズガガァァァ!!”


すべての光棘が、地面へと突き立つ。

黄色い光が砂塵の中で揺らめき、乾いた土の匂いが風に流れた。




ハムマルは、小さな尻尾と炎尾だけを動かして──ぴょん、ぴょんと進む。

毛並みがふわふわ上下し、四肢はだらりと下がりぷらぷらと揺れる。


──その見据える先には、爆風で吹き飛んだ巨蜂が、地面一面に影を落としている。


(どれも、ピクリとも動かないけど……)

(それほど損傷してないのも多い……生きてるかな?)


触角、細い脚、甲殻の焦げた匂いが鼻先をかすめる。


(……こいつなら……!)


ハムマルは黒焦げの一匹に進み、その上へ倒れ込むように着地する。

震える身体が骸に圧し掛かると──


(魔石化!)


──淡い光が黒焦げの外殻を包む。


そして、

地べたを這いずり──

口で魔石を探し──何とかくわえる。


もふもふの頬が土で汚れ、小さな前歯がカチリと鳴った。


さらに炎尾を弾くと、もう一匹の黒焦げへ転がり、再び魔石化──這うようにして口に入れる。


(あと一つ! それで『炎化身』で回復して──)

(それで勝てる! あんな数なら!)

(絶対に勝って自由を手に入れる!!)


その瞬間──


巣穴の方角から、土煙がもわりと立ち上がった。

乾いた砂が光を乱反射し、視界を白く満たしていく。


その中から──

巨大なミミズのような姿が、


──“にゅるり”


と首を出した。


(……!?……)


魚肉ソーセージのような体色。

直径は、ゆうにハムマルの体長の二倍はあり、

その先端は、他より少し濃い色で、つるりとした質感の半球状をしていた。


それは──

にゅるにゅると蛇のように這い出し、ハムマルの眼前に迫る。




ほんの一瞬だった──


先端の“放射状の八本の正確な切れ目”が、ピシリと音を立てて裂け、


──“バガァッ!”


と、爆ぜるように八枚の裂片が開いた。


つるりとした外皮の内側、

粘った光を帯びた鮮やかな肉の色に、

汚れたナイフのような歯がびっしりと生え、


──ハムマルの視界を覆い尽くすほどの、肉と歯列の花が咲く。


(……!!……)


無数の歯の向きは揃っておらず、


ガタガタに乱れていたが、


肉に紫色の光が纏い、


強く脈打った刹那──


すべての歯が“ギシッ”と音を立て、放射状に広がる角度へと揃った。


(ヤバい──!!!)


──雷鳴のような警鐘が、知性と直感から同時に鳴り響く。


ハムマルは、無意識に炎尾を地面に押し付けた。

まだ震える四肢で地面を弾き──もふもふの体を渾身の力で前へ押し出す。


──炎尾が火花を散らし──地面を抉り──自らを撃ち放つ。


それは、上でも、左でも、右でもなかった。


びっしりとナイフのような歯が整列する八枚の花冠──

その唯一、射線がないと感じた“中央の穴”に向けて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。