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第32話 花人の変化と暴露。

 マウリシオ視点。前話からまたちょっと時間が過ぎました。

 旧プレニア国跡地から生まれたという花人、という新たな種族は、最初の会見以降、頻繁にオルフェリア国を訪れ、新たなる守護女神様の為の神殿を作る計画は順調に進んでいるらしい。


 らしい、というのは、現地に自分で行くわけにもいかない現状の為だ。

 本当に、人手が足りないのでな。


 ところが、初遭遇から二か月ほど経った辺りから、急に王宮側に人が増え始めた。


「妙な緑色の生き物がね、畑はやっとくから床の上の仕事を手伝って来いと」

「洗濯と掃除はしておくから、お料理してこいって言われたのですけど……」


 そんな風に、花人たちに仕事を取られ、王宮に駆け込んできた人々に、新たに仕事を振ることになった当初は随分とそれに手を取られたものだが、一旦流れを整えてしまえば、足りなかった人員を補うことができた各部署には、それなりの余裕ができてきた。


 しかし畑と洗濯はともかく、掃除?あれらは、床ではしおれると言っていなかったか?


「田舎の家は土を固く叩き締めた、土間づくりが多いのですよ。

 ですから、かれらが土に触れていられるのですね」

 元マスフィルド家のメイドで、今は護衛兵の立場にあるものの一人が、その答えを知っていた。


「農家は床板を敷いてもどうせ土を付けるから、と、寝所にしか床板を張らないのですよ。

 商家でも小規模な行商人だと、そういう作りの家だったりします。

 王都の庶民ですと、賃仕事で集合住宅に住んでいる人の方が板張り床に慣れておられますね」

 グレシア嬢もその辺りの機微は知っているようで、そのように答えてくれた。


 そうやって、堂々と人々の暮らしの中に入り込み始めた花人たちには、だんだんと変化が現れだした。


 三人一組で動いていたものが、ばらばらに活動するようになり、言語も学習したのか、だんだんと流暢なものになり。


 そして、ある時ついに、人工の床の上でも普通に歩き回る者が現れた。


「まあ、しおれなくなったのですか?」

「はい、この世界の存在として確立できるようになりましたので、繁殖以外は大地に依存しすぎないようになりました。

 これでもっと女神様の、そして皆様のお役に立てると思います」


 どうやら、最初に現れた時の花人たちは、できたてほやほやで、世界にあるべき存在としての情報量が足りない、そんなあやふやな存在だったらしい。


 それが、時間の経過と、人類との接触で学習し、情報を蓄え、一個の種族として確立できるようになった、というのがこの変化の主な理由だそうだ。


 繁殖以外は、というのは、彼らがあの大きな花から生まれ、その花となって個としての生涯を終え、また生まれるという存在だからだ。

 そこだけは、ずっと変わらないだろう、ということだった。


「どうやって増えるのかしら」

「そこはもう女神様の思し召しで、としか」

 興味津々のグレシア嬢に、花人はとぼけたような答えを返すが、恐らくそこに関しては、彼ら自身もあまり把握していない、そんな感じがする。


「騒乱で多くの人が亡くなられて、それを今の人類だけで取り戻すには時間が掛かりすぎる、ということのようなのですけれど……」

 今日は同席しているのは聖女アリシア様だけなのだが、その彼女も、やや言葉を濁している。


「……何世代か前の異端論に、人に魂はあるのか、そしてそれに重さはあるのか、という議論がありましたね」

 ふと思い出したので、口にする。


 魂というものはこの世界では普通に実在のものとして扱われている。

 実際死後に呪いを振りまく悪霊と化した西の果ての国の王、などというものもいたのだから、それを否定する理由はあまりないだろう。


「魂の実在を疑う人がいたのですか。びっくりですねえ」

 グレシア嬢はそう述べて面白そうに笑う。


 かつて自らも聖女として、過去の聖女たちの間にいた彼女は、魂だけ、に近い状態の過去の古い時代の聖女たちを知っているから、簡単にそう結論付けることができるのだ。


「異端と断定されてこの国を去っていったそうだけどね。

 ただ、魂の重さに関しての議論だけは、異端とはされなかった。存在するなら重さがあってもよいように思う者が多かったのだろう」

「それも不思議ですよね。オーリオラ様を覚えていらっしゃいますでしょう?

 あの方のように、人の身を保ったまま宙に浮くこともできたりしましたからね、先輩の皆さまは」


 確かに、逃亡を勧められたときに現れたあの方は宙に浮いていたな。

 そして、『花園』の門を閉めるその手は、普通に物質として存在している、そんな風に見えたはずだ。


「魂の重さは存じませんけど、人が少なくなりすぎたので増やさなくてはいけません、とは伺っております。

 摂政殿下も黒髪のお嬢様共々、ぜひ人口増にご協力くださいましとの伝言を承っておりますわ」


 記憶を掘り起こしていたら、花人からとんでもない事を告げられた。


 待て、なぜそれを、ここで言う!!


「……殿下。ずっと見守って参りましたけれども、確かに彼女の言う通りです。

 かつて『花園』にそれなりの期間おられて、唯人とは多少時の流れがずれているグレシア様ですけれど、それでもわたくしより十年は年長なのですよ。

 いい加減、態度をはっきりさせてくださいませ」


 更には、聖女アリシア様からまで、そのような苦言が飛んでくる。

 いやだから、なぜそれを、今!?


 目だけで助けを求めるような顔をしてしまっていたらしい。

 グレシア嬢は首を傾げ、再度、アリシア様からため息が漏れた。


 確かに、想いは抱えているが!

 だが、いきなり第三者に暴露されていいものではないのではないか?!

ア:1年も進展しないんですからそりゃあ強硬手段にも出ますわ。

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