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第30話 各国の思惑と将来計画。

 マウリシオ視点。前話より少しあと。

 その日も執務の後、食事の時間も終わり。


『不可逆の暴徒』の発生によって減ってしまった人口は、食料生産にも影を落としている。


 あの薬で暴徒と化した民は決してもとに戻らぬということで、そういう呼び名が付けられた。

 もっとも、この国とプレニアで暴徒と化した者たちは、皆花の糧になり消えてしまったのだが。


 ただ、それまでにめぼしい食料は彼らの気の向くままに食い荒らされ、変化しなかった善良な民が大勢殺されてしまったからな。


 不幸中の幸いとして、暴徒の大半は、金や資産には興味を示さなくなっていたため、他国から贖う資金だけはあるのは助かったと言えるのだが。


 生き残った民は王都とその近隣の数か所に纏めて暮らして貰うことになった。

 余りにも生き残りが少なく、元の地に暮らして貰うのでは行政の手が届かない懸念があったためだ。


 故郷を離れざるを得なくなってしまった者が多いが、惨劇の記憶が残る故郷を離れたい、と望む者も多かったので、比較的移動はすんなりと行うことができた。


 己と家族だけを養うならともかく、生業としての農業も商業も、一人では成り立たないものだ。

 家族と、そして近隣の民と共同で行う作業が多い農業。そもそも買い手が居なければ話にならない商業。


 それらを支える職人たちは、思いのほか多くが生き残った。

 特に王都に近い村に集団で工房を設置していた鍛冶師たちが、ほぼ全員無事なのだと聞いている。

 理由は判っていないが、本人たちは『ワシらは腹に抱えとるもんは全部仕事のその場で吐き出すからじゃねえか?』などと言っていたそうだ。


 それに加えて彼らは工房に見本や試作品などの武器防具を備えている。

 暴徒には十分対応できる戦力があったのだそうだ。

 彼らはそれによって、暴徒から、自らと、異変を起こさず無事だった家族たちを守り切ったのだ。


「まあそんなわけで、放棄地から回収した道具類の打ち直しや整備は終わりましたぞ」

 その鍛冶師の棟梁が、時間を見計らって報告に来てくれている。


 本来なら私の業務ではないのだが、人が足りていないので、そういった辺りまで手を延ばすことになる。

 余り今まで関わってこなかった界隈の話を聞けるので、これはこれで楽しい時間でもあるのだがね。


「よくやってくれた。回収にも随分時間がかかったと聞いているが」

「流石に全国となりますとな、致し方ないですわ。馬匹をお借りできた分、早めに終われたのは確かですが」


 そのような話をして、報酬を確認後、次の仕事を提示する。

 今回彼らに頼んでいたのは、人手不足で当面耕作放棄地になる場所からの農具や金属道具類の回収と、その整備だ。


 整備したものはそのまま国内で使用する予定だ。

 農民の数が減ってしまっているとはいえ、暴徒が武器代わりに振り回し、破損したものも多いので、これでも多少の予備がある、程度の状況となっている。



 今までのこの国はほぼどの時期に耕作を開始しても、似たような収量でいろんな作物が穫れる土地だった。

 それは『花園』の恩恵の一つであったのだが……


 今後は、緩やかに気候が変動し、他国のように季節に合わせた作物を作付ける形になるだろう、というのが聖女様と学者たちの結論だ。

 ただ、収量がいきなり落ちるようなことにはならないだろう、という予測もある。


 当面は食料の買い付けで凌ぎつつ、食料の自給に目途を付け、『花園』の跡地の整備を行って、幾つかの薬草類を主体として輸出品目として育てる。


 これまで『花園』の薬草が主な商品であったから、それらが失われた現在では、持続的にこれまでのような輸出を行うのは不可能だ。


 幸い、『花園』の薬以外で治療法のない病というのは、滅びたユーレラ国の眠りの病だけだったから、薬の流通が失われることで人様の命に問題が出る事態には、すぐにはならない。

 流通の全体量が減ってしまうから、その分の薬価の上昇だけは、どうしようもないのだが……


 ……どうした理屈でか、押し付けられることになりそうなプレニア国の跡地の事は、当分どうしようもない。

 人も、物資も、何もかも足りないのだ。


 そもそも現状ではあの花畑が広がるばかりで、生き物すら碌にいないという話であるし。

 近隣国とアルゲンティア国による合同調査団からは、製塩施設だけは保持した方が良いだろう、という提案が上がってきていたが……


 なんでも、オルフェリアが将来的にある程度の大国になっていく方が、治安の安定には良い、という話らしいのだが。


 アルゲンティア国が規模を広げすぎたのだ、とはアルケイデス王自身の言葉だったが。

 拡大の呪い、などというものがかつてあったのだという話も聞かされた。


 呪いはもう存在しないので問題ないのだ、とも言っていた。

 そのために、ファンダニアの神女様に頭を下げたのだとも聞いている。


 成程、訪問の時点で、既にファンダニア側の立場の方が上、という状態だったのだな。


 ……その結果、我が国も救われたといえるのだから、神慮めでたく、という事なのだろう。


 鍛冶師たちには、次の仕事として、防衛のために必要な武器防具の再整備を依頼した。

 この国ではあまり発生していなかったが、他国、もしくは所属する国を持たぬ山賊の類が、国境を侵しているという話もあるので、油断はならない。


 エドレイド公爵家の軍備がほぼ損耗していないのは幸いだったが、現状ではマスフィルド家のメイド集団まで自警団から女子軍に昇格させて王宮警備に充てている有様だからな。


 いや、彼女らの中核は正規の後宮護衛兵と遜色ない精度の精鋭だったのだがね。


 王宮と政庁ですらそのような継ぎ接ぎ人事だ。

 果たして、今後の運営がまともな状態になるまで何年かかるやら、だな……

こっちも真面目過ぎて恋愛脳にもなってくれない……われなべにとぢぶた……

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