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神様の身代わり ―光の兄と、罪の妹―  作者: FERILU
第8章:秋光のキャンパス、束の間の休息

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星和祭・二日目:絶叫と輝きと約束

星和祭二日目の朝。目覚まし時計が鳴る数分前、私は昨日の高揚感を指先に残したまま目を覚ました。

ベッドから起き上がると、ふくらはぎにじんわりとした重みを感じる。慣れないヒールで「時の迷宮」を駆け回った勲章のような疲れだ。けれど、キッチンへ向かう私の足取りは驚くほど軽い。


「おはよう、みゆ。今日も早いわね」


すでにエプロンを締め、朝食の準備を始めていたお姉ちゃんが優しく微笑む。

「おはよう、お姉ちゃん。……ねえ、今日のお弁当、昨日よりもっと陽太を驚かせたいの。何か、内緒のコツとかないかな?」


私の言葉に、お姉ちゃんは嬉しそうに目を細めた。

「そうね……じゃあ、メインのハンバーグには、とろけるチーズを忍ばせてみましょうか。それと、お弁当を華やかにする『彩り野菜の豚バラ巻き』なんてどう? ちょっと手間はかかるけど、冷めても美味しいし、栄養満点よ」


お姉ちゃんの指導のもと、私は手際よく調理を開始した。

昨夜までの特訓で培った感覚が、迷いなく手を動かしていく。ボウルの縁で卵を割る音、白身の弾力、そして指先に伝わる塩の「少々」の重み。刻んだ大葉を混ぜ込んだ卵焼きは、今日も完璧な黄金色だ。


次に、新しい挑戦である「彩り野菜の豚バラ巻き」へ。

薄切り豚バラ肉を広げ、下茹でしたアスパラガスと人参を乗せて巻いていく。

「あ……ちょっと、きつく巻きすぎちゃったかな」

一本目は形が少し不恰好になってしまった。二本目はもう少し優しく、三本目でようやくコツを掴む。

フライパンで焼き目をつけ、お姉ちゃんが教えてくれた甘辛い照り焼きのタレを絡めていく。

「タレが焦げ付かないように、火加減は弱火でね」

焦げ付かせないように慎重に、でも少しだけタレが濃くなりすぎてしまったかもしれない。


「完成! ……うーん、ちょっと不器用な形になっちゃった」

お弁当箱に詰められた肉巻きは、確かに昨日の完璧な卵焼きやハンバーグとは違い、手作り感満載の素朴な見た目だ。けれど、甘辛いタレの香ばしい匂いが食欲をそそる。


「あら、みゆ。ちょっと不器用だけど、それがかえって可愛らしいわね。味は保証するわよ」

トーストを焼き終えたお姉ちゃんが、私の肩を優しく叩く。

「そういえば、明日の三日目は一般公開日でしょう? 私も見に行こうと思ってるの。湊にも案内を頼んでおいたわ」

「えっ、お姉ちゃんが!? ……うれしいけど、なんだか緊張しちゃうな」


「ふふ、大丈夫よ。あ、湊! 早くしないと置いていくわよ!」


お姉ちゃんの声に促されるように、階段から制服を完璧に着こなした湊兄さんが降りてきた。相変わらず隙のない佇まいだが、その手には実行委員の分厚い資料が握られている。


「……騒々しいな。朝からそんなに浮かれていては、今日一日体力が持たないぞ」

湊兄さんは冷ややかに言い放ったが、私のカバンから覗く、昨日より少しだけ誇らしげに膨らんだお弁当の包みを一瞥すると、ふっと鼻を鳴らした。

「……まあいい。行くぞ、みゆ。今日は昨日以上に混雑が予想される。実行委員としても、お前のクラスの『行列対策』に文句を言いに行かねばならんからな」


湊兄さんと並んで家を出る。いつも通りのぶっきらぼうな物言いだけれど、私の歩幅に合わせて少しだけゆっくり歩いてくれる。

通学路ですれ違う生徒たちは、どこか昨日よりも足取りが早い。初日の緊張が解け、祭りの「楽しみ方」を覚えた特有の活気が、街全体を包み込んでいた。


学校に到着し、1年B組の教室――喫茶『クロノス』の扉を開けると、そこにはすでにエプロンを締めた美咲と早川くんの姿があった。


「みゆ、おはよ! 見てよこのやる気。早川くんたら、今朝も一番乗りでミルを調整してくれてたの。昨日あれだけ激走して疲れてるはずなのに、さすが陸上部のエースは回復力も次元が違うわね!」


美咲が昨日の一件を蒸し返して茶化すと、早川くんは「……豆の状態は、朝の湿度で変わるからな。調整しないと、昨日の味が再現できないだろ」と、照れ隠しに目を逸らしながら淡々と作業を続けていた。


「おはよう、美咲。早川くん、本当にありがとう。昨日、早川くんが戻ってきてくれた時、みんな本当にヒーローが来たって顔してたよ」

「……俺はただ、コーヒーが切れるのが嫌だっただけだ」


ぶっきらぼうな言い方だったけれど、早川くんの耳が少し赤いのを見て、美咲と私は顔を見合わせてクスクスと笑った。

更衣室で、私は再びあのクラシックなロング丈のメイド服に袖を通した。鏡の前でカチューシャの位置を微調整し、白いレースの手袋をはめる。その下にある指先の絆創膏は、昨日より確実に減っている。

「よし。今日は二日目。昨日よりももっと、最高の一杯を淹れよう」


午前中のピークが一段落し、私と美咲は交代で休憩に入った。

「さあみゆ、他クラスの偵察よ! B組の喫茶店に負けない熱気があるか、この目で確かめてやるんだから!」


美咲に腕を引かれ、私たちはメイド服の上に薄手のカーディガンを羽織って廊下へ繰り出した。


まず向かったのは、陽太たちのいる1年A組。教室の前には『絶叫! 星和お化け屋敷』と禍々しく書かれた看板が立ち、不気味なBGMが漏れ聞こえてくる。

「いらっしゃい……呪われたいのはどっち……?」

受付で死装束に身を包み、顔を真っ白に塗っていたのはテニス部の田中奈緒だった。

「えっ、奈緒!? 誰だか分からなかったよ、そのメイクすごいね!」

「ふふ、これ美大志望の女子にやってもらったの。さあ、河村くんたちが中で手ぐすね引いて待ってるよ……ヒッヒッヒ」


暗幕を潜り抜けると、そこは迷路のような暗闇だった。足元に転がる模型や、天井から垂れ下がる謎の糸に悲鳴を上げながら進むと、曲がり角で突如、血塗れの包丁を持ったゾンビが飛び出してきた。


「うわああああっ!」

「きゃああああ!」


美咲と抱き合って震え上がると、そのゾンビ――佐藤くんが「あ、水瀬さんと松本さんか」と素に戻って苦笑いした。


「驚かせすぎだよ佐藤くん! 心臓止まるかと思った……」

「悪い悪い。……あ、陽太ならこの先の『処刑の間』で待機してるぞ」


さらに奥へ進むと、怪しく光るライトの中に、ボロボロのシャツを着て鎖に繋がれた陽太の姿があった。彼は入ってきた私たちを脅かそうと身を乗り出したが、私のメイド姿を見た瞬間、その動きがピタリと止まった。


「……お化け屋敷にメイドは反則だろ」

「陽太、それどういう意味?」

「いや、なんか……ミスマッチすぎて、脅かすタイミング逃したわ」


陽太は顔を赤くして頭をかいたが、すぐに「……休憩終わったら、うちの焼きそばも食いに来いよ」と、鎖をジャラジャラ鳴らしながら笑った。


次に向かったのは、田中くんたちの1年C組。こちらは本格的なステージが組まれた演劇会場になっていた。演目は『星和版・ロミオとジュリエット』。

「よお、B組の看板娘たち! 視察か?」

舞台監督として奔走する田中くんに挨拶し、衣装直し中の莉奈を訪ねる。華やかなドレスに身を包んだ梨奈の隣に見覚えのある顔を見つけた。佐々ささきりんちゃん、小学校の時のクラスメイトで生徒会長の佐々ささきあずささんの妹さんだ。彼女もまた華やかなドレスに身を包んでいた。二人は、まるでお姫様のようだった。


「みゆちゃん、美咲ちゃん! 来てくれたんだ!」

「凛ちゃん、久しぶりだね、二人とも、本当にお姫様みたい! 劇、楽しみにしてるね」


賑やかな他クラスの熱気に触れ、私は改めてこの三日間の重みを感じていた。

「みんな、自分の場所で全力を出してる。……私たちも、負けてられないね」

「あったりまえじゃない! B組の意地、見せてやろうよ!」


美咲と拳を合わせ、私たちは再び自分たちの「戦場」である喫茶『クロノス』へと戻っていった。


正午を告げるチャイムが鳴り、校内はいっそう賑やかさを増した。私は大切に保冷バッグを抱え、中庭のテニス部模擬店「爆速! テニス部焼きそば」へと向かった。


テントの前には昨日以上の長蛇の列ができている。もうもうと立ち込めるソースの煙と熱気の中、陽太が必死にコテを振るっているのが見えた。

「はい、焼きそばお待たせ! 次の方、三つですね!」

「陽太、左側が少し焦げ付いているぞ。火力を調整しろ」


背後から低く響く、相変わらず冷静な声。実行委員の腕章を巻いた湊兄さんが、まるで厳しい査察官のように陽太の横に立っていた。

「よ、陽太、お疲れ様。……兄さんも。これ、今日のお弁当」

「おっ、みゆ! 待ってたぜ、腹減って死にそうだったんだ!」


昨日と同様、三人でテント裏の木陰にあるベンチに腰を下ろした。私は少し緊張しながら、三段重ねの蓋を開ける。

「……ほう。今日は少し趣向を変えたか」

兄さんの鋭い目が、二段目に詰められた「彩り野菜の肉巻き」を捉えた。


「……あ、あのね。お姉ちゃんに教わって新しく挑戦してみたんだけど、ちょっと巻き方が不恰好になっちゃって。……見た目、変かな?」

確かに、端からアスパラが少し飛び出していたり、形が歪だったりする。昨日の完璧な卵焼きに比べると、明らかに「不慣れ」な跡が見て取れた。


「新しいレシピか。昨日までの慢心に甘んじず挑戦する姿勢は評価する。だが、この不恰好さは……」

湊兄さんが批評を口にしようとした瞬間、陽太が迷いなく箸を伸ばし、その肉巻きを一口で頬張った。


「…………っ!!」

「よ、陽太? やっぱりタレが濃すぎた……?」

心配で顔を覗き込むと、陽太は目を丸くしたまま、もぐもぐと力強く咀嚼し、ゴクンと飲み込んだ。


「……うめえ! なんだこれ、中にチーズまで入ってるのか!? 肉の旨みと野菜のシャキシャキ感が最高だ。……形なんて関係ねえよ。この『一生懸命巻きました』って感じの見た目が、逆にご馳走なんだって!」

陽太は顔を上気させ、次々と肉巻きを口に運んでいく。

「お前、こんな手の込んだもん、朝から……。サンキュな、みゆ。マジで力が湧いてくるわ」


「……全く。味の濃さを熱量で誤魔化されているようだが、まあ、白米が進む味付けではあるな」

湊兄さんも毒づきながらも、一切れつまんで静かに咀嚼した。

「不器用だが……お前らしい味だ。昨日の完璧さよりも、この『迷い』が見える料理の方が、あいつには合っているのかもしれん」


湊兄さんの不器用な肯定に、私の胸の奥がじんわりと温かくなる。

「良かった……。お姉ちゃんにも、ちゃんと喜んでもらえたって報告するね」


陽太はあっという間にお弁当を空にすると、最後の一口の卵焼きを噛み締めながら、私を真っ直ぐに見つめた。

「みゆ、午後も頑張ろうな。お化け屋敷の鎖、重くて肩凝るけど……これ食ったからには、閉会まで全開で脅かしてやるよ!」

「うん! 私もコーヒー淹れまくるね。……あ、お化け屋敷、また後で見に行ってもいい?」

「おう、歓迎するぜ。……ただし、腰抜かしても支えてやんねえからな!」


湊兄さんに「無駄口を叩くな、さっさと戻れ」と急かされながらも、私は空になったお弁当箱を抱え、確かな足取りでB組へと戻った。

指先に残る絆創膏の数も、今の私にとっては誇らしい勲章のように感じられた。


正午を告げるチャイムが鳴り、校内はいっそう賑やかさを増した。私は大切に保冷バッグを抱え、中庭のテニス部模擬店「爆速! テニス部焼きそば」へと向かった。

テントの前には昨日以上の長蛇の列ができている。もうもうと立ち込めるソースの煙と熱気の中、陽太が必死にコテを振るっているのが見えた。

「はい、焼きそばお待たせ! 次の方、三つですね!」

「河村、左側が少し焦げ付いているぞ。火力を調整しろ」

背後から低く響く、相変わらず冷静な声。実行委員の腕章を巻いた湊兄さんが、まるで厳しい査察官のように陽太の横に立っていた。

「よ、陽太、お疲れ様。……兄さんも。これ、今日のお弁当」

「おっ、みゆ! 待ってたぜ、腹減って死にそうだったんだ!」

昨日と同様、三人でテント裏の木陰にあるベンチに腰を下ろした。私は少し緊張しながら、三段重ねの蓋を開ける。

「……ほう。今日は少し趣向を変えたか」

兄さんの鋭い目が、二段目に詰められた「彩り野菜の肉巻き」を捉えた。

「……あ、あのね。お姉ちゃんに教わって新しく挑戦してみたんだけど、ちょっと巻き方が不恰好になっちゃって。……見た目、変かな?」

確かに、端からアスパラが少し飛び出していたり、形が歪だったりする。昨日の完璧な卵焼きに比べると、明らかに「不慣れ」な跡が見て取れた。

「……ふん。新しいレシピか。昨日までの慢心に甘んじず挑戦する姿勢は評価する。だが、この不恰好さは……」

兄さんが批評を口にしようとした瞬間、陽太が迷いなく箸を伸ばし、その肉巻きを一口で頬張った。

「…………っ!!」

「よ、陽太? やっぱりタレが濃すぎた……?」

心配で顔を覗き込むと、陽太は目を丸くしたまま、もぐもぐと力強く咀嚼し、ゴクンと飲み込んだ。

「……うめえ! なんだこれ、中にチーズまで入ってるのか!? 肉の旨みと野菜のシャキシャキ感が最高だ。……形なんて関係ねえよ。この『一生懸命巻きました』って感じの見た目が、逆にご馳走なんだって!」

陽太は顔を上気させ、次々と肉巻きを口に運んでいく。

「お前、こんな手の込んだもん、朝から……。サンキュな、みゆ。マジで力が湧いてくるわ」

「……全く。味の濃さを熱量で誤魔化されているようだが、まあ、白米が進む味付けではあるな」

兄さんも毒づきながらも、一切れつまんで静かに咀嚼した。

「不器用だが……お前らしい味だ。昨日の完璧さよりも、この『迷い』が見える料理の方が、あいつには合っているのかもしれん」

兄さんの不器用な肯定に、私の胸の奥がじんわりと温かくなる。

「良かった……。お姉ちゃんにも、ちゃんと喜んでもらえたって報告するね」

陽太はあっという間にお弁当を空にすると、最後の一口の卵焼きを噛み締めながら、私を真っ直ぐに見つめた。

「みゆ、午後も頑張ろうな。お化け屋敷の鎖、重くて肩凝るけど……これ食ったからには、閉会まで全開で脅かしてやるよ!」

「うん! 私もコーヒー淹れまくるね。……あ、お化け屋敷、また後で見に行ってもいい?」

「おう、歓迎するぜ。……ただし、腰抜かしても支えてやんねえからな!」

兄さんに「無駄口を叩くな、さっさと戻れ」と急かされながらも、私は空になったお弁当箱を抱え、確かな足取りでB組へと戻った。

指先に残る絆創膏の数も、今の私にとっては誇らしい勲章のように感じられた。


午後、喫茶『クロノス』の行列がピークを迎えた頃、入り口付近が急に華やいだ。

現れたのは、実行委員の腕章を巻いた湊兄さんを先頭に、お化け屋敷のシフトを終えた陽太と田中くん。そして、その後ろからC組の劇を終えたばかりの莉奈と凛ちゃんまでもが顔を出した。


「わあ、すごい! 本当に別の世界に来たみたい……!」

劇の衣装のまま、可憐な貴婦人のような莉奈が声を弾ませる。


「いらっしゃいませ。お兄様、皆様。時の迷宮へようこそ」

私はクラスのルールを守り、背筋を伸ばして淑女の礼法で迎えた。湊兄さんは、文化祭の喧騒から切り離されたアンティークな空間を鋭い観察眼で見渡した。


「……ほう。教室をここまで変えたか。香りもいいな。家でドリップを練習していた成果は出ているようだな」

湊兄さんにとって、この店への来店は初めてのことだ。少し意外そうに、けれど満足げに内装をチェックすると、彼は促されるように端の席に腰を下ろした。


「おい陽太、見ろよ。みゆちゃん、本物のメイドさんだぞ。似合いすぎてて直視できないだろ?」

田中くんがニヤニヤしながら陽太の肩を叩く。陽太は顔を真っ赤にして、「うるせえよ、わかってるよ……」とメニュー表に視線を落とした。


私はカウンターに戻り、早川くんが調整してくれた豆で慎重にコーヒーを淹れた。トレイを持って戻ると、陽太は運ばれてきたコーヒーを一口飲むなり、感極まったように呟いた。

「……うまい。昨日の弁当も今日のもそうだけど、みゆが作るもんって、なんか元気が出るわ」


「本当、おいしい! B組が一番人気なのも納得ね」

莉奈たちも笑顔を浮かべる。そんな和やかな空気の中、陽太がふと真剣な顔になり、私の目を真っ直ぐに見つめて声を一段落とした。


「……なぁ、みゆ。明日は最終日だろ。全部終わったら、一緒に後夜祭、行かないか?」


「えっ……後夜祭?」


思わず声が上ずった私の横で、湊兄さんがコーヒーを啜りながら、静かに、けれど釘を刺すように口を開いた。

「陽太。みゆを誘うのは勝手だが、明日の一般公開日は姉さんも来る。さらに言えば、俺の仕事も終わる。あまり羽目を外すなよ」


「わ、わかってますよ湊さん! ちゃんと門限までには……っ!」

陽太が慌てて弁明し、田中くんがそれを大笑いして囃し立てる。そんな二人のやり取りを見ながら、私は胸の奥が高鳴るのを感じていた。


「……ふふっ。うん、陽太。後夜祭、一緒に行こう。約束だよ」


湊兄さんは一度、私の指先に残った数少ない絆創膏をちらりと見ると、コーヒーを飲み干して立ち上がった。

「……行くぞ、河村。2年生に任せきりにしてサボりだと思われれば、明日の片付けをすべて押し付けられるぞ」

「げっ、見逃してくれないか……。じゃあな、みゆ! また明日っ!」


賑やかな一行が店を出たあと、背後から美咲が音もなく忍び寄り、私の肩をガシッと掴んだ。

「なによなによ! あの『後夜祭』の約束! さあ、早川くん! 二日目も完売させて、みゆを笑顔で送り出すわよ!」

「……明日の在庫は、さらに三割増しで準備しておく」

カウンターの奥で、早川くんも静かにガッツポーズを作っていた。


祭りの終わりへと向かう二日目の夜が、明日への期待を抱かせながら、静かに更けていった。

おはようございます。

作者のFERILUです。


『神様の身代わりー光の兄と罪の妹ー』

を読んでくださりありがとうございます。


あれ?おかしいな…短くする予定だったのに…

さて、次は一般公開日の星和祭最終日です。


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