星和祭・一日目:琥珀色の迷宮
ついに、星和高校が一年で最も熱く沸き立つ三日間、「星和祭」が幕を開けた。 校門には有志の手による巨大なアーチがそびえ立ち、校舎の窓からは色とりどりの装飾が揺れている。廊下にはソースの焼ける香ばしい匂いと、どこか浮き足立ったような生徒たちの笑い声が満ちていた。
「みゆ、準備いい!? お客さん、もう並び始めてるわよ!」
美咲の威勢のいい声が飛ぶ。 1年B組の教室は、もはや学校の一部とは思えない変貌を遂げていた。ベニヤ板とアンティーク調の壁紙で仕切られた迷宮喫茶『クロノス』。私は、美咲がこだわり抜いたクラシックなロング丈のメイド服に身を包み、慣れないフリル付きのカチューシャを整えた。
「……うん、いつでもいけるよ。……あ」
私は、カウンターの隅に置いた自分用のバッグをそっと確認した。そこには、昨夜の特訓の結晶である「三段重ねのお弁当箱」が、保冷バッグの中で大切に守られている。
(お昼の休憩時間まで、絶対に崩さないようにしなきゃ)
「いらっしゃいませ。時の迷宮へようこそ」 開店と同時に、入り口には長蛇の列ができた。美咲の宣伝と、凝りに凝った内装が早くも話題を呼んでいるらしい。私はトレイを手に、迷路のように入り組んだ客席の間を縫うように歩き、琥珀色のコーヒーを運んだ。
「お待たせいたしました。特製クロノス・ブレンドです」
「わあ、可愛い……!」
お客さんからの視線に顔を赤らめつつも、私は背筋を伸ばして微笑んだ。昨夜、包丁とフライパンで戦い抜いた絆創膏だらけの指先は、白いレースの手袋の下に隠されている。けれど、その指先には確かな「やり遂げた感触」が残っていた。
ふと、窓の外に目をやると、中庭の広場にはテニス部が運営する模擬店「爆速! テニス部焼きそば」のテントが見えた。 業務用鉄板の激しい音がここまで聞こえてきそうだ。もうもうと立ち上る白い煙の中に、ねじり鉢巻を巻いて一心不乱にコテを振る陽太の姿を捉えた。
(陽太、頑張ってる……。きっと今頃、顔中油だらけなんだろうな)
その時、喫茶店の入り口が騒がしくなった。
「おい、ここか? 湊さんの妹さんがメイドやってるっていう店は」
「うわ、本当だ……。めちゃくちゃ本格的じゃないか」
入ってきたのは、他クラスの男子生徒たちや、上級生の先輩たち。中には、高城部長と大野部長の姿もあった。
「水瀬さん、とっても似合ってるわよ。本当に物語の中から出てきたみたい」
高城部長が優しく声をかけてくれ、私はさらに顔を熱くした。
「ありがとうございます……。部長、お飲み物は何になさいますか?」
忙しさに目が回りそうになりながらも、心はどこか弾んでいた。 トレイを運ぶたび、バッグの中のお弁当のことが頭をよぎる。
「陽太、喜んでくれるかな……」
そんな期待と、少しの不安。
午前中の喧騒はピークを迎え、私は一度も座ることなく、ひたすら迷宮を駆け抜けた。 時計の針が正午に近づく。いよいよ、約束の「休憩時間」がやってくる。
「はい、焼きそば三つお待たせ! 次、並んでる人どうぞ!」
「爆速! テニス部焼きそば」のテント前は、凄まじい熱気と行列に包まれていた。 顔にソースの飛沫を飛ばし、汗だくでコテを振る陽太の姿を、私は少し離れた場所から見つめた。
意を決して近づくと、呼び込み中の田中くんが私を見つけて叫んだ。
「あ、水瀬さん! 本当にメイド姿で来た! 陽太、見ろよ、本物のメイド様だぞ!」
「み、みゆ……っ!?」
陽太の動きが完全に止まった。コテを持ったまま、頬を赤く染めて私を凝視している。
「よ、陽太、お疲れ様。これ、約束のお弁当……」
「おい、河村。手を止めるな、客が待ってるぞ」
背後から低く、冷徹な声が響いた。いつの間にかテントの影から、腕組みをした湊兄さんが姿を現した。実行委員の腕章を巻いた兄さんは、鋭い眼光で陽太を射抜いた。
「湊さん! い、いつからそこに……」
「今さ。……それより陽太、お前がその『物体』を口にする前に、俺が最終検分をしてやる。昨夜、俺の胃袋を代償にして得られた平和が維持されているかどうかをな」
「ちょっと、兄さん! これは陽太に……!」
私の抗議もどこ吹く風、湊兄さんは当たり前のように私からお弁当を奪い取ると、陽太を連れてテント裏のベンチへと向かった。
三人で並んで座る。陽太は緊張で直立不動だ。 兄さんは慎重に三段重の蓋を開け、昨夜あれほど苦しめられた「卵焼き」を一切れ、鑑定士のような目つきで口に運んだ。
「…………。ふん、塩加減は昨夜のクオリティを維持しているようだな。陽太、食え。死にはしない」
「あ、ありがとうございます……!」
陽太は許可を得た猟犬のように、勢いよくお弁当にかじりついた。
「……っ! うめえ……。みゆ、これ、マジでうめえよ!」
陽太の瞳が輝く。ハンバーグを頬張り、スープジャーに入れたお味噌汁を飲み干すと、彼は感極まったように私を見た。
「昨日、湊さんに『食中毒の覚悟をしておけ』って言われたけど……。こんなに美味いもん食わせてもらえるなら、俺、毎日特訓に付き合っても良かったわ」
「お前、さっきからニヤニヤしすぎだ。見ていて不愉快だぞ」
湊兄さんは毒づきながらも、私の作ったおかずを一切れつまんで、少しだけ満足そうに口角を上げた。
「……陽太、しっかり食え。みゆが指を絆創膏だらけにして作ったんだ。米の一粒でも残してみろ、全国大会へのエントリーシートを俺が握りつぶすぞ」
「わかってますよ! 完食どころか、お弁当箱まで舐めたいくらいっす!」
「......それは汚いからやめろ」
湊兄さんは一度、私の指先に残った絆創膏をちらりと見ると、立ち上がって制服の埃を払った。
「……午後も忙しくなる。陽太、焼きそばを焦がすなよ。みゆ、お前もクラスの出し物に戻れ。美咲が『看板娘がいない』と血相を変えて探していたぞ」
「あ、美咲が!? 行かなきゃ! 陽太、また後でね!」
「おう! 午後も気合入れて焼くからな! ありがとな、みゆ!」
湊兄さんの厳しくも温かい(?)見守りのおかげで、私は少しだけ誇らしい気持ちで、再び迷宮喫茶へと駆け戻った。 背後で、湊兄さんが陽太に「おい、その卵焼き、俺にもう一切れ寄こせ」と理不尽な要求をしている声が聞こえて、私は思わず吹き出してしまった。
陽太と湊兄さんに元気をもらい、意気揚々とB組の教室に戻った私を待っていたのは、アンティークな雰囲気とは程遠い、戦場さながらの緊迫した空気だった。
「みゆ、おかえり! ちょうどよかった、もうパニックなの!」
美咲がボサボサになった髪を振り乱し、注文伝票を握りしめたまま悲鳴に近い声を上げた。
「どうしたの? 何かトラブル?」
「違うわよ、その逆! 想定外もいいところよ! ネットや口コミで『B組の喫茶店が本格的すぎる』って噂が広まっちゃって、来客数がパンクしたの。コーヒー豆とミルク、それに看板メニューのガトーショコラが底を突きそうなのよ! このままだと一時間持たずにオーダーストップになっちゃう!」
喫茶『クロノス』の入り口を見れば、廊下の角を曲がってさらに先まで、アンティークな世界を待つ人々の列が途切れることなく続いていた。準備万端だったはずのストックも、この狂乱的な人気ぶりには耐えきれなかったようだ。
「近くのスーパーまで買い出しに行かなきゃだけど、女子はみんなこのロングスカートでしょ? 着替えに時間はかかるし、接客を抜けるわけにもいかないし……万事休すだわ!」
美咲が絶望に顔を歪めたその時、入り口付近で黙々と備品の整理をしていた同じクラスの早川くんが、静かに、しかし力強くスッと手を挙げた。
「……俺が行ってくる」
「えっ、早川くん!?」
早川くんは、普段は物静かで派手なグループに属しているわけではないけれど、実は陸上部で「次期短距離エース」と目されている実力者だ。彼は手際よく美咲の手から買い物リストと財布をひったくると、頼もしく不敵な笑みを浮かべた。
「裏門から出れば駅前のスーパーまで直通だ。信号待ちを含めても、本気で走れば15分、いや10分で戻れる。……水瀬さん、悪いけど、俺が戻るまでなんとかお客さんを繋いでおいて。コーヒー一杯を淹れる時間を、いつもより10秒だけ長く稼いでくれ」
「早川くん……ありがとう! お願い、私たちの命運を託したわよ!」
彼は短く頷くと、次の瞬間には教室を飛び出していた。廊下を曲がる時の加速は、まさに陸上部のそれ。私たちが唖然とするほどのスピードで、彼の背中は人混みの中に消えていった。
それからの15分間は、接客担当の私たちにとって文字通り「命がけ」の正念場だった。
「申し訳ございません、ただいま淹れたての豆をご用意しております。少々お時間をいただいておりますが、その分最高の香りとともにお出しいたします」
私はメイド服の裾を翻しながら、一杯のコーヒーをこれ以上ないほど丁寧に、そして優雅な所作を崩さずに淹れ続けた。美咲もまた、機転を利かせて「待ち時間の間、迷宮の装飾をお楽しみください」と、行列のお客さんに解説をして回っている。
時計の針が刻一刻と進む。ついに最後のミルクを使い切り、美咲と顔を見合わせ「もうダメか」と覚悟したその瞬間——。
「……ハァ、ハァ……っ! 持ってきた、ぞ……!!」
肩を激しく上下させ、汗だくの早川くんが、両手に重そうなレジ袋を提げて教室に飛び込んできた。Tシャツは汗で色が変わっているが、その瞳にはタイムを競う競技者としての、そしてクラスを救った男としての充実感がギラギラと宿っていた。
「早川くん、ナイス! まさにジャストタイミングよ!」
美咲の歓声とともに、B組のキッチンは再び活気を取り戻した。その場にいた女子たちが、一斉に早川くんの周りに駆け寄る。
「すごすぎるわ早川くん! 駅からここまでその荷物持って10分ちょっと!? さすが陸上部のエース候補、次元が違うわね!」
「本物のヒーローに見えたわよ! まさに『クロノス』の救世主ね!」
女子たちのストレートな絶賛に、早川くんは顔を真っ赤にして、冷えたペットボトルの水を一気に飲み干した。
「……ふぅ。……いいよ。クラスのピンチだもんな。それに、みんなが一生懸命やってるの、見てたから」
彼はそう言って、少し照れくさそうに私の方へ視線を向けた。その真っ直ぐな言葉に、私は胸が熱くなるのを感じた。
「早川くん、本当にお疲れ様。……これ、予備のタオル。使って」
「ああ、ありがとう……水瀬さん」
私たちは視線を交わし、力強く頷き合った。
夕闇が校舎を包み込み、一日目の終了を告げる放送が流れる頃、喫茶『クロノス』はすべてのメニューを完売し、最高の形で初日の幕を閉じた。
「あー! 疲れたけど、最高に楽しかったー!」
美咲が椅子に深く沈み込む。私たちは明日への備品を確認し、看板を教室の中に片付けた。
窓の外を見つめると、中庭では陽太たちがテントの明かりを落とし、後片付けを始めているのが見えた。 結局、お弁当の詳しい感想を直接聞けたのはあの数分間だけだったけれど、早川くんの激走、美咲の情熱、そして自分が全力で詰め込んだお弁当——すべてがこの「星和祭」初日という眩しい時間の中で、確かな熱量を持って繋がっていた。
「……さあ、明日は二日目。今日以上の最高の一日にしようね、美咲」
「もちろん! 明日の仕入れは、早川くんに頼まなくてもいいように倍にしておくわよ!」
私は指先の絆創膏をそっとなぞった。痛みはもうほとんどない。
帰り道、校門を出るときに見た夕焼けは、明日も晴れることを約束してくれているようだった。
「……はぁ。さすがに、足が棒みたいだわ」
校門を出たところで、私は大きく伸びをした。メイド服からいつもの制服に着替えたはずなのに、まだ背中にはフリルの重みとカチューシャの締め付けが残っているような錯覚に陥る。
日はすっかり落ち、群青色に染まった空の低い位置には、一番星が控えめに、けれど確かな光を放ち始めていた。祭りの一日目が終わった安堵感と、明日で終わってしまう寂しさが入り混じった、独特な夜の空気。
「おーい、みゆ! 待てよ!」
後ろから響いた、弾けるような快活な声。振り返ると、テニス部の青いジャージに着替えた陽太が、パンパンに膨らんだ部活バッグを肩にかけ、こちらへ向かって走ってくるところだった。
「あ、陽太。後片付け、もう終わったの?」
「おう! 鉄板の焦げ付きがひどくてさ、瑛太と一緒に必死にこすり落としてきた。……っていうか、お前、大丈夫か? さっき瑛太から聞いたぞ。B組の喫茶店、午後はとんでもない行列だったんだろ?」
陽太は私の前に来ると、呼吸を整えながら心配そうに顔を覗き込んできた。
「あはは、バレてた? 陸上部の早川くんが街中を激走してくれなかったら、今頃みんなで途方に暮れてたかも」
「早川……ああ、あの体育祭でリレーのアンカーだった...あいつもやるなぁ、女子のために一肌脱ぐなんて」
陽太は少しだけ複雑そうな顔をして笑ったが、すぐにいつもの屈託のない表情に戻った。
私たちはどちらからともなく、家へと続くいつもの通学路を歩き始めた。陽太と歩く徒歩数分のこの距離が、今はとても愛おしく感じる。
住宅街に入り、街灯の明かりがまばらになると、周囲には誰もいなくなった。
二人きりの静寂。陽太の袖口からは微かに香ばしいソースの匂いが漂い、私の手先からはコーヒーの香りが残っている。それが、今日という日が特別であったことを無言のうちに物語っていた。
「……なぁ、みゆ」
陽太が不意に足を止め、私の隣でそっと手を伸ばしてきた。
大きな、温かい手のひらが私の手を包み込む。昼間、お弁当を渡した時の慌ただしさとは違う、ゆっくりと体温が溶け合うような繋ぎ方。
「今日のお弁当、本当に……本当に嬉しかった。あんなに美味いハンバーグ、生まれて初めて食った気がするよ。湊さんもさ、あんな不機嫌そうな顔して、結局一口も残さずバクバク食ってただろ? 認めたくねえけど、あの偏屈な人の胃袋を完璧に掴むなんて、みゆはマジで天才だな」
陽太は繋いだ手に少しだけ力を込め、照れくさそうに笑った。
「天才じゃないよ。絆創膏の数だけ、失敗して、練習したんだから。……陽太が喜んでくれるところ、想像しながら」
「……そっか。そうだよな」
陽太は立ち止まったまま、街灯の下で私の目を見つめた。
「……あのお弁当のおかげで、午後の焼きそば、百人前くらい余計に焼けた気がするわ。マジで魔法かかったみたいに力が出た。……ありがとな、みゆ」
顔が熱くなるのを感じて、私は繋いだ手を少しだけ揺らした。
「明日も、頑張ろうね。私、明日はシフトの合間に絶対、テニス部のテントまで焼きそば食べに行くから」
「おう! 任せとけ。みゆの分は、誰にも渡さない特大の肉入りを、俺が責任を持ってキープしておくぜ!」
隣り合う家の明かりが見えてくるまでの短い時間。
繋いだ手から伝わる鼓動が、今日一日の疲れをすべて溶かしていくようだった。誰かのために一生懸命になり、その想いが届いたことの、心地よい充実感。
「じゃあな、みゆ。また明日」
「うん、また明日」
陽太の家へと続く背中を見送ってから、私は自分の家の玄関へと手をかけた。
この扉の向こうでは、きっとお姉ちゃんが待ってくれている。そして、あのお弁当を一緒に「検分」した湊兄さんも。
私は今日の成功を二人に報告しようと、弾むような足取りで家の中へ入った。
玄関のドアを開けると、家中を包み込むような温かい出汁の香りが私を迎え入れた。陽太と別れたばかりの、繋いでいた手のひらの熱がまだ消えずに残っている。
「ただいま……」
「おかえりなさい、みゆ。お疲れ様!」
キッチンから顔を出したお姉ちゃんが、弾んだ声で返してくれた。リビングへ向かうと、そこには既に実行委員の仕事を終えて帰宅していた湊兄さんが、珍しく参考書を閉じ、寛いだ様子でソファに座っていた。
「お姉ちゃん、ただいま! あのね、今日のお弁当……」
私がバッグを置くのももどかしく駆け寄ると、お姉ちゃんは期待に満ちた瞳で私の手を取った。
「陽太くん、喜んでくれた?」
「うん! 『マジでうまい』って、ハンバーグも卵焼きも、全部きれいに完食してくれたの。昨日お姉ちゃんに教えてもらった通りに作って、本当によかった……!」
「よかったわね! あなたの努力がちゃんと届いたのよ」
お姉ちゃんが自分のことのように喜んでくれる隣で、湊兄さんが静かに立ち上がり、キッチンカウンターに置いてあった空のお弁当箱に視線を落とした。
「……陽太だけじゃない。俺も、昼に検分させてもらった」
湊兄さんの言葉に、私は少し身構えた。昼間のテント裏ではあんなに毒づいていたから、また何か厳しい評価が下るのかと思ったけれど、兄さんの表情は驚くほど穏やかだった。
「みゆ。……正直に言おう。あのお弁当は、完璧だった」
「えっ……兄さん?」
「味のバランス、彩り、そして何より冷めても損なわれない食感。……初日の『毒物』を知っている身としては、お前のこの数日間の集中力には敬意を表さざるを得ない。陽太が『魔法だ』と騒ぐのも、あながち間違いではない出来だった」
湊兄さんは一歩近づくと、私の頭にそっと手を置いた。いつもの冷徹な「指導者」としてではなく、一人の兄として、私のひたむきな努力を真っ直ぐに認めてくれる温かい手つき。
「よく頑張ったな。お前があれほどのものを作れるようになったことは、俺にとっても……誇らしい」
「……ありがとう、兄さん」
思わぬ直球の称賛に、鼻の奥がツンとした。厳しい特訓に耐え、絆創膏を増やしながら台所に立ち続けた時間が、すべて報われたような気がした。
「ふふ、湊にそこまで言わせるなんて、頑張った甲斐があったわね」
お姉ちゃんが茶目っ気たっぷりに笑いながら、三人分の麦茶を並べる。
「さあ、明日は二日目ね。二人とも、今日はしっかり休んで。明日の朝も、美味しいお弁当を準備しましょう?」
「……ああ。明日は俺の分も、今日以上の出来を期待しているぞ、みゆ」
湊兄さんは少しだけ口角を上げると、再びソファに戻って穏やかな顔で資料を読み始めた。
窓の外では、明日も晴天であることを約束するように、静かな月明かりが庭を照らしている。
陽太の弾けるような笑顔と、湊兄さんの心からの言葉。
二人の大切な人に認められた充足感を抱きしめながら、私は深い眠りへと誘われていった。
おはようございます。
作者のFERILUです。
『神様の身代わりー光の兄と罪の妹ー』
を読んでくださりありがとうございます。
文化祭一日目結構なボリュームになりました。
二日目はそこまで変わりないので少し短めになると思います。




