女子会の作戦会議と、甘いイベントの予感
修学旅行の班決めから数日後。放課後のカフェテラスには、私と美咲、そして凛ちゃんの3人が集まり、女子だけで温かいココアを片手に「作戦会議」を開いていた。
「スキー合宿の準備もだけどさ……みゆちゃん、忘れてない? その直前に、女子にとっての一大イベントがあることを!」
凛ちゃんがココアのカップを置いて、意味深な笑顔で身を乗り出してきた。
「直前のイベント……あ! 2月14日のバレンタインデー!?」
「ピンポーン! 修学旅行が2月18日からでしょ? だからバレンタインの計画も今から立てておかないと、準備が重なっちゃうんだよ〜」
凛ちゃんの言葉に、私も美咲も顔を見合わせた。確かに、修学旅行のパッキングや準備に追われていると、あっという間にバレンタイン当日になってしまいそうだ。
「凛ちゃんは今年、どうするの?」
私が尋ねると、凛ちゃんは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに頬を緩ませた。
「私はね、今年もお手製のお菓子を作ろうかなって思ってるんだ! クッキーかマドレーヌにしようかなって。やっぱり手作りの方が気持ちが伝わるかなと思って」
「凛ちゃんのお菓子、絶対に美味しいやつだ!」
パッと顔を輝かせる私の一方で、美咲は「うぐっ……」と胸を押さえて大警鐘を鳴らすように机に突っ伏した。
「手作り……! 料理はともかく、お菓子作りとなると私にはハードルが高すぎるよぅ……。前にクッキー焼いた時、炭化させて事件を起こしかけたし……」
「あはは、美咲らしいや、そういう私も去年は散々だったっけ」
苦笑いする私に、美咲はガバッと起き上がって開き直ったように胸を張った。
「というわけで! 私は今年、最初からプロの味に頼ることにしました! 美味しい有名店のチョコをバラ売りでたくさん買い込んで、それを自分で可愛くラッピングして、義理チョコとして配る作戦で行くよ!」
「それ、すごく賢いかも! 美味しいチョコがもらえるなら、男子たちも絶対に大喜びするよ」
凛ちゃんが手を叩いて賛同すると、今度は二人の視線が私へと向けられた。
「で、みゆちゃんはどうするの? やっぱり陽太くんにあげるんだよね……?」
「っ……! うん、陽太にはちゃんと渡すよ。それから、兄さんの分もね」
名前を挙げると、一瞬で顔が熱くなっていくのが分かる。陽太への本命チョコはもちろん、湊兄さんへの家族としてのチョコも欠かせない。
「あ、それと蓮さんにも……あ、でも蓮さんは鈴木先輩という彼女がいるから、邪魔にならないように本当に気持ち程度の義理チョコに留めておくつもり!」
「あはは! 確かに、彼女さんに誤解されたら大変だもんね。北条先輩にはプチチョコくらいがちょうどいいかも」
凛ちゃんが納得したようにうなずく。さらに私は言葉を続けた。
「あとはテニス部の男子部員のみんなにも、日頃の感謝を込めてお裾分け用の義理チョコを作ろうと思ってて……」
「えっ、陽太くんと湊先輩と蓮さんに加えて、男子部員全員分!? みゆ、作る数がすごすぎない!?」
美咲が目を丸くして驚く。
「ううん、男子部員たちの分は配りやすいように、手軽につまめるブラウニーかクランチチョコを大量生産する予定だから大丈夫!……でも確かに、かなりの数になりそうだなぁ」
「ふふ、陽太くんの特別なチョコと、みんなへの義理チョコの準備、大変そうだけど楽しみだね! 私も手伝えることがあったら言ってね」
「ありがとう、凛ちゃん! 美咲のラッピング作戦も手伝うからね」
雪山の準備に、甘いバレンタインの計画。
女子特有のおしゃべりに花を咲かせながら、私たちは2月の一大イベントラッシュに向けて、期待とワクワクをさらに募らせていくのだった。




