熱狂の勝ち抜けコートと、修徳館の意地
「ゲームアンドセット! ウォンバイ水瀬・望月ペア!」
私の放った能動的な波紋による強烈な一打が決まり、第7試合は私たちの勝利で幕を閉じた。
「お疲れ様でした、水瀬先輩! すっごく楽しかったです……! 私、こんなにのびのびテニスできたの初めてかもしれません!」
コートチェンジのネット際に歩み寄りながら、望月さんが紅潮した頬で満面の笑みを向けてくれた。
「お疲れ様、望月さん! 望月さんのストロークもボレーもすごくキレてて、一緒に組めて本当に楽しかったよ」
対戦相手だった岡崎さんと桐島さんも爽やかな笑顔でネット越しに手を差し出してくれた。
「いやぁ、水瀬先輩の波紋、すごすぎました! 全然歯が立ちませんでしたけど、最高にワクワクしました!」
「うんうん、本当に楽しい試合だったね! ランダムマッチ最高!」
お互いの健闘を称え合ってガッチリと握手を交わし、私たちは拍手に包まれながらコートを後にした。
自分の試合が終わって一息ついた私は、冷えたスポーツドリンクを飲みつつ、周囲のコートの様子に目を配った。どのコートでも学校の垣根を越えたペアが熱戦を繰り広げているが、その中でも一際、中央付近のコートからすさまじい大歓声とどよめきが巻き起こっている。
「きゃあぁぁ、また決まった……! あれで11連勝だよ!?」
「嘘でしょ、あの重いストローク、全然崩れないじゃん……!」
ギャラリーが何重もの人垣を作り、熱気でむせ返るようなそのコートの脇へ、私も気になって足を運んでみた。
「あ、みゆ先輩! こっちこっち!」
人垣の隙間から、星和の1年生・結衣ちゃんが私を見つけて手招きしてくれた。私はその隣へと滑り込む。
「結衣ちゃん、すごい盛り上がりだけど、何があったの?」
「あそこ! 勝ち抜け交代制のフリーコートなんですけど……今、修徳館の2年生の先輩が、次々と挑んでくる挑戦者をなぎ倒して、なんと11連勝中なんです!」
結衣ちゃんが指さしたコートの中央。そこに立っていたのは、修徳館の黒髪をきゅっと結んだ凛々しい背中──修徳館2年の志村葵さんだった。
「――っ! 志村さん……!」
修徳館の時期エースとし言われている志村さんは、もともと鉄壁の守備力と正確無比な配球が売りの選手だったはずだ。だが、今の彼女は守っているだけではない。相手が放ったどんな強打をも完璧な体勢で受け止め、そこから重みと伸びのあるカウンターショットを突き刺し、次々と相手ペアを圧倒していた。
額にうっすらと汗を浮かべながらも、その瞳には一切の迷いがない。修徳館としての誇りと、この合同練習にかける並々ならぬ執念が、彼女のプレイを極限まで高めているのが遠目からでも伝わってくる。
「すごい……! 修徳館の2年生が、紫苑女子やうちの部員たちを相手に、一度も退かずに11連勝なんて……!」
周りで観戦している星和や紫苑女子の生徒たちからも、驚嘆と称賛の入り交じった歓声が上がっている。
(志村さん、冬の間にどれだけ自分を追い込んできたんだろう……!)
熱を帯びたコートの真ん中で、次なる挑戦者を待ち構える志村さんの姿を見つめながら、私は高鳴る胸を押さえて大きく息を吸い込んだ。三校のプライドがぶつかり合うこの合同交流戦は、まだまだ最高潮の熱を放ち続けている。




