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神様の身代わり ―光の兄と、罪の妹―  作者: FERILU
第30章:三校激突! 合同交流戦

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波紋の実験と、楽しむ心

「第7試合、選手はコートに入ってください! 星和・修徳館(水瀬・望月) vs 修徳館・紫苑女子(岡崎・桐島)!」


アナウンスに促され、私たちはそれぞれのポジションへとついた。ネットの向こうで待ち構えていたのは、修徳館の2年生・岡崎彩乃さんと、紫苑女子の2年生・桐島薫さんだ。


「水瀬先輩、よろしくお願いします! 私、先輩の噂の『波紋』……すごく楽しみにしてました!」


岡崎さんがラケットを軽く構えながら、真っ直ぐな瞳で私を見据えて笑う。その隣で、桐島さんもふんわりとした笑顔で手を振った。


「ふふ、ランダムマッチって本当にワクワクするよね! どんなラリーができるか、思いっきり楽しもうね!」


「よろしくお願いします! 私たちも全力でいきます!」


お互いに礼を交わし、試合がスタートした。

最初の数ゲーム、私はすぐに自分のポイントを稼ぎに行くことはしなかった。隣で緊張と気負いが少し混じっている望月さんの様子を感じ取りながら、この試合のテーマを心の中で決める。


(勝敗にこだわるんじゃなくて、望月さんがのびのびとテニスを楽しめるように組み立てよう……!)


岡崎さんの重いストロークが私に向かって飛んでくる。私はあえてそれを強打せず、私の代名詞である『波紋』の技術を微調整しながら受け止めた。


シュッ……!


ボールの回転や威力を相殺し、相手の体勢や重心の動きを波紋の微弱な振動でコントロールする。相手が次にどちらへ動くかを誘導しながら、狙いすましたような緩い返球を岡崎さんの逆サイドへ送り込む。


「っと……! なんだかこちらの打ちたいコースに誘導されてるみたい……これが噂の波紋!?」


岡崎さんが面白そうに笑いながら、懸命にボールを追いかける。

そして、私が波紋で相手の配球と動きをコントロールし、絶妙なタイミングでコントロールしたボールを返すことで、ネット際にいる望月さんの前へとふわりと甘い返球が誘い出されていく。


「望月さん、チャンスだよ!」


「はいっ!」


私の作った絶好のオープンコートと優しい配球のおかげで、望月さんは焦ることもなく、思い切りのいいストロークやポーチボレーを次々と決めていく。


「わぁ……! 今のショット、すごく綺麗に決まった……!」


自分のショットでポイントを奪うたびに、望月さんの顔にパッと華やかな笑顔が咲き誇る。緊張で硬くなっていた身体がほぐれ、テニスそのものを心から楽しんでいるのが手に取るように分かった。


「すごいね、望月ちゃん! 水瀬さんとのコンビネーション、すごく息が合ってて見ているこっちまで楽しくなっちゃう!」


対戦相手の桐島さんも、全くピリピリした様子を見せず、純粋にラリーの駆け引きを満喫しながら伸び伸びと美しいボレーを返してくる。その清々しい雰囲気に、コート全体が温かい高揚感に包まれていた。


しかし、試合が中盤に差し掛かり、何度かラリーを重ねたところで、岡崎さんの闘志がさらに一段階跳ね上がった。


「水瀬さん、面白いように私たちが動かされてますけど……私のパワー、もっと正面から受け止めてくれませんか!? 水瀬さんの波紋の真髄、もっと見せてください!」


修徳館の誇る重厚なストロークを武器に、岡崎さんが限界まで威力を高めた渾身のスマッシュと強打を浴びせてくる。


「――分かったよ、岡崎さん」


私はふっと息を吐き、ラケットを構え直した。

これまでは相手の強烈なパワーや回転を利用してカウンターを返すことが多かった。だが、今の私には、それだけに頼らないもう一つのアプローチがある。


――相手の力に依存せず、私自身の内側から生み出す、能動的な波紋。


「――いくよ!」


岡崎さんが放った弾丸のような高速ショットが目の前に迫る。私はそれに合せるのではなく、自分のスイング軌道そのものに高密度な波紋のエネルギーを纏わせ、真っ向からぶつかりに行った。


ドォンッ!!


これまでのカウンターとは異なり、私のラケットから放たれた波紋の波動は、相手のパワーを跳ね返すどころか、完全に自らの意思でボールの軌道とスピードを支配し、空気ごと切り裂くような鋭い弾道を描いて相手コートの隅へと突き刺さった。


「なっ……!? ボールの伸びがさっきまでと全然違う……!?」


岡崎さんが驚愕に目を見開き、一歩も動けないままボールがコートの片隅で弾むのを見送る。


「これが……本気の水瀬みゆ……!」


圧倒的な技術の深化を見せつけた私に、コート脇の観戦者たちからどよめきと感嘆の声が漏れ広がる。

勝敗を超えて、テニスの楽しさと奥深さがぶつかり合うこの空間で、私の心は最高潮の充実感に満たされていた。


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