運命のくじ引きと、新たな相棒
人だかりができている本部前の掲示板へと急ぐと、貼り出されたばかりの『くじ引きランダムマッチ』の組み合わせ表が目に飛び込んできた。
エントリーしたのは全部で14名。完全なランダムのくじ引きによって、全7試合・各選手が2試合ずつ異なるペアや対戦相手と戦える豪華なスケジュールが組まれていた。
(私の1試合目のパートナーは……あ、いた!)
* 第1試合: 服部詩織(修徳館1年)・早川紬(紫苑女子1年) vs 関口乃愛(修徳館1年)・樋口咲良(紫苑女子1年)
* 第2試合: 加藤穂花(星和1年)・渡辺美樹(星和1年) vs 白石琴乃(紫苑女子1年)・望月実咲(修徳館1年)
* 第3試合: 水瀬みゆ(星和2年)・浅井結月(紫苑女子2年) vs 菅原凛(修徳館2年)・橘美羽(紫苑女子2年)
* 第4試合〜第7試合:(シャッフルによる2巡目戦・みゆは第7試合にも出場)
(私の1試合目のペアは、紫苑女子2年の浅井結月さん……! そして対戦相手は、修徳館2年の菅原さんと紫苑女子2年の橘さんだ!)
「あの……水瀬さん、ですよね?」
組み合わせ表を見上げていると、後ろから少し落ち着いた、透き通るような柔らかい声で呼びかけられた。振り返ると、紫苑女子の綺麗なジャージに身を包んだ2年生の浅井結月さんが、丁寧にお辞儀をしながら立っていた。
「あ、浅井さん! よろしくお願いします! 今回ペアを組ませてもらう水瀬みゆです!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。全国準優勝の星和のエースである水瀬さんと組めるなんて、すごく心強いです」
浅井さんはふっと優しく微笑んだ。お互いにコートの脇へ移動し、まずはそれぞれのプレイスタイルや立ち回りについて情報を共有することにした。
「浅井さんは、普段はどういうプレイが得意なんですか?」
「私は後衛からのロブやドロップショットを混ぜた、丁寧な配球で組み立てるプレイが得意です。紫苑女子では繋ぎ役を担当することが多いですね。水瀬さんはどういう立ち回りがやりやすいですか?」
「私は相手の打球や展開に合わせて柔軟に対応するオールラウンダータイプです。相手が強く打ってきた時はカウンターを狙ったりもします!」
「なるほど……相手の打球を見極めて合わせられるオールラウンダーなんですね」
「はい! ダブルスだとラリーの中でどんどん立ち位置や陣形が入れ替わると思うので、前衛・後衛って役割をカチッと決めつけずに、前に出た方が攻めて、後ろに下がった方がじっくり繋ぐ感じで流動的に分担していきませんか?」
「ええ、とても良いアイデアですね! ダブルスは立ち位置が常に変わりますし、二人で臨機応変にカバーし合えれば、即席ペアでもすごく守りやすく攻めやすくなりそうです」
浅井さんが嬉しそうに目を細める。お互いの特徴を理解し合い、ダブルスでの流動的なポジションチェンジのイメージを共有できたことで、一気に二人の距離が縮まった気がした。
「全7試合あって全員2試合ずつ出られるみたいですね。まずは第3試合、お互いの長所を出し合って勝ちましょう!」
「はい、よろしくお願いします!」
短い会話の中でも浅井さんの冷静で柔軟な思考が伝わってきて、頼もしさとワクワク感がこみ上げてくる。
「私たちの出番は第3試合だから、まだ少し時間がありますね。第1試合と第2試合、みんなのプレイを観戦していきましょうか!」
「うん、ぜひそうしよう!」
第4コートでは、ちょうど第1試合の『服部・早川ペア vs 関口・樋口ペア』の1年生同士のランダムマッチが始まるところだった。普段は違う学校で練習しているはずの1年生たちが、照れくさそうに「よろしくお願いします!」と声を掛け合い、手探りでコミュニケーションを取りながらコートに入っていく。
「1年生たちも、すごく楽しそうですね」
「うん! 学校の垣根を越えてこうやって一緒にプレイできるのが、この交流戦の一番良いところだね!」
冬の爽やかな日差しのもと、新たな相棒との信頼を深めながら、私は浅井さんと並んで1年生たちの溌剌としたプレイに温かい拍手を送ったのだった。




