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やわらかい侵略  作者: 新 絆
森の世界

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49/50

ネズミも政治をする

「犯人は別にいる」

 

 自白!?!?

 と思ったが違った。

 

「甚平には申し訳ないが、犯人が別にいることは分かっていました。ただ私のところに話が来た時は事が終わってからでした。それに今この村は、三つに割れていまして……。しょ、食料を集めている者達がいるのは、す、すでに知っていました。だから今回の事件もその者達だと分かっていたことです。

 ただこの者達を処罰出来る状況じゃないんです……そこでソラ殿達に助力して頂き、解決したいんです」


 村長は、すすり泣きをしながら村の状況を語った。正直、嘘泣きだと思う。

 

 村長の話だと村に三つの意思決定権のある組織と派閥がある。組織は、奉行衆、長老衆、若頭衆という。

 

 奉行衆というのは、実際に色々なことを決めている人達のことで、長老衆はその前任者とかで、歳とかで実務はしなくなったが、アドバイスはする立場の人達、若頭衆は次の奉行候補って人達だそうだ。


 派閥は、こんな感じ。 

一、村長派

 奉行衆が主なメンバー。いまの村をなんとか元の食料が豊富で、敵にそこまで狙われない環境に戻すことを考えて動いている

 

ニ、若頭派

 若頭衆が主なメンバー。今の村とは別に、新たな場所でにも村を作るか、外敵を排除して今の村を拡張するか。とにかく村を拡げたいと考えて動いている。


三、中立派

 長老衆が主なメンバー。日和見主義なのか、風見鶏なのか、その辺りは不明。


 そして若頭派は村の外敵を一掃するために、食料を集めているらしい。ただ若頭衆のメンバーは、実務では奉行衆の部下なので、ちょっとした小細工とかはともかく大きな動きをすれば、奉行衆にすぐ発覚するので、問題は起きない筈だった。ということだ。


 だが最近は明らかに動きが活発で、食料の隠蔽以外にも外番衆や内番衆など組織内にも人が勝手に増員されたりしているらしい。


 つまり若頭派と表向きなっているが、奉行衆の中に扇動している人物がいるはずだ。というのが村長の話だった。


「話は理解しましたが、それで俺達に何をさせたいんですか?」


 村長は顔をガバっと上げて俺に近寄った。

 

「助けて頂けるんですね。ありがとございます。ソラ殿達が直接何かをする必要はありません。おそらく若頭派は、この機会にソラ殿達を害するなり、勧誘するなり、動きがあるはずです」


「つまり……囮ですか?」


 村長は、手を大げさに左右に振って大声を出した。

 

「と、とんでもない。ただこの村に留まる以上そういう面倒が起こるという話です。私達はその動きを察して主犯を捉えたい。ただソラ殿達をあからさまな警護をしては、犯人が警戒してしまいます。そのためにソラ殿達を心配……」


「それ以上の言い訳は結構」

 

 俺は話を遮った。無駄話をしている気分じゃない。

 そもそも俺はまだ怒ってるんだ。理由がどうであれ、仲間を安易に切り捨てようとするもんじゃない。


「それで、若頭衆は何故村を拡張しようとしてるんですか? 村長が反対な理由は?」


「最近、猫達が村の周りにずっといるんです。そのせいで餌を取りに行けないんです。若頭達は、皆を集めて猫達を駆除し、そのまま少し離れたところに村を作ろうとしています。縄張りを拡げて餌を取りやすくするために」


 それは別に良いのでは?

 餌が枯渇してきているなら、対策は必要だろう。


「村人は昔に比べて大分減ったのです。ここで村を分ければ、村としての機能が保てない。それに村を別にするのは、何か違う思惑があると感じるのです」


 表情に出ていたのか、村長は反対の理由を語ってくれた。なるほど村がどう成り立ってるのかわからないが、今の人手でギリギリ回っているということか。


 ただ村長もどことなく胡散臭いんだよな。まぁ、村の人達が困ってるのを助けたいとは思うから、いい方向に転がるように手伝うか。


「まぁ、わかりました。若頭派が動き出すのを待ちましょうか。黙って殺られるつもりもないので、襲ってきた場合は、俺達の餌になるかもしれませんがね。それと甚平ですが、倉庫番衆?からは外してください。給金は、見張り番の時と同じ給金を出して、仕事は俺達の手伝いとしてください。それがこちらが協力する条件です」


 甚平がまたいつの間にか村を追放されたらなんの為に助けたのか分かんなくなるからな。


「わかりました。元々冤罪ですから手配しましょう。それと村の滞在中は、誠一を案内につけます。必要な事があれば、誠一へ依頼して頂ければ、大抵の事はなんとかなるでしょう」


 えー、嫌なんだけど。それよりも村長、誠一の顔を見なよ。衝撃的な顔してるよ。


「そ、村長! 私には村長をお護りする役目が!」


「誠一しかこの役目は頼めない。護衛には誠二がいれば大丈夫だ。誠一、頼む……」

 

 誠一は必死にだったが村長の一言で黙った。

 

「わかりました。必ずお役目を果たします」


 誠一は机の上にいる村長に跪いて応えた。

 でも村長が机の上にいるから、なんとも締まらないんだけど。


「誠一さんが俺達の監視ってことですかね。監視するのは構いませんけど、先程のような態度じゃ目立って仕方ないんですが」


「フンッ、お役目はお主達の案内だ。つまり客として扱えという役目を賜ったのにそんな態度取るわけなかろうが」


 えっ?

 いや――既に態度は悪いが……気にしても仕方ない。

 さっきよりはマシだし、人の好き嫌いや偏見は簡単に変わるもんじゃないだろう。


「はいはい。わかりましたよ。それで俺達はどこに住むんですか? 出来れば同じ場所がいいんですけど」


「これから手配します。甚平も含めて皆さんで過ごせるようにします。明日から自由に出歩かれて構いませんが、奉行衆に伝わるのは昼過ぎになるかと思いますので、それまでは、出歩かないほうが良いかもしれません」


 村長に案に軟禁されることになったが、変に目立つとまた甚平にしわ寄せがいくかもしれない。

「わかりました。少しの間は自重しましょう。ただ食料を取りにいけないのであれば、用意して頂けますか?」


 村長は眉間に皺を寄せているが、それも仕方ないことだ。食糧難だというのに、余分な食費がかかる上にスライムは大食漢だ。


 村長は渋々頷きながらこの場はお開きになった。


「ペコリあまり村では食べすぎるなよ。猫達がこの村を襲う前に滅びかねないからな」


 ペコリはニコニコして返事をしなかったが、まぁ空気が読めないようで読める奴だから大丈夫だろう。


「ソラこれからどうする? 甚平を助けたのはいいけど、協力って何するの?」


 メリーは何か不安げな声で話しかけてきた。


「まずは食糧難の解決だな。何か仕掛けてくるらしいけど、そっちは放っとけば良いだろう。少なくとも農耕鼠(ムースリングル)族にはスライムを倒せるとは思えない。それよりも明日動けるようになったら猫達と話をつけたいかな」


 メリーはコクンと頷くと話を続ける。

「ソラは猫種達をどうする気なの?」


 それは俺もわからない。でも鼠以外の餌もあると思うんだ。肉食って言うなら意思疎通出来る鼠より、獣を食べれば良いと思うんだが……その辺りは話してみないとわからないからな。


「話次第だけど、猫と鼠を共存させたい。今のままだと鼠達が滅びかねないし、そうなれば猫達もここで餌が取れないんじゃないかと思うんだ。それに猫達はなんでここにこだわってるのか気になる」


 メリーは何かを考え込んでいる。旅に出て思うが、メリーも自分から考えるなんてスライムらしさが薄れている気がする。


「ソラは農耕鼠(ムースリングル)族も猫も助けたいのね。流石だわ」


 フィリアも防衛蟻らしさが無くなってるよな。そもそも拠点を作らない女王蟻ってなんだよ。もしかして俺は何か悪影響を及ぼしてるんじゃなかろうか……


 いや、この子は最初から蟻らしさが無かったのかもしれない。気にしすぎか――それよりもまずは明日だな。


 俺達は案内された建物に昼まで篭っていた。スライムは寝ないからこういう時は、無為な時間が長すぎて結構ストレスだな。


 昼過ぎ食事と共に誠一が現れた。

「外出の許可が下りたぞ。ちゃんと全員大人しくしてたか?」


「あぁ、やっとか。暇すぎて勝手に出歩くところだった。じゃあ行くとしますか?」


 俺は少し誠一を少しからかうように言ってみた。

 

「勝手は止めてくれ。スライムを客として扱うのも難しいのに問題ごとを起こさないでくれ」


 誠一は手を上げて苦笑しながら言ったが、昨日のような敵意のようなものを感じさせなくなっていた。


「冗談だ。メリーとペコリと甚平は村の中で適当に過ごしてくれ。何かあれば村長達が動くと思うんだ。俺とハンベエは食事を取ってくる。フィリアは――まぁこっちだよな?」


「はい!」とフィリアの元気な声を聞いて俺達は外に出た

  

 

 

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