表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/43

33

 ■ ■ ■ ■ ■


 聖アルカディア王城。

 コンコンとラビリスの部屋のドアをノックし、セリカが入室する。


「どうでした?」

 カチュアと共にラビリスの護衛をしていた紗矢がすぐに声をかけてきた。

 主人のラビリスは午前の勉強と昼食を済まし、今はベッドで気持ちよさそうに寝息をたてている。


「何も判らなかった。現状では調べる手立てがない」

 結果を述べ、ため息と共に椅子に座る。


 先日の襲撃で魔術師がセリカの鎧を破壊した手法が未だに判明していない。

 セリカの鎧は魔法を通さず、宝具所持者のセリカには、いかなる宝具の魔法も通じない。

 にも拘らず、魔導士よりも格下の魔術師の魔法がセリカの鎧を破壊した。


「もし強力なアイテムを持っていたとしても、なんで最初からそれを使わなかったのか意味不明だよね」

 唇を尖らせ紗矢が腕を組んだ。


「気味悪い」

 紗矢の言葉に頷くカチュア。


 ラビリスの暗殺が目的なら、最初の襲撃時にそれを使うのが最も成功率が高い。

 なにせ一撃でセリカを無効化でき、虚を突くのに効果的だ。

 だというのに相手はそれを素人の天太に使用した。

 結果的に天太を守ろうとしたセリカが受けたが、あまりにもソレの価値を考慮しない使い方である。


「城の鍛冶師たちの話では、仮にそんなアイテムがあるとするなら人間には創れない代物だそうだ」

 ここの鍛冶師とは武具を研究・製造している専門家を指す。

 汗を流しながら鉄を溶かしてハンマーで叩く様なことはせず、ほぼ魔法で製造を行っている。

 金型と治具に魔力を通して加工を行い、鉄くず等も出ないため現場はかなりクリーンである。

 セリカの鎧はアルカディアの国宝であり、メンテナンスも鍛冶師たちが行っている。

 その彼らが、人間の魔法でセリカの鎧は破壊できないと断言しているのだ。


「あの魔術師の尋問だと、あの時の記憶が無いのも変ですよね」

 紗矢にならってカチュアも腕を組んだ。


 すでに魔術師は処刑されている。

 その前に行われた尋問――強制自白の内容だと、魔術師自身にセリカの鎧を破壊できるような技量が無いと判明した。

 そして、可能性の高いアイテムの存在も確かではない。

 持っていなかったと断言できないのは、魔術師と魔導士共に何者かに記憶を消されているから。

 どうやってあちらの世界に移動したのか、どうやってガイドの宝具の結界を破ったのか、部分的な記憶の抹消をされている以上、何かしらのアイテムの存在も隠されたのかもしれない。

 それを裏付けるのが、天太を攻撃しようとした時に発動した魔法を魔術師が覚えていなかった事である。


「魔術師と魔導士を雇ったのは反乱因子の連中だ。だが、その者達の中にも世界を渡る術や、私の鎧を破壊できるような術を知る者はいなかった」

 セリカの視線は自然と寝息を立てているラビリスに向く。

 もし最初からソレがラビリスに使われていたと思うと、考えるだけで息が詰まりそうになる。


「反乱因子と言っても、大半はクズ貴族が集めた傭兵たちでしたもんね」

 何か情報は得られないかと、捕らえられた貴族の尋問に紗矢も同席した。

 しかし出てきたのは、いかに財力を投資したとか、どんな伝手を使ったとか、ほぼほぼこちらが把握している情報(もの)ばかり。

 最終的に、ベルハイム王は今回の反乱因子とは別の何者か、又は組織が魔術師と魔導士の記憶を消したと判断し、兵士に調査を進めさせている。

 質が悪いのは、魔術師たちを雇った貴族が襲撃の詳細を全く把握していないことだ。

 要求と報酬だけを用意して、後は結果だけを待っているというスタンスだった。


「また天太達のところに行っても大丈夫なんだよね……?」

 不安を口にするカチュア。


 四日後に天太達の住んでいる地域で行われるという花火大会。

 一緒に行こうと誘われたラビリスはすごく楽しみにしている。

 それを中止にしたいなんて気持ちは微塵もない。

 けれど、正体の掴めない何者かがラビリスを視ていると思うと、()()()という不安が拭えない。


「何もない事に越したことはないが、何があっても姫様は私たちが守る。私たちはそれを貫くしかない」

 セリカが優しくカチュアに大丈夫だと声をかける。


 ラビリスがまた世界移動をする事は今回も極秘にしている。

 知っているのは親衛隊とバァバ、ベルハイム王とガイドという身近な数名しかいない。

 そして今度も襲撃があった場合、ここでのやり取りが漏れているということになる。

 スパイを疑うだけでなく、城での会話が盗聴されている可能性も出ているのだ。

 向こうの世界の盗聴器はこちらでは使えないが、声の振動を拾う魔法が存在する。

 もちろんそういった類の魔法を感知・無効化する処置は王城全体に施されているが、絶対に安全という保障はない。


「どこにいても危険なら、姫様のやりたい事は叶えてあげたいしね」

 ラビリスが寝返りついでにシーツを蹴飛ばしたのを見て、紗矢が掛けなおす。

 幸せそうな寝顔をしている子が、どこにいても危険なんて思いたくもないが、城の中でもラビリスを一人にさせていられる場所がないのも事実。

 だったらできるだけ思い通りにさせてあげたい。


 婚約の問題は解決したが、親衛隊の気が休まることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ