17
「お前たち、まだいたのか」
部屋を出たところに二人の兵士が立っていた。
セリカさんの反応に、二人は心配そうな表情を浮かべている。
「早く持ち場に戻れ。私たちといるところを見られたらお前たちも疑われるぞ」
兵士の人たちは俺と羽沙に視線を移すと、何も言わず一礼して去っていった。
どうやら事情を知ってる人たちのようだ。
「そういえば、二人は監禁されてることになってるんだっけ?」
羽沙の問いに頷く紗矢さん。
「うん、そう。今は抜け出しちゃってるから、マズイ人に見つかったら脱獄扱いかなー」
「……大丈夫なの?」
「姫様を連れ出した時点で重罪だし、今さらこのくらいどうってことないよ」
そんな軽く言われても安心できんぞ。
「話してる暇はない。行くぞ」
先陣を切るのはガイドさん。その隣をカチュアが並び、俺たちは二人の後ろに続く。
「あれ? 婆ちゃんは?」
部屋を出たところまでは一緒だった気がするのに、いつの間にか姿が見えない。
「バァバなら先に行ってるはずだ」
……いつの間に。
城の広い通路を六人で歩く。
監禁されているはずのセリカさんと紗矢さんがいるし、変装してるとは言え、見慣れない顔の俺たちを怪しむ人もいるんじゃないかと、最初はビクビクしていた。
「……見て見ぬフリしてる?」
だが、羽沙の言葉通り、廊下ですれ違う人たちはみんな俺たちに気づかないフリをして、視線を合わさず通りすぎていく。
「ラビリスの味方をしたくて見逃してくれてるんだよな? こんなに婚約に反対してる人たちがいるんだから、みんなで王様を説得すればなんとかなるんじゃ?」
「それができればねぇ」
紗矢さんが苦笑する。
隣でセリカさんが真面目な顔で答えた。
「意見を声に出すだけならいくらでもできる。だが王の決定を覆すとなると簡単ではない」
「それこそ、ベルハイム王に決闘を申し込んで勝つくらいしないとね」
「主君と決闘なんて冗談でも言うな」
すいませんと紗矢さんは舌を出した。
しかしそれに食いついたのは羽沙だった。
「もし王様に決闘で勝っちゃったらどうなるの?」
その純粋な質問に、しばらく誰も応えなかった。
「……もしかしたら」
カチュアが呟く。
「こちらの言い分を聞いてもらえるかもしれない」
羽沙がチラッと俺を見る。
「……変な期待すんなよ。俺に決闘とか無理だからな」
「男子って、そういうの憧れたりしないの?」
憧れないと言えばそうではないが、そういうのはシチュエーションが大事であって、いきなりそんなこと言われても何の魅力も感じない。
「ベルハイム王は名の知れた剣豪でもあり、その御身は効果が秘匿されている宝具で護られている。たとえ『守護の光』を持てるからといって、天太に勝ち目は微塵もない。バカな事は考えるなよ」
はい。セリカさんの忠告で完全にその選択肢はなくなりました。
平和に話し合おう。
「宝具の効果が秘匿されてるって言ったけど、身内にも教えてくれないのか?」
「基本的に宝具の性能は白神竜が守護者に与えるときに説明するので、秘匿は不可能なのだ」
「あの竜、大声すぎるんですよね」
その時の様子が目に浮かぶのか、二人は顔をしかめた。
「だがベルハイム王は二つの宝具を所持することで、その性能が変化した。融合とでも言うべきかな?」
「でも宝具って王様じゃなくて、王様を護る人に渡されるんでしょ? なんで王様が持ってんの?」
「…………」
俺の質問に答えてくれる人はいなかった。
ただ、確実に四人の空気が重くなったことだけは伝わってきた。
「ちょっと、変なこと訊かないでよ。みんな暗くなっちゃったじゃん」
「……すまん」
羽沙に肘でつっつかれた。
しばらくして、通路の曲がり角に差し掛かったガイドさんが足を止めた。
「ここを曲がれば応接の間だ」
そこにラビリスとベルハイム王がいる。
ガイドさんの声に、誰もが緊張を表した。
「で? 作戦は?」
俺の問いにカチュアが視線を合わせる。
「バァバの作戦だと、天太が王様に思いのたけをぶつける」
「……まあ、その為に呼ばれたようなもんだしな、言いたいことは言うよ。それから?」
「それだけよ」
「……うん?」
「おい、カチュア」
セリカさんがジト目でカチュアの肩に手を置いた。
「まさか、バァバは本当にそれだけの為に天太を呼びに行かせたのか?」
「はい。私も耳を疑いましたけど、本当にそれだけです」
「……よくそれで行動しようと思ったな」
「私にはどうすることもできなかったので、利用できるなら何でも利用してやろうかと」
「……わかった」
深くため息を吐くセリカさん。
「ごめんね天太君。そういう事だから」
言いつつ、紗矢さんは両手を合わせて俺を拝む。
……マジかよ。
あの婆さん、教育係の肩書を持ってるくせに、計画が雑すぎだろ。
「行くぞ」
問答しても時間の無駄と考えたのか、ガイドさんが足を動かした。
「緊張するー!」
羽沙が胸に手を当てている。
俺は……なんというか、あまり緊張がない。ここまでは緊張してたのに、さっきのやり取りで一気に緊張感が無くなってしまった。
角を曲がると突き当りに大きな扉があり、その両脇に二人の兵士が立っていた。
二人は俺たち……というより、セリカさんと紗矢さんを見て顔色を変えた。
どうやらこの人たちは通路ですれ違った人たちとは違って、俺たちを見過ごしてはくれなさそうだ。
「ガイドさん!?」
二人の兵士は驚きながらも、扉の前に立ち行く手を阻む。
「時間が無い。悪いが通してもらえないだろうか?」
「……セリカさん、貴女は監禁の処罰が下されていたはずでは?」
「ガイドさんに出してもらっちゃった」
兵士の問いに即答で答える紗矢さん。そのネタバレにガイドさんは苦笑している。
「そこの二人は?」
今度は俺たちに視線が刺さる。
「ラビリスの友達だけど、なにか?」
堂々と胸を張って羽沙が答えた。
「姫様のご友人が、なぜ使用人の服を着ているのだ?」
まったくもってその通り。
異世界からやって来ましたなんて言ったら、それこそややこしくなりそうだし、どう答えればいいんだこれ?
なんて迷ったのもつかの間、紗矢さんが前に出て二人の肩に手を置いた。
「ごめんね、こうしてる間にも姫様の婚約が決まっちゃうかもしれないの。ここまでやって間に合わなかったじゃシャレにならないから、ちょっと力づくでいかせてもらうね」
言うや否や、紗矢さんは二人を軽く押し――
ドガンッ!
軽く押したように見えた動作は予想を超えて、体格のいい兵士二人を吹っ飛ばし、扉に直撃させて強引に開けてしまった。
「これこそシャレにならんぜ」
「ナイス紗矢」
口を引きつらせるガイドさんの隣で、カチュアがガッツポーズ。
「なんだお前たちは!?」
青地に白の大きな十字架の刺繍。まるでゲームの僧侶のような服を着たおっさん数人が怒声を上げながら近づいてきた。
応接の間は予想以上に大きかった。
学校の体育館ほどの広さで、床は絨毯が敷かれて柔らかく、応接間らしく来客の目を楽しませるための調度品が四方に飾られている。
中央の長机の一角にラビリスが座っていた。
その表情は暗く俯き、周りの声など聞こえてないように見えたが、みんなが騒ぎ始めたことでようやく俺たちに視線を向けた。
「なんじゃと!?」
大きな目をさらに見開いて、跳ねるようにして立ち上がった。
「ラビリス!」
羽沙がラビリスに手を振り、他のみんなもラビリスに視線を向けている中で、俺は彼女の隣に座っている一人の男性に注意を引かれていた。
短髪のブロンドで焼けた肌。
夏の浜辺で見たら完全にサーファーと見間違えるその人は、明らかに他の人たちとは違う雰囲気を纏っている。
あの人がラビリスの父親か。
座っているので上半身しか見えないが、かなり身長が高い。
白銀ベースで金の装飾が入ったフルアーマーと、ダークグレーのマント。
頭に王冠の様な分かりやすい物は乗せてないが、婚約の場には不釣り合いこの上ない。
その人は腕を組み、状況を静観している。
王様の向かいには二十歳くらいの青髪の男が座ったまま驚いた顔で俺たちの事を見ている。
たぶんこの人がラビリスの婚約者なのだろうけど――
もっとラビリスと歳が近い奴かと思ってたよ!
年の差婚は珍しくもないけど、こいつ絶対ロリコンだろ!
そんなことを考えてる間に、セリカさんと紗矢さんは部屋にいた兵士たちに組み伏せられていた。
抵抗せずに大人しく言うことを聞いている。
「止めぬかバカ者!」
ラビリスが駆け寄って二人を解放するように求めても、誰も力を緩めようとはしない。
気づけば俺たち全員が囲まれていた。
……どうすんだこの状況。落ち着いて話し合う感じじゃねーぞ。
そんな中、カチュアが一歩前へ出る。
「我々はラビリス姫のご婚約につきまして、再考をしていただきたく参上いたしました。多少強引になってしまったことをお許しください」
「許されるわけがない! お前たちはなにを考えてこんな――」
「私たちは王様に話があるの! 大臣は黙ってろ!」
組み伏せられたまま紗矢さんが叫ぶ。
その言葉と態度に、大臣のおっさんたちの顔色がみるみる赤くなっていく。
「キサマは自分の犯した罪も忘れて偉そうに物を言うな!」
「しかも監禁の身でありながら、ここにいるということは脱獄したということ。牢に入れられるところを王のご慈悲で免れたというのに、恩を仇で返すとはそれなりの覚悟があるのだろうな?」
威勢はいいが、紗矢さんの強烈な眼力でおっさんたちは数歩後ずさる。
「姫様を自由にするためだったら、コイツらは命だって懸けるぜ」
「ガイド! まさかお前も共犯ではないだろうな!?」
「この状況で共犯じゃないほうがおかしいだろ? 二人は俺が連れ出した」
たぶん目上であろう大臣の人たちに、ガイドさんは不敵に笑った。
「お前たちはなんて事をしてくれたのじゃ! 大人しく婚約成立を待っておれば、セリカも紗矢もまたわらわと一緒におれたというのに!」
「なんっ……ですって? 姫様、今なんと?」
床に組み伏せられても大人しくしていたセリカさんは、信じられないような表情でラビリスを見上げた。
黙って答えないラビリスの代わりに、大臣の一人が答える。
「お前たちは王族である姫様を異世界に連れ出し、しかもその理由がご婚約を阻むものなどと、死罪でも足りぬというのに、姫様は――」
「ベルハイム王!」
大臣の言葉を最後まで聞くことなく、セリカさんは叫んだ。
「私たちを餌にして姫様と取引をしたのですか!?」
心底悔しそうにセリカさんは王様を睨んでいる。
そして、ようやく王様が口を開いた。
「話を持ち掛けてきたのは娘だ。そうまでしてお前たち二人を護りたいと言うならばと、私はそれを了承した。娘も婚約を果たし、優秀なお前たちが残るのなら異論はない」
セリカさんの眼力をものともせず、王様は淡々と答えた。
「……そんな……姫様、私たちのために」
事情を聞いて青ざめる紗矢さん。
「だって……お前たちと離れたくなかったのじゃ」
ラビリスは笑って見せようとして――両目から涙を流した。
「お前たちがいなくなるくらいなら、わらわはずっと城におってもいい」
ラビリスの夢は母親が見てきた世界を旅して、自分の子供にセリカさんたちのような家来を見つけてやること。
その中にはきっとカチュアも含まれていて、三人が一緒にいることが前提だ。
夢が叶わないのなら、せめてみんなと一緒に暮らしたい。
ラビリスは自分の夢を犠牲にして二人を守った。
まだ十歳の女の子がだ。
「……私たちのせいで」
それは違う。セリカさんたちが悪いとは思えない。
「大人しくしておれ。もうじき話も終わる」
涙を流しながら、ラビリスは気丈に笑った。
その言葉を合図に、大臣たちが俺たちを連れ出すよう兵士に命令している。
ラビリスは静かに席に戻ろうとし、誰もそれを止めようとはしない。
そして、部屋全体が一瞬で静まり返った。
みんなが俺を見ている。
ずっと表情を変えなかった王様でさえ、目を見開いている。
いつの間にか、俺は右手で魔法剣を握りしめていた。
ポケットに入れていた指輪が、俺の感情に反応してしまったようだ。
魔法剣の効果で、五秒先の未来と現在の映像が同時に目に映る。
「ここにいる大人に訊きたいんだけどさ」
部屋に入って初めての言葉に挑発の色を含ませる。
こんな風に話すつもりはなかったのだが、我慢できなかった。
「アンタたち、本当にラビリスを大事にしてんのか?」
スッと魔法剣の切っ先を王様に向ける。
大臣や兵士たちが俺を取り押さえようとしたが、ガイドさんとカチュアが壁になり阻んでくれた。
俺は王様と視線を合わせて続ける。
「俺も家族を亡くしてるからさ、王様の考え方ややり方に絶対反対ってわけじゃなかったんだ。だけどこれは違うだろ? ラビリスを守ろうとしてんのに、なんでラビリスを放っておいてんだ?」
「なんだお前は!?」
王様は答えず、代わりに大臣が声を発する。
「この二人は私が異世界から連れてきました」
カチュアの発言に室内が一層騒ぎを増したが、今はそんなことどうでもいい。
「そんなことよりもなんであんた達はラビリスを無視してんだよ!? あんな泣き方してるのになんで誰も声を掛けてやらねーんだよ!? アンタも! アンタも!」
大臣や兵士に魔法剣を突き付ける。
婚約をしてしまえばラビリスは国から出られない。
彼女の安全を思い、危険を伴う旅に出てしまう前に、婚約を成立させたいという考えを持ってしまうのはわかる。
けど、今のラビリスは自分の気持ちを殺して泣いている。
色んな事情を我慢して、大事な人と一緒にいたくて、だからしたくもない婚約に頷いて、涙を流すことしか自分の気持ちを表せず、苦しんでいる小さなお姫様がそこにいる。
それなのに、部屋にいる大人たちはそんな彼女を無視して事を進めようとしている。
俺はそれが許せない。
いくらラビリスを案じてのことでも、今のあいつに手を差し伸べない大人の考え方に賛成なんてできない。
「ラビリス、こっちおいで」
俺の怒声で静まった隙に、羽沙がラビリスの手を取り引っ張ってきた。
「……お前たち……なんで?」
ラビリスはすでに泣き声だ。
「だって友達が困ってるからさ、ほっとけないじゃない?」
ううう、と嗚咽を漏らして、ラビリスは羽沙にしがみついた。
「その剣を持てるのなら、こちらからも話がある」
王様が立ち上がる。
大きいとは思っていたが、立ち上がるとさらに大きく見える。二メートルくらいあるんじゃないだろうか。
「娘の為にこの城で働いてくれ。ソレを持てるのならあちらの世界の者でも歓迎しよう」
すぐに反応したのはラビリスだった。
「それはダメじゃ! 天太は普通の民じゃ! 望みもせぬ者に兵職なぞさせられぬ!」
危険な仕事もあるだろうし、本人の意思を無視して、魔法剣を持てるだけで勧誘する行為がラビリスは嫌なのだろう。
もしかしたら過去に何かあったのかもしれない。
魔法剣を持てる人間は希少だから、王様が食いついて兵士に誘おうとするのは目に見えている。だからセリカさんは俺が魔法剣を持てる事を秘密にしておきたかったんだ。
「今そんなことは話したくないし関係ない。俺たちはラビリスの婚約を止めさせたくてここに来たんだ」
王様はスッと目を細めた。
「ではどうやって止めさせるつもりだ?」
話し合いで、とはもういかないだろうな。
きっと大臣たちがそんな余裕を持たせてくれないだろうし、俺の気持ちに反応して現れた魔法剣がすでに答えを出している。
ふと、父さんの言葉が頭に浮かぶ。
人命救助をしていた父さんは、人を助けたいと思う時ほど冷静にならなければならないと言っていた。
気持ちが先行して冷静さを欠けば、助けられるものも助けられないと。
今の俺はどうだろうか?
完全に頭にキて魔法剣を突き付け、これでラビリスたちを助けられるだろうか?
「どうした?」
王様の声に柄を握る手に力をこめる。
この選択肢は無いと思っていたのに、今はこれしか考えられない。
「王様、あんたに決闘を申し込む。俺が勝ったらラビリスの婚約を止めて、ラビリスの為にみんながやった事も大目にみてほしい」
「おぬし何を言っておるのじゃ!?」
大臣と兵士だけでなく、ラビリスやセリカさんまでも止めろと騒ぎだした。
王様は凛とした声で応じる。
「では私が勝利したときには、お前はこの城で娘の護衛として働き、娘の婚約も成立させる。それでよいな?」
いいかな? と羽沙に視線を向けると。
「がんばれ! 何がなんでもまけちゃダメだよ!」
笑って俺の背中を押してくれた。
「お父様!」
「心配するな、殺しはしない」
ラビリスに淡々と答える王様。
俺の表情で肯定と見るや否や、王様は兵士に指示を出してテーブルを移動させ、部屋の中央に立った。
どうやらここで決着をつける気らしい。
「……天太」
心配して見上げてくるラビリスに俺は苦笑してみせた。
「こうなっちまったらやるしかねーよ。他に方法が思いつかなかった」
「このバカ者が」
ギュッと足を抓ってくる表情は、さっき泣いていたよりも穏やかで少し安心した。
「ベルハイム王、一つ提案がある」
ガイドさんがみんなに聞こえる声量で声を上げた。
「こいつは一般人で剣術に関してはズブの素人だ。訓練だって受けていない。決闘なんて言ってるが、正直これじゃあ姫様の婚約までの時間稼ぎにしかならないだろ?」
「私に手加減をしろと?」
ガイドさんの助け船に内心俺は胸を撫で下ろした。
もし何もなく事が進めば、百パーセント俺は負ける。
少しでも俺に有利になるよう、誰かが声を上げてくれることを期待しての決闘の申し出だったからだ。
「いや、手加減なんてしなくていい。ただ、天太にも勝てる可能性を与えてほしい」
ガイドさんは王様に敬語を使っていない。
歳も近そうだし、仲が良いのかな?
「剣豪と呼ばれる王が万が一にもこいつの剣を受けることはないだろ? だからその装備、身に着けている全ての物に少しでも傷をつけることが出来たらこいつの勝ちにしてくれ」
そんな破格の条件でいいの!?
「その程度でいいのか?」
しかし王様はあっさり頷いた。
それだけの実力差ってことかよ……
「なあ、ガイド」
王様は帯刀していた剣を抜いて俺に向ける。
「私が王位に就いてから決闘を申し込んできた者は何人いたかな?」
「一人もいないな。なんせ前王を討って王位に就いたからな、それだけで腰が引ける奴も多いだろ」
「そうか。嬉しいではないか、初の挑戦者が娘の為にやってきたのだ」
本当に嬉しそうに、王様は俺を見て笑った。
「そう思うなら、華を持たせてやれ」
「それとこれとは別だ」
王様の反応にガイドさんは肩をすくめて、壁際まで身を引いた。
「そんじゃ、いっちょやってくる」
心配そうなラビリスとセリカさん。
対照的に意気揚々と送り出してくれる羽沙と紗矢さん。
ガイドさんとカチュアは静かに俺を見ている。
今になって高鳴りだした心音を抑え、俺は王様と対峙した。




