↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰キャ男子とパワフル少女  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/37

第6話 追いかけっこ

 翌日、私は今日もお弁当を持って学校へと向かう。

 今日は昨日みたいなドジはしないからね。

 家を出る時、自身に満ちあふれた私を見て、神様がなぜか心配そうな顔をしている。どうしてなんだろう。もう、今日は大丈夫なはずなのになぁ。

 不思議に感じで顔を向けていると、神様から遅れるよって注意されてしまう。


「行ってきまーす!」


「ああ、いってらっしゃい」


 神様に見送られながら、私は元気よく家を出ていく。

 今日も天気がよくて、私は元気よく走っていく。

 山で暮らしていた頃は、こんな風によく走り回っていたっけな。なんだか懐かしくなってくる。

 でも、人間の社会は危険がいっぱいだと聞いている。昨日は鴨太くんとぶつかってしまったし、本当に気をつけなきゃね。

 私は慎重に走っていく。

 その途中だった。


(あっ、このにおいは……)


 私の鼻を、何かがかすめる。

 ちらりと目を向けると、鴨太くんがいた。

 自転車に乗っているからか、鴨太君は速い。

 だけど、そのくらいのスピードなら、私だって!


「鴨太くーん!」


 私はさわやかに声をかける。

 ところが、こっちを一瞬だけ振り向いた鴨太くんは、なぜか唐突に逃げ始めた。

 追いかけっこ? 負けないわよ。

 背中を見せて逃げる相手は追いかけたくなっちゃう。これ、熊の習性だから覚えておいてね。獲物だと本能的に思っちゃうのよ。

 というわけで、私は走り出して追いかけてしまう。

 相手は逃げる自転車だけど、この程度のスピードなら、熊の脚力なら楽勝よ。


「ねえ、鴨太くん。なんで逃げるの?」


「うぎゃあっ! なんで自転車と並走してんだよ!」


 追いついて声をかけると、鴨太くんに思いっきり驚かれてしまった。びっくりしたぁ。

 だけど、そうも言ってられない状況になってしまう。


「危ないっ!」


 同時に、鴨太くんがバランスを崩してしまったのよ。

 このままじゃ倒れちゃう。

 とっさに手を出した私は、がっちりと鴨太くん(と自転車)をつかんでなんとか倒れないようにした。ふぅ、セーフ。

 私は額をすっとぬぐうと、改めて鴨太くんを見る。そしたら、私を見て怯えた顔をしている。あれれ、おかしいなぁ。


「お前、本当になんなんだよ。自転車でぶつかって無傷だったり、スピード出してる自転車と並走したり……。普通の人間じゃできないぞ」


 鴨太くんは、私が普通にしてしまっていたことに対して、疑問を感じているみたい。

 うーん、これって人間はできないってことなのかな。よく分からないや。

 でも、こんな風に言われるっていうことは、やめた方がいいってことなのかなぁ。


「えへへ、ごめん、次から気を付ける。だから……」


 私は鴨太くんにちょっと近づいていく。


「今のことは、みんなに内緒だよ。私たちだけの秘密、ね?」


 私が笑顔で声をかけると、鴨太くんはどういうわけか顔を真っ赤にしてしまっている。どうして、真っ赤になるんだろう。


「わ、分かった分かった。とりあえず離れてくれ」


「あっ、うん、ごめんね」


 私が気になって顔を近付けていくと、鴨太くんは慌てたように私のことをはねのけている。

 びっくりしたけれど、私は言われた通りに鴨太君から距離を取る。


「お、俺は先に行くから、君も遅れないようにするんだよ」


「えっ? あ、そうか、今、登校中だったね」


 鴨太くんに出会えた喜びで、私は今学校向かっている最中だということを忘れてしまっていた。いけないいけない。

 鴨太くんに言われて思い出すなんてなぁ。

 もう、私ってばこんな感じで人間生活は大丈夫なのかな。楽勝だと思っていた私も、さすがに不安を覚えてしまったよ。

 そうしている間に、鴨太くんの乗って自転車はさっさと走り去ってしまった。ちょっと待ってよぉ……。

 だけど、寂しがっている場合じゃない。私は、神様に用意してもらったすまぁとふぉんとかいうものを取り出して時間を確認する。

 7時49分、まだまだ余裕だった。

 一度気持ちを落ち着かせようと、私は大きく息を吸って吐く。さっきみたいに走って自転車を追いかけられないからね。


「よし」


 十分に落ち着いた私は、学校に向けて歩き出す。

 あっ、そうだ。今日はちゃんとお弁当はあるわよね?

 私は昨日のこと思い出して、自分の手をしっかりと確認する。うん、ちゃんと包みを持っている。

 さすが私ね。同じ過ちは二度繰り返さない。だって、そうしないと自然の中では生き残れなかったもの。

 だけど、一度気持ちを落ち着かせた方がよさそうだった。鴨太くんに出会えた喜びと、いろいろといわれた戸惑いで、ちょっと混乱しているみたいだもの。


「うん、よしっ」


 両手を大きく広げて深呼吸をした私は、想いっきり気合いを入れてみる。大丈夫っぽい。

 そういうわけで、私は改めて学校に向けて歩き出した。


 そういえば、あとで家に帰ってから神様に聞いた話、人間は自転車と並んで涼しい顔で走れないんだって。

 なるほど、それで鴨太くんはあそこまでびっくりしてたのか。

 私、またひとつ偉くなったよ。

 もっと人間らしくなって、鴨太くんのお嫁さんに絶対なるんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。