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陰キャ男子とパワフル少女  作者: 未羊


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第4話 二度目の衝撃

 俺はなんとももやもやした気分で登校している。

 昨日、高校デビューをしようとしたら、同じ中学出身のやつに陰キャばれをされた。おかげで、クラスメイトになった連中に声をかけられずに一日が終わってしまった。

 さらに、帰ろうとしたら変な女子生徒にいきなり告られて頭は大混乱。結局トイレに逃げ隠れて、俺の高校デビューは散々のズタボロだった。

 正直なところ、今日は休もうとも考えたが、入学早々のテストがあるのでここは休めなかった。

 はぁ、気分は最悪だ。

 俺は大きなため息をつきながら、自転車をこいで学校へと向かっている。


 家を出てだいぶ学校に近付いてきた。

 もうちょっとで学校に着く頃だ。

 その時だった。

 唐突に俺の目の前に何かが飛び出してきた。慌ててブレーキをかけるも、どう考えたって間に合わない。

 これは事故った。

 俺はずっこけることも覚悟した。

 俺はつい目をつぶってしまう。

 それと同時に、俺の体に強い衝撃が走る。このまま投げ出されて終わりだ、そう思った。

 ところが、俺はこけることもなかったし、何かを弾き飛ばしたような感触もなかった。一体どういうことだ。


「あっ、大丈夫?」


 女の声が聞こえてくる。

 俺がおそるおそる目を開けると、そこに立っていのは昨日の女子生徒だった。


「あっ、鴨太くん。おはよう。ごめんね、私が急に飛び出したみたいで危ない目に遭わせちゃって」


 は?

 にこやかに声をかけてくるその女子生徒の態度に、俺は頭が混乱した。

 目の前の状況をよく見ると、とんでもなく恐ろしいことに気が付いた。

 俺は自転車で走ってきたんだが、それなりに速度は出ていたはずだ。なのに、この女子生徒は俺の自転車を片手で止めて涼しい顔をしている。

 どういうことなんだ、一体。


「いや、俺は大丈夫なんだが、君はどうなんだ?」


 目を丸くしながら、目の前の女子生徒に俺は問いかけている。そしたら、その女子生徒はきょとんとした顔をしている。なんで聞かれているのか理解していないように見えるぞ。


「私は大丈夫だよ。鴨太くんが大丈夫なら、私はもう行くね。学校も目の前だもん」


「あ、ああ……」


 学校も結構近いので、目撃者も結構いるはずなんだが、誰も騒がない。どういうことなんだろうか。

 気にはなるものの、俺の目の前からはあの女子生徒が走り去っていく。俺もあいつも無事だったし、誰も騒がないならこのままでいいか……。

 不思議な感覚に襲われながらも、俺は自転車を押して学校まで歩いて行った。


 学校に登校した俺は、結局クラスからは浮いていた。陰キャだったということが伝わってしまっているのか、誰も話しかけてくる様子はない。

 まあ、今日はテストだから、その方が好都合だけどな。


「うん?」


 俺は見覚えのないものを持っていることがに気が付いた。

 そういえば、自転車の前かごに知らない間に入っていたな。家を出てくる時にはなくて、学校に着いたらあったということは、あの女子生徒のものか。

 あとで届けてやるか。

 もう一時間目が始まることもあって、俺は机の中にその見覚えのないものをしまっておいた。


 そうして、午前中のテストが終わってお昼休みを迎えた時だった。

 荷物を届けてやろうと俺が机の中に手を入れた時、扉が開いて例の女子生徒が姿を見せた。


「ごめんくださーいっ!」


 教室にでかい声が響き渡る。


「私のお弁当、どこーっ!?」


 クラスにずかずかと女子生徒が入ってくる。よく見ると、鼻がちょっと動いている。もしかして、においをかいでいるのか?

 てか、お弁当って……。


「そっか、これのことか」


 机の中から荷物を取り出して、俺は席を立つ。

 そして、クラスの中で騒ぐ女子生徒へと近付いていく。


「これ、君のか」


 俺が目の前に荷物を差し出すと、女子生徒の動きがぴたりと止まる。その目は俺の方をしっかりと見つめていて、なぜか目をキラキラとさせている。


「あーっ、私のお弁当!」


 ずかずかと近付いてきたかと思えば、俺の手から弁当を奪い取って大事そうに抱えている。頬ずりまでしているあたり、ちょっとやべぇやつだと思ってしまう。


「よかったぁ、腹ペコのままお昼を過ごさなきゃいけないかと思ってたんだ。鴨太くん、ありがとう。助けられたのは二回目だね」


「いや、今朝のあの時に俺の自転車のかごに、君が勝手に落としただけだろう」


「でも、預かっててくれた。本当にありがとう」


 目の前の女子生徒はとにかくにこにこと笑っている。笑顔が俺にはきつい。


「えへへ、ありがとう。昨日は断られちゃったけど、またアタックするからね」


 女子生徒はそうとだけいうと、浮かれた様子で教室を出ていった。一体何だったんだ。


「ずいぶん変なやつに好かれたな、浅葱」


「あ、うん。なんだったんだ、あいつ」


「隣のクラスの輪熊月乃っていうらしい。誰も彼女を知っている奴がいないから、よそからの転校生なんだろうな」


「そっか……。って、お前誰だ?」


「おいっ!」


 なれなれしく話しかけてくるが、俺はこいつを知らない。聞けば、同じ学校の出身だったらしい。覚えがないな。

 それにしても、輪熊月乃……か。俺に二度も助けられたって、一体何なんだろうな。一回はさっきのことだろうが、もう一回が何なのか思い出せない。

 今朝も、自転車に衝突されておきながら平然としていたし、何者なんだろう。

 いろいろと気にはなるけれど、今日はまだ一教科テストが残っている。飯食ってそっちに備えなきゃな。


 それにしても、本当にインパクトの強いやつだ。

 輪熊月乃、その名前は憶えたからな。

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