第36話 水着、サマーデイ
鴨太くんと会ってしまい、うきうきな気持ちで帰ってきた私。
自分の部屋に戻ってライヌを確認してみると、つぐみちゃんから何か連絡が入っていた。
『今日さ、プール行かない?』
遊びの誘いだった。
でも、プールって聞いて、ちょっと嫌な気持ちになった。学校の授業のせいだ。
『今日行くのは、比較的近いところにある遊べるプール。楽しいから絶対に来て』
つぐみちゃんは楽しいと言ってくれている。その発言を見た私は、興味を覚えた。
『行く。どこに集合?』
私が反応を返すと、すぐに反応があった。早い。
『朝9時、前に集まったスーパーの前ね』
『わかった』
そんなわけで、今日の私はつぐみちゃんとプールに行くことになった。
神様に話をすると、すぐに水着を出してくれた。しかも、学校に持っていったのと違うやつ。
ちょっと待ってよ、神様。今どこから出したの。というか、いつ買ったの? どうやって買ったの?
私は混乱している。
「私は神様だ。大抵のことはなんだってできるんだよ。君は気にしないで、友人とプールを楽しんでくればいい。人付き合いは大切だからね」
「うぬぬぬ……、分かったわよう」
何か納得のいかない私だけど、神様がうるさいので一応納得することにした。
というわけで、私は朝食を食べることにする。
それが終わって出かける準備をすると、私は自転車で出かけていく。
服装は朝の時のまま。だけど、外に出るとそんな服装でも汗をかいてしまうほどに暑かった。
なるほど、夏休みになるのが納得いっちゃう。
私はスーパーマーケットに到着すると、外の自動販売機とかいうもので売られている飲み物を購入して、一気に飲み干してしまう。
「うあーっ。この暑さの中をうろつくなんて、正気じゃないわ」
出かけておきながら、私は思いっきり文句を言っている。
熊だった時は山の中の木陰の中で過ごしていたから、それほど感じなかったのよね。
うーん、この夏の暑さは死んじゃいそうだよ。
しばらく待っていると、この間のカラオケに行ったメンバーがそろっていた。
今回は、つぐみちゃんが海の日割のチケットを購入したんだとかで、みんなで遊ぼうということになったらしい。なんでそんなものを持っているのか。ここにも理由がよく分からない人がいた。
だけど、せっかく誘ってくれた以上は、私もそれに付き合う。
今回行く場所は、プールをメインとしたテーマパークっていうやつらしくって、なんでも中で一日過ごし切れるのだとか。飲食店も入っているとは、またすごい場所だなって思う。
しかも、自転車で行けるような距離にあるのだとか。どんな町なんだろう、私の住んでいる町って。
「じゃーん、ここが今回の目的地。ウォーターフィールドだよ」
やってきた場所は、なんか理解に苦しむような複雑な構造をした建物がたくさん並んでいる。つぐみちゃんに確認したら、ウォータースライダーとかいう、水の流れる滑り台なんだとか。うーん、よく分からない。
とりあえず、私たちはつぐみちゃんと一緒に施設の中へと入っていく。チケットはつぐみちゃんが持っていたので、私たちは誰一人として料金を払わなかった。
中に入ると、更衣室に移動して水着に着替えることになる。個別にロッカーと呼ばれる箱に入れるしので、荷物は安全なんだという。だけど、暗証番号式のロッカーなので、忘れたら大変なんだとか。みんなは誕生日を設定したんだって。
(私の誕生日っていつよ!)
正確な生まれた時が分からない私は、誕生日を暗証番号に設定できない。そこで悩んだ結果、私の知っているとある四ケタを設定することにした。
「うん、これで大丈夫」
無事にロッカーの設定を終えて、私はみんなと移動することになる。
だけど、その前に水着の話題になってしまう。
「月乃って学校の水着と違うのも持ってたんだ」
「うん、お兄さんが用意してくれたみたいなんだよね」
「お兄さん?」
私が答えた内容に、つぐみちゃんは疑問を感じたみたい。そういえば、私の家族のことについては話したことないもんね。
なので、お兄さんと二人暮らしだということを話しておいた。
そしたら、つぐみちゃんは私の両肩をポンと叩いてきた。
「そっか、大変なんだね。いいよ、私もいろいろと見てあげるから」
「あっ、うん。ありがとう」
涙を浮かべそうな顔をしているつぐみちゃんの姿に、私はかえって困惑してしまう。
うーん、神様との二人暮らしって、そんなに心配されることなのかなぁ……。人間のことを理解するには、まだまだ知らないといけないことが多いみたいだ。
それにしても、私の水着姿を見て、つぐみちゃんの友だちたちはなんだか驚いているようだった。
なんでそんなに驚かれちゃうのか、私にはまったくというほど理解ができない。
そりゃまぁ、縦横のラインの入った、上下ふたつに分かれている水着なんだけどね。
みんなにこんな反応をされる水着を、神様は本当にどうやって調達しているんだろうか。みんなの反応のせいで、余計にその疑問が大きくなっていってしまう。
だけど、今は余計なことは考えないで、みんなと一緒に楽しむことだけを考えよう。
気持ちを切り替えた私は、つぐみちゃんに手を引かれながら、テーマパークとやらの中へと足を踏み入れたのだった。




