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陰キャ男子とパワフル少女  作者: 未羊


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第29話 人間に慣れるんだ

 熊を殴ってしまった翌日からは、私は家から出ないようにと神様からきつく言われてしまった。

 だって、熊が出てきたの悪いんだもん。

 あれは不可抗力で私は悪くない。

 そういうこともあって、家にいてもやることがない私は、部屋の中でゴロゴロとしている。

 勉強は終わらせたもん。手伝いもするなっていわれているし、本当にやることがない。

 ついでにいえば、スマートフォンも取り上げられちゃったので、八高さんたちと会話することもできない。

 あー、ひまだーっ!

 そんなわけで、私はゴールデンウィークが終わるまで家に閉じ込められていた。


 その長い連休が終わり、ようやく学校が再開する。

 お外に出られることがこんなに嬉しいことなんてのは、初めてだようっ!


「はい、お弁当。よく我慢したね、今日は月乃の好きなものを入れておいたから、しっかり味わっておくれ」


「わーいっ!」


 はっ!

 好きなものをお弁当に入れてくれたと聞いて、私はつられて喜んでしまっていた。

 いけないいけない。神様は私のことを閉じ込めていた極悪人。こんなことでつられてはいけないのよ。

 思い直した私は、それはもう複雑な表情で神様の顔をじっと見つめている。


「ははっ、相当こたえたようだね、この二日間は。はい、スマートフォンも渡しておくよ」


 お弁当の上に添えられるように、私のスマートフォンが置かれている。

 受け取った私は、すぐさまライヌを確認する。


「人間のご友人はまめだね。結構連絡が入ってきていたから、私が君になり切って返しておいたよ。それでも頻繁に寄こしてくれていたから、君は結構好かれているようだよ。くれぐれも正体を知られないように気をつけないとね」


「むむむ……」


 神様の言い分に、私はぶすっと不機嫌な表情を浮かべている。


「人型になったせいか、本当にそういうところは人間らしくなっていていい感じだ。あとは時折無意識に出てしまう本能などをうまくコントロールできないとね。熊の体に変化してしまったら、君自身では人間の体に戻すことはできないんだからね」


「ううっ、気をつけるよ」


 しっかりと私は釘を刺されてしまっている。

 人間になってから一か月が経っているわけなんだけど、その間で二回も熊の体に一部分だけとはいえ戻ってしまっている。

 神様が言うには、変化の術は完璧らしいので、元の動物の状態に戻ることは普通はありえないらしい。でも、私は実際に二回元の姿に戻りかけた。これってどういうことなんだろうかな。

 神様であっても、こればかりは分からないのだとか。じゃあ、私はもっとわからないわけだ。だったら、深く考える必要はないかな。

 いろいろといわれたものの、私は久しぶりの学校へと向かって家を出る。

 自転車をこいで、ゆったりと進んでいく。


「ん~、家の外の空気はおいしいなぁ」


 やっぱり私は外の世界が好きなようだ。

 家の中から出ただけで、こんな風に思ってしまえるくらいなんだからね。

 だけど、浮かれてばかりはいられない。私が人にぶつかれば、きっと相手はただでは済まない。だから、よーく周りを見て、注意しながら学校へと向かっていく。

 そのかいあってか、一度も事故を起こすことなく無事に到着できた。ふう、よかった。

 ところが、学校に着くと私は思わずどきりとしてしまう。


(わわっ、鴨太くんだ!)


 そう、目の前に鴨太くんを見つけてしまった。

 神様は熊が出た時のことは全部消したとは言っているけれど、鴨太君だけはどうも油断ができないのよね。熊としての勘が言っているのよ。

 なーんて遠くから見ていると、突然鴨太くんがこっちへと振り向いてくる。えぇっ、なんでこっちに気が付いたのよ。

 びっくりする私だったけれど、私に気が付いた鴨太くんは、どういうわけか驚いた顔をしてさっさと歩いて去って行ってしまった。一体どうしたんだろう。

 熊の本能からすると追いかけていきたいところなんだけど、この時の私は驚きの方が勝ってしまい、その場から動くことができなかった。自転車を持ったままということもあるけれど、本当にまったく動けなかった。どうしてだろう。

 とりあえずよく分からないけれど、私は落ち着いていつも通りに過ごすことにする。

 あの様子じゃ、追いかけていっても多分無駄。クラスだって違うから迷惑にしかならないと思うもの。うん、気にしないでおこう。

 私は自分の気持ちよりも、鴨太くんのことを考えて我慢をすることにした。

 そう、私だって人間として成長しているのよ、えっへん!

 ひとまず自分のことに徹することにした私は、自転車をきちんと置き場に止めて、自分のクラスへと向かっていく。

 今日からはまた学校だもの。人間のことを学ぶためにも、気持ちをしっかりと切り替えておかなくちゃ。

 カバンとお弁当をしっかりと手に持って、私は気合いが入っていた。


 人間になってから二か月目に入った私の高校生活は、友だちができて少し充実してきている。

 鴨太くんへのアタックはちょっと控えめになってしまったけれど、諦めているわけじゃない。

 ちょっと人間になれることを優先しているだけ。

 最終目標は変わらないもんね。

 がんばれ、私!

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