↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰キャ男子とパワフル少女  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/37

第25話 カラオケボックスの怪

 ゴールデンウィークに入った。

 俺は高校生になったことをいいことに、アルバイトを始めてみた。

 それは、家から少しだけ遠くのカラオケボックスだ。とはいえ、中学校のからもそんなに遠くないから、下手をすると同級生たちに会いかねない。

 だけど、俺は変わるんだということで、あえて地元のカラオケボックスのバイトを始めた。

 高校デビューを失敗したのなら、せめてながら一般人らしくしておきたいからな。

 カラオケボックスとはいっても、人と会うことは受付にでもいないことにはそうそうない。せいぜい注文を受けた料理を持って行ったり、ドリンクバーのメンテナンスの時くらいだ。

 今日は日曜日ということで、朝から夕方までバイトに入っている。


「よう、新入り。もうそろそろ二週間経つけど、慣れたかな?」


「はい。先輩たちが優しく丁寧に教えてくれるので、なんとか」


 急に声をかけられたけど、俺はなんとか受け答えをする。内心バクバクしてるのは内緒だ。

 だけど、答えたとおり、先輩たちは俺にも分け隔てなく接してくれる。おかげで、陰キャな俺でもなんとかやってられるというわけだ。

 今日の俺の持ち場は店内調理。注文を受けて手順に沿って調理して、部屋まで持っていくというもの。

 カラオケボックスの中には部屋が20くらいあるんだが、働いているのは俺を入れて八人か。そこそこ食事には力を入れているし、今日はゴールデンウィークでお昼を挟むからな。

 いろいろと思いながら、俺は今日のバイトに勤しんでいる。


 今日は開店準備もあるので朝8時からバイトに出てきている。勤務は夕方の4時までの八時間だ。ただし、休憩が一時間あるので、実質七時間労働。

 そうして、お昼も近くなってきた11時すぎのことだった。

 入口の扉が開いて、人の声が聞こえてくる。だが、その声を聞いた時、俺は思わず「げっ」と声が出てしまった。


「どうしたんだ、浅葱」


「あ、いえ。なんでもないです。多分、空耳ですね」


 俺の反応を見ていた先輩が声をかけてくる。俺は気のせいだとしてごまかしておく。だけど、先輩はおかしなやつだなというような顔をしている。


(あの声は、間違いない。高校入学の初日に、俺に付き合ってくれとかいってきた変な女の声だ)


 そう、輪熊月乃とかいう頭にお団子をふたつつけた女だ。

 そっか、そういえばあいつもこっちの方に住んでたんだったな。だからとはいっても、なんでカラオケに来ているんだ。興味なさそうな感じだったのに。

 俺はものすごくドキドキとしている。


「おい、しっかりしてくれよ。……って、もしかして彼女でも来たのか?」


「そんなわけあるはずないじゃないですか。俺にいるように見えますか?」


「うん、見えないな」


 からかってくる先輩は、いないだろとはっきりといってきた。うるさい、その通りだよ。

 口に出てしまいそうになるが、俺はなんとかこらえている。

 今日の俺はバックヤードの仕事だ。多分顔を合わせることはない。うん、ないはずだ。

 俺は何度も自分に言い聞かせるようにして、とにかく仕事に集中をする。

 あいつに顔を合わせたら気まずいのは間違いない。どうにかして、あいつが帰るまでやり過ごすんだ。

 気を紛らわそうと、俺は先輩に仕事がないかを聞いてみる。


「おっ、やる気があるようだな。それじゃ、新しい仕事でも教えようか。俺も二週間過ぎたあたりから教えてもらったからな」


「はい、よろしくお願いします」


 俺はメモ帳を持って、先輩の後について行く。

 よし、これで余計なことを考えないで済む。俺は少し安心した気持ちで、新しい業務を教えてもらうことにした。


 そう思っていたのも束の間。すぐに昼のピークがやって来る。

 歌っているついでにお昼を食べる客が増えたのだ。

 オペレーションはマニュアル化されているし、実際に火を使って調理するものは少ない。ほとんどは温めて提供するというものが多い。

 だが、そんな簡単な調理マニュアルがあっても、ピークタイムの対応には対応しきれない。

 たった20室とはいえども、そこにいる人数は最大で8人くらいいたりする。そんな人数から注文が入れば、そりゃ目も回るような忙しさになるってもんだ。


「おい、浅葱」


「はい、先輩」


「これをルーム18に持っていってくれ。落とさないように台車を使っていいぞ」


「分かりました。すぐに向かいます」


 俺は料理を受け取る。

 それにしても、一部屋の注文にしてはかなり多い。これは、昼飯の量だ。

 まったく、どんだけ頼んでいるんだと呆れてしまう。そう思いながらも、俺は台車に料理を並べると、ほこりが入らないようにカバーをかけて調理場から出ていく。


(えっと、ルーム18は奥の方だったな)


 通路を歩く客に注意しながら、俺は台車を押して目的の部屋へと向かっていく。

 さすがにカラオケボックスとあって、どの部屋からも歌う声がだだ漏れだ。うまい連中ならいいんだが、音痴のやつの歌声は聞くに堪えられない。なので、思わず耳をふさぎたいところだが、両手で台車を押しているのでそれは無理な相談だった。


「えっと、ルーム18。ここだな」


 騒音地獄を抜けて、俺はようやく目的の部屋にたどり着く。

 俺はドアをノックして、中へと呼び掛ける。


「お楽しみのところ申し訳ありません。ご注文いただいた料理をお持ちしました」


 俺が呼び掛けると、中からなんだか慌ただしい音が聞こえてきた。


「わっ、鴨太くんだ」


「げっ!」


 ドアを開けて出てきたのは、なんとあの輪熊月乃だった。

 なんでいるんだよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。