第24話 八高さんの友人たちと
フリフリの上半身に、ショートパンツ、今日は白の膝上靴下。
いつもとは違ってちょっと気合いの入った服装に身を包んでいる。
とはいっても、今日会う相手は鴨太くんじゃないんだけどね。
八高さんの中学生時代の同級生と会うということで、私は少し、いつもと違った格好をしている。頭のお団子には赤いリボンを着けているよ。
「神様、行ってきますね」
「ああ、気を付けていってらっしゃい。くれぐれも熊の能力には気を付けるんだよ」
「はーい」
見送りをしてくれる神様からは、しっかりと釘を刺されてしまった。
なにせ、昨日も二階の床を踏み抜いてしまったもの。神様がすぐに不思議な力で直してくれたけれど、本当に私は気を付けないといけない。
すでに外でも何度かやらかしているもんなぁ。私に対して、信用がないのは仕方のないことだよ。
とにかく気をつけよう。
そう思った私は、自転車に乗って集合場所となっているスーパーマーケットへと向かっていった。
到着すると、八高さんが既に待っていた。私の方が遅くなるとは思ってもみなかった。
周りにはえっと……八人? そのくらいの人がいる。よく見ると男の人もいる。友だちの幅が広い。
「おはよう、八高さん」
「やっと来たわね、輪熊さん」
「やっとって、まだ時間の20分も前なんだけど?」
私はスマートフォンを取り出して時間を確認する。うん、9時40分。20分前で間違いない。
それでもやっとなんて発言するってことは、一体八高さんたちはいつからここにいたのかな。なんか気になる。
「ごめんごめん。いやぁ、今日の集まりの言い出しっぺだから、早めに来ておいた方がいいと思ってね。来たのは9時20分ごろだったわよ」
「早すぎだろ、八高」
「そんなに楽しみにしてるなんて、ウケる」
「つぐみは気合いが入ると、いつもこんな感じなのよ」
八高さんが謝りながら言い訳をしているけれど、どうやら毎回のことらしい。
この間は私よりも遅かったけれど、あれは準備に手間取りすぎたからなのかな。うーん、よく分からないや。
とりあえず、今日は一体何をするのかな。
いろいろと気になるところはあるけれど、今の私にはそっちの方が大事。だから、私は八高さんに声をかけることにする。
「ねえねえ、今日はどこに連れていってくれるの?」
「そうね。最初は私たちの中学校に行こうかしらね。輪熊さんは知っておいた方がいいと思うし」
「あ、うん。そっかぁ」
八高さんからはこういう風に返ってきた。
それもそうか。八高さんと鴨太くんは同じ中学校だったっていうもんね。つまり、八高さんと一緒に中学校に行くということは、鴨太くんも通った中学校を見るということ。ならば、行かないという選択肢はない。
「それじゃ、向かいながら自己紹介をし合いましょう」
そんなわけで、私たちはまずは八高さんたちの出身中学校に向かうことになった。
鴨太くんと八高さんはなんとか顔と名前を覚えたけれど、他の人たちはまったくといっていいほど興味がなくて、自己紹介をしてくれても、私はさらりと聞き流していた。
特に、男の人からは危険な感じを受けた。私の熊としての勘が告げている。彼は危険だと。
多分、熊だったら襲ってえぐっていたかもしれない。うん、酷い光景になるので、想像くらいにしておこう。
ちなみにだけど、中学校に向かう間は、自転車は降りて押していた。しゃべりながらの移動ということで、乗っていたら危険だからってことらしい。
ああ、確かにそうだと思う。私の熊パワーで激突したら、相手が大変なことになっちゃうからね。
うーん、早くコントロールできるようにならなくちゃ。
自己紹介などで話をしていた私たちは、スーパーマーケットから15分くらい歩いて、ようやく中学校に到着する。
「ここが、私たちの母校である中学校よ。今日は日曜日だから、部活をしている生徒たちくらいしかいないわね。あと先生たちが少々かな」
八高さんが代表して中学校のことを説明してくれる。
私も人間として生まれていたら、こういうところに通っていたのかな。
熊として生まれて、好きになった男の子と同い年の姿になってしまった私には、どうにもわからない話だわ。
八高さん以外の人たちは、どうも中学校というところにいた頃の話で盛り上がっている模様。
神様からもらった知識だと、現在、高校一年生の人たちは、春先まで中学生だったらしい。なら、たったこのわずかな間に、懐かしいという気持ちになるということなのかな。この間のことなのに、どうしてそうなるんだろう。うーん、人間ってよく分からない。
「そろそろ次に移動しましょうか」
「だねぇ」
「私、カラオケがいいわ」
「さんせーい」
なんだか、カラオケというものをすることに決まったらしい。
なんだろう。どんなものか分からないんだけど、八高さんたちが楽しそうだから、それでいっかな。
人間たちのことをほとんど知らない私は、言われるがままに八高さんたちと一緒に、そのカラオケをするための場所へと移動していく。
ところが、そこで思いもよらないことが起きようとは、さすがの私でもまったく想像していなかった。




