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陰キャ男子とパワフル少女  作者: 未羊


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第23話 お友だちを増やしたい

 人間生活を始めてそろそろ一か月。私もだいぶ人間に慣れてきた。

 あの時みたいに熊に戻っちゃうような現象はとりあえず起きていない。今の私はちゃんと人間をやれている。

 今はなんか、ゴールデンウィークっていう長期休みの真っただ中らしくて、学校はぽつぽつとお休みになっている。

 暇すぎて退屈なので、神様に渡されたスマートフォンをポチポチといじっている。とはいっても、最低限の機能だけ。今の私には使う用途が時間の確認くらいしかない。


 プルルルル……。


 わわっ! 持っているスマートフォンから急に音楽が鳴り始めた。な、なんなのこれ。

 思わず投げてしまったけれど、私はおそるおそるスマートフォンへと手を伸ばす。


「あっ……」


 画面には八高さんの名前が表示されている。

 そういえば、いろいろとせがまれて、スマートフォンの電話番号っていうのを教えたんだっけ。

 ライヌとかいう、よく分かんないけど、連絡を取り合う手段とか入ってないし。だから、電話番号を教えた。


(えっと、緑色の丸いのを押すんだっけか)


 私は緑色のボタンを押す。


「……八高さん?」


『あっ、やっと出たわね。こんにちは、今って暇?』


 おおっ! スマートフォンから八高さんの声が聞こえてくる。これが人間の文明の利器!

 あっといけない。驚いている場合じゃないかった。


「えっと、暇だよ。宿題とかいうのは済ませているから大丈夫」


『おっ、やるわね』


 宿題を終わらせて暇だっていうと、八高さんはなんかすごく私を褒めてきた。なんかわかんないけど嬉しいな。

 で、八高さんからの提案は、連休中に自分の中学時代の友人たちを遊ぼうという話だった。

 うーん、八高さんのお友だちかぁ。人間として生きていくのなら、人間のお友だちを増やしていくのがいいわよね。

 そう思った私は、八高さんお誘いを受けることにした。


『そっか、それじゃ……って、輪熊さんはライヌ入れてないんだっけか。まぁいいわ、あとでまた連絡するわ』


 私はちょっと拍子抜けをした。今決めるんじゃないんだって。

 とりあえず、私は八高さんとの通話を終えたのだった。


 そして、その後のお昼。


「友だちとの連絡手段を増やしたいって?」


 神様に相談すると、なぜか嫌そうな顔をしている。なんでそんな顔をするのよ。


「んー……。人間になりたいという願いを叶えるために人間の姿にはしたが、まさか本命の人間以外にも興味を示すとはね。まあ、仕方ないか。スマートフォンを貸してごらんなさい」


「あっ、スマートフォンは部屋だ」


 神様がスマートフォンをいじって設定してくれるらしいのだけど、私はスマートフォンを部屋に置いてきてしまっていた。

 というわけで、昼食が終わってから、神様が設定してくれることになった。


 お昼ご飯を食べ終わると、私は部屋に戻ってスマートフォンを持ってくる。神様に渡すと、すぐさまいろいろといじり始めた。


「ライヌでいいんだよね?」


「うん。八高さんはそれで連絡を取り合っているんだって」


「ふむ……」


 神様は再び操作を始める。

 しばらくすると、神様の動きが止まる。


「ほら、設定を終えたよ。月乃はいろいろと興味があるとは思うけれど、今の君には勝手な操作をさせるわけにはいかない。もっと人間の生活に慣れてもらってからじゃないとね」


「うん、分かってる。余計なことはしないよ、神様」


 私はスマートフォンを返してもらうと、神様に強く誓う。

 だって、自分でも思うもの。興味のあることにつられたら、絶対際限なくなってしまうから。どっかで歯止めをかけておかないとね。

 改めて神様にお礼を言うと、私は自分の部屋に戻っていった。


 夕方になると、再び八高さんから電話がかかってきた。

 それによれば、私の今住んでいる町でいろいろ遊ぼうということだった。大きなお店となると、隣町に行かなくちゃいけないらしいけど、こっちの町でも十分遊ぶことは可能なんだって。

 そういえば、私はこっちの町のことはあまりよく知らない。なので、内容も含めて、私は了承をすることにした。

 明日の朝十時に集合したいらしいけれど、私はこの町の地理にまったく詳しくない。一応知っているのは、神様と時々一緒に行くスーパーマーケットくらい。なので、私はそれを伝える。


『そっか。輪熊さん、こっちのこと本当に何も知らないのね。いいわ、明日いろいろ教えてあげるから』


「うん、お願い」


 こういったやり取りをして、夕方の電話を終える。

 私は床の上にごろんと転がる。慣れないことをして、ちょっと疲れちゃったかも。

 明日は、八高さんとそのお友だちとのお出かけだ。

 これを無事にこなせば、私はまた、人間に一歩近づける。

 もちろん、最終的な目標は、鴨太くんと結婚をすること。それが叶えられれば、私は本当に人間になれるんだもの。

 人間と熊の恋物語とか、変な話と思う人も多いでしょう。だけど、私はあの時に一目惚れをして、本気でそう願った。

 そのための一歩。明日はきちんとやり遂げなければならない。


「よーし、明日はこの間買った服でも着ていこう」


 楽しみになってきた私は、飛び上がるようにして起き上がる。

 次の瞬間だった。


 ベキッ!


 久しぶりに床を力強く踏み抜いてしまった。

 いけないなぁ。ちょっと気が緩むと熊パワーが出てしまう。

 こればかりは、本当に気をつけないとね。

 ちょぴり、不安になってしまう私なのだった。

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