第20話 お友だちとお出かけ
「友だちと出かけたい?」
八高さんと寄り道をした私は、家に帰ると神様に話を持ち掛けていた。
神様はものすごく驚いた顔をしているものの、ちょっと考え込んでいるようだった。
「まあ、いいだろうかな。君が人間になじむための第一歩だ。少しだけ多めにお小遣いもあげようとは思うが、くれぐれも無駄遣いをしないでくれよ」
「ありがとう、神様」
私はお礼を言うと、自分の部屋へと戻っていく。
今度の日曜日、八高さんとのお出かけだわ。どんな服装にしていこうかな。
だけど、私にはファッションセンスがない。というか、人間の服装になんてあんまり興味がない。
「ん~、ありあわせの服でどうにかしておくかな。八高さんに聞いてみようっと」
そんなわけで、私は日曜日に服装のチェックをしてもらうことにした。
そして、迎えた日曜日。
私は、この間に寄って帰ったショッピングモールとかいうところで、八高さんと会うことになった。
約束はお店の開く十時。
まだ余裕があるなということで、私はゆっくりと起きて朝食を食べている。
しっかりと食べて歯を磨くと、私は服を着替えて出かける準備をする。
今日の服装は、ちょっと暖かいこともあってか少し薄着だ。四月も半分が過ぎれば結構暖かい。
私が着る服は、どれもこれも神様のセンスで選んでくれたものばかり。自分で買ったことは一度もない。とはいっても、人間になってひと月も経っていないから、そりゃ当然よねというわけね。
「それじゃ、行ってきます。多分、帰るのは夕方になると思う」
「そうかい。それじゃ、気を付けていってらっしゃい」
神様に見送られながら、私は自転車に乗ってショッピングモールへと出かけていった。
初めて着る服だからか、ちょっと落ち着かないかな。
私が友だちと出かけるからといって、神様がわざわざ新しくそろえてくれた服なのよね、これ。
頭のお団子を作っている結び目にも、月の色を示す黄色のリボンを使っている。普段はヘアゴムなんだけどね。おしゃれだからってことで、神様がわざわざ結んでくれた。
というわけで、普段よりも気合いの入った服装となっている。
ショッピングモールに着いた時、私は神様に渡されたスマートフォンというものを確認する。時間はまだ九時半くらい。少し早く着きすぎてしまったみたい。
八高さんはお店が開くのは十時からみたいなことを言っていたけれど、よく見ると人間たちが出入りをしている。もう開いているのかな。
気にはなるけれど、八高さんとの約束だから、来るまで待機し続けよう。
熊の本能よりも人間の理性。耐えて、私。
そうして、十時の五分前になると、八高さんがやって来る。
「お待たせ、輪熊さん。思ったよりも早く着いていたのね」
八高さんは慌ててやって来たのか、少し息切れをしているように見える。
「うん、楽しみで早く来ちゃった。お店が開いてるから、つい中に入りたくなっちゃったよ」
「ああ、スーパーの部分が九時開店だものね」
「あっ、そうなんだ」
なんと、早くから開いているお店があったらしい。
でも、八高さんが目的としているお店は、十時開店で間違いないとのこと。一体、どこに連れていってくれるんだろう。
「今日は映画館のチケットが手に入ったから、輪熊さんを誘ったのよね。自分の分を入れて二枚だから、誰を誘うか迷っちゃったわ」
「わわっ、そうなんだ。いいのかな、私で」
「いいのいいの。新しく友だちになったんだから、お近づきの印よ。さっ、中に入りましょう。十時半から上映だからね」
「うん」
映画ってなんだろう。よく分からないけれど、八高さんが楽しそうにしているので、気分を損ねちゃいけないと、私は聞かないことにした。
だって、一緒に私も行くんだから、そこで知ることになるもん。わざわざ分かることを聞く必要はないわよね。
そして、二時間半後。
「ううっ、とても感動的でした!」
私はボロボロと涙を流していた。
なんというか、初めての体験だったので、そのすべてに感動してしまった。
「いや、そこまでなくとは思ってもみなかったわね。輪熊さんって、すごく素直な感じなのね」
「そ、そうかな。ずびび……」
隣で平然としている八高さんの横で、私は涙と鼻水を流している。
八高さんが困った顔をしているから、私ってば、今はものすごく迷惑をかけていると思われる。
「とりあえず、あそこの椅子に座って休みましょう。落ち着いたらお昼を食べましょ」
「う、うん」
私はお世話になりっぱなしだった。
近くにあった椅子に座ると、八高さんはカバンから白い紙切れを出してきて私に渡してきた。
「はい、ティッシュよ。これでひとまず鼻をこうやっておいて」
「ありがとう」
私は言われた通りに、渡されたティッシュで鼻をきれいにする。
一枚では足りなかったようで、私はもう一枚ティッシュを渡されてしまった。
結局、私が落ち着くまで八高さんを付き合わせてしまった。
はぁ、人間の体って色々大変なのね。
どうにかこうにか私は落ち着くことができたので、ようやくお昼を食べるために移動を始めることにしたのだった。




