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陰キャ男子とパワフル少女  作者: 未羊


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第19話 気を引くためなら見た目から

 うふふふ。

 昨日は鴨太くんと話をしちゃったし、帰り道を一緒に帰ったわ。どうしよう、嬉しくて顔のにやけが止まらないわ。


「輪熊さん、気持ち悪い」


「えっ?」


 教室の中でにやけていると、八高さんに思ってもみなかった言葉をかけられてしまった。ものすごく辛らつだなぁ。

 だけど、私の正体を思えば、それはそれで間違ってもいないかもしれないな。私は特に言い返すことはしなかった。


「それにしても、何かいいことがあったの?」


「うん、鴨太くんとまた話をしたんだ。しかも帰り道に」


「ええっ?!」


 私が昨日のことを話すと、八高さんはものすごく驚いた顔をしている。あれっ、私ってばなんか変なこと言ったかな?


「ああ、そっか。あの鴨太なら、そうよね」


「えっと……?」


 八高さんの様子がよく分からないので、私は首をこてんと傾けてしまう。


「うん、同じ中学校の浅葱鴨太ね。おとといの学食で見た時、雰囲気が違ってたから分からなかったわ。まあ、鴨太なんて名前、そうそういないからなぁ……」


 なんだろう、すごく難しい顔をしている。

 ど、どうしたんだろう。どこか調子が悪いのかな。

 そう感じてしまった私は、ものすごく慌ててしまう。


「ああ、気にしないで。中学校の時のあいつを思い出しただけだから」


 八高さんは額に右手を当てながら、私に向かって左手を突き出してくる。これって待てってことだっけか。そう思ったので、私は黙って待つことにした。


「てかさ、輪熊さんは、あいつのどこがそんなにいいわけなのよ。この辺りに住んでいなかったのは間違いないんだから、とてもじゃないけれど知っているとは思えない。どこで知り合ったのかも聞きたいわね」


 ようやく八高さんが私の方へと顔を向けてきた。

 うーん、そんなに疑問に思われちゃうのかぁ。

 だったら、話せる範囲で話すしかないわよね。友だちなんだもの。


「えっとね。昔のことなんだけど、私は鴨太くんに助けてもらったことがあるの。あの時のお礼がしたくて、調べてここまでやって来たんだ」


「あー、なるほどね。恩人っていうわけか……」


 ちょっとだけうそを紛れ込ましたけれど、八高さんはものすごく納得してくれたようだった。

 助けてもらったのは事実だからね。

 私、あの時のことはよく覚えているからね。


「まあ、なんとなく分かる。あいつは人付き合いは悪いけれど、困っているやつを見かけると、つい助けたくなるらしくってね。あいつの数少ない友人からは、よく聞かされたものよ」


「そうなんだ」


 突然、八高さんが鴨太くんのことを話し始めてくれた。

 私の知らない鴨太くんを、八高さんは知っているんだ。なんだかうらやましいな。


「な、なによ……」


 私がじっと見つめてしまったものだから、八高さんがなんだか迷惑そうな顔をしている。


「ご、ごめん。鴨太くんの昔の話がいろいろと出てくるものだから、つい聞き入っちゃった」


「まったく、あいつの話がそんなにいいとはね。本当に好きなのね、輪熊さんは」


「うん、大好き。鴨太くんは私のことが分からないみたいだけど、私は、私のこの気持ちは変わらないから」


 眉間にしわを寄せながら私に話しかけてくる八高さん。だけど、私はそこにどんな感情があるのか分からず、自分の思うことをそのまま口に出してしまう。

 八高さんは驚いたかと思うと、なんだか楽しそうに微笑んでいる。


「いいねぇ、そういう真っ直ぐな気持ち。伝わるといいね、輪熊さんの本音が」


「うん」


 八高さんにそう言われると、私はますます嬉しくなる。

 よーし、絶対に鴨太くんと両想いになって、私は本当の人間になるんだから!


「それじゃあさ、今日の放課後、私に付き合ってくれないかしらね」


「えっ?」


 私が意気込んでいると、再び八高さんに声をかけられる。

 どうやら、前と同じように私をどこかに連れていってくれるらしい。

 うーん、神様からはあんまり遅くならないようにといわれているんだけどな。でも、せっかくできた友だちだもん、ここは付き合うしかないでしょ。

 私は快く、八高さんの誘いに乗った。


 放課後、近くのショッピングモールに連れていってもらった。神様といったスーパーマーケットよりもものすごく大きい!


「輪熊さんが普段どういう服を着ているか分からないけれど、こういうところで実際に見てみるのもいいと思うのよね。可愛いから、結構なんでも似合うと思うの」


「ホント? 私って可愛いの?」


「え、ええ。可愛いわよ」


 可愛いと言われて、私は思いっきり八高さんに迫ってしまう。そしたら、ものすごく怖がられてしまった。いけないいけない。熊の迫力が出ちゃったかな。

 とりあえず、気を取り直して、私はいろいろと八高さんと見て回る。

 ものすごくいろんなものが置いてあって、なんだか目が回っちゃう。

 八高さんに連れてきてもらったのは、服や装飾品の売り場だった。

 人間っていろんなものを着るんだなぁ。

 熊の時は全身毛皮だし、今も神様が用意してくれた服しか着ないから、服がどういうものなのかがよく分からないのよね。

 いろいろと服とか髪飾りとか見て回ったんだけど、今の私はお金を持っていない。結局何も買えなかったよ。


「うう……、いずれ自分で買えるようにする」


「そ、そうね。でも、ファッションというものは、なんとなく分かってもらえたかな」


「うん。少しわかった」


「そっか。服の組み合わせによっては、輪熊さんの可愛さがさらに上がるから、一度本気で考えてみるといいわよ」


「そうさせてもらう」


 私は八高さんに言われたことをしっかりと頭に入れ、今日のところは見て回るだけで帰ることになった。

 鴨太くんって、どういう服が好みなんだろうなぁ。

 私はちょっと気になってしまった。

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