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第1章[裏]・少しだけ



光夜が現実逃避をしている間も絶え間なく続く目の前の刹那達による攻防戦

舞台の真ん中で行われているこの戦いはこの第3アリーナにいる他の生徒達の目を引き付け熱中させる

ついでに言っておくと相手チームの本来ならば後衛の役割を持ち他の前衛3人を遠距離武器やら魔法やらで援護していたであろう2人の生徒は開幕早々に刹那の初見殺しの攻撃によって瞬時にこの舞台から退場させられていたりする

そんな鬼畜な初見殺しの攻撃だが仕組みは簡単であり刹那の得物である大鎌に魔精力を纏わせて軽く振ることでそれを飛ぶ斬撃として放つもので、見えない斬撃をただ何となく鎌を振ってみた際に生じさせるため油断しているとそのまま直撃というわけだ

もちろん格上には多分通じないだろうし魔精力もそれなりに消費するために刹那では日に数度しか使えないという欠点もある

だが今回に限っていえば最良の選択だっただろう

そんな刹那の速攻であるが攻撃のときに昨日から今もずっと怒りに呑まれている刹那は相手に重症を追わせかねない過剰攻撃を行ってしまう

そして唖然とする2人の生徒に直撃するといったすんでのところで、過剰攻撃であることを誰よりも早く気づいた光夜が咄嗟に相手生徒に防御魔法を施したことにより意識を刈り取る程度の威力で済んだ

もちろんその魔法の発動は一瞬にてかなり正確かつ隠密性のあった魔法であったために今この場にいる者は誰一人として察知出来てはいない

この時もし光夜が咄嗟に刹那の攻撃が強すぎることを察知し相手の生徒に防御魔法を施さなかったならば確実に刹那はルール違反となりそこで失格となっていたこと間違いなしだろう

刹那が失格にならなかったことにも、そして周りの生徒達にショッキングな映像を見せずに済んだことに対しても光夜は内心安堵しそのまま舞台の端へと移動したわけだ

光夜にしては気が利いたことをしたといえる

まぁ悲しいことにその光夜は現在ブーイングを一身に浴びている最中なのだけども


ともあれ光夜のおかげで失格となることなく試合を行い続けている刹那だが現状はあまり芳しくない

刹那が相対している男子生徒3人はいずれも前衛役

1人は大剣を持ってメイン火力となる攻撃重視役をうけもっており、その他の2人は片手に大盾もう片手に小剣といったふうな装備で主に相手からの攻撃を受けるタンクの役割を果たしている

つまるところ相手の3人は同数くらいの相手ならば耐えきることが出来るような編成をしており突破は容易ではないということだ

例え超攻撃型の戦闘スタイルである刹那であったとしても1人ではキツいと思われ、もし容易く突破するならば後衛による魔法支援は必要不可欠になってくると思われる

そもそも相手はAクラスであり個人の技量も他のクラスの生徒と比べても比較的高いゆえに刹那の攻撃も上手く連携して捌き対処することが出来ている


つまりこの戦いは持久戦であり刹那のスタミナが切れるか相手のスタミナが切れるかするまでは続くわけだ

そしてそうなるならば前者の方が確率が高い

それが分かっているかなのか刹那の表情は暗い


(くっ…!このままだとジリ貧で負ける。そんなのは絶対に嫌よ、私は勝たないといけない!それに……)

戦いながらそう考えている刹那は舞台の端で存在感を極力消して傍観している光夜へと目を向ける


(確かにひとりでやるって言ったけどここまできつい状況になるなら光夜にも手助けしてもらえばよかった。正直相手のことを完全に嘗めてたし頭に血が昇ったことでまともな判断が出来なかったわ。光夜にはチームを組んでもらったことやここまで練習に付き合って貰った恩もある、それに1度言った言葉を反故にするのはしたくない。けどこの状況をどうやって脱せれば……!!)

そう内心では光夜に手助けを頼むかどうか揺れている刹那だが少しばかり高いプライドが「手助けして」という一言を彼女の口から発するのを妨げる

だが現状そんなことは悩んでいる暇無い

こんなことを考えている間にも攻防は次々と繰り広げられており刹那が必死に攻撃を仕掛けていても相手の生徒達は大剣を持つリーダーらしき生徒の指示をもとに連携して受け流していく

それぞれの持つ武器や盾がぶつかる度に模擬戦用のものではないと思えるほどの音や火花が散り、そのためいくらお互いに魔精力を纏わせて戦っているとはいえ消耗していかないわけではない

刹那の持つ大鎌は所々かけ更には片方の大鎌の柄の部分にはヒビが入っている

相手の生徒達の持つもので言えばリーダー格の生徒の持つ大剣は刃こぼれのあるものの未だに無事、残りの2人に関しては盾は刹那攻撃を受け止め続けているがためにもうボロボロではあるが小剣の方はほぼ無傷

このまま盾を破壊するまで攻撃し続ければ刹那の大鎌も同じく壊れるだろう

つまるところ詰みゲーである



そしてついに均衡が崩れた

バキンッ!

ボキッ!

そう鳴り響く今までとは異なる音

そしてその音の発生源である舞台の中心には見るからも無残に破壊された盾らしきものと柄と刃が完全に分離してしまっている大鎌があった

そう

ついに刹那もつ武器に限界がきたのだ

予想していたとはいえもう勝つ見込みがほとんど無くなってしまった現状に対し刹那はほんの少しの間戸惑ってしまう

そしてそんな刹那の隙を見逃すとほど相手は弱くない


「もうお前に勝つ方法は無くなった。大人しく場外に飛ばされろ」

そんな言葉と同時に大剣の腹でぶん殴られる刹那

いつもなら避けていたであろう大振りの一撃を今の刹那では避けることさえ出来ず何とか大鎌にて直撃だけは防ぐものの

バキッ!

という音を立てて大鎌は壊され、勢いがほとんど残ったままの大剣による一撃を身体に直接受けた刹那はそのままその場より吹き飛ばされる


(……もう終わりね)

吹き飛ばされながらもうほぼ諦めかけている刹那

己の武器は全て壊れ

なけなしの魔精力は底を尽き

更に渾身の一撃によりダメージもかなり受けた

もうここから反撃する手段は残されていない


(結局…私はあの人にはいつになっても勝てない……のね。あの人に勝つために、認めてもらうためにここまでやってきたのに…!)

そう考えるともうすぐ敗北してしまうという悔しさからか両目から涙が流れる

戦う前までは勝てると思っていた

自分よりも訓練している人なんて同世代にはいないとたかを括っていた

魔精力というハンデがあっても自分ならかならず出来ると思っていた

そして目標であるあの人に認めて欲しかった

だが現実は厳しく今まさに敗北という二文字が目の前に来ている


そしてもう終わりか…と思い刹那は目を瞑りその少しあとにその身体には軽く衝撃がはしる

これで場外負け

そんなことを考えた刹那だが場外に背がついたのでなく誰かの腕の中で支えられている感覚に包まれていることに困惑し、更にその耳に予想もしていなかった声が聞こえてきたことに対して思考が止まってしまう


「とりあえず助けてみたけどどうする?このまま場外にいく?それとも降参する?」

そんな覇気もなく何時のように気だるげな声

まるでやる気が感じられない

それに加えこんな緊迫した状態なのにも関わらずに言ってることもたいがい巫山戯ている

そういつもの刹那ならばこの言葉に対して冷たい視線を向けて厳しく説教しただろう

だけれども今この時刹那の口から発せられた言葉は違った


「お願い……私を勝たせて!」

そんなさっきまでは考えもしてなかった言葉

勝ちを諦めていたはずなのに咄嗟に出た言葉

しかも少しばかりのプライドのせいで言えなかった言葉

そんなシンプルでありかつ刹那の口からは今まで発せられることのなかったこの光夜への助けを求める言葉何故かこの時はすんなりと自然に発せられた


そんな刹那言葉を受け少し考え込む光夜

目の前には涙を流しながらこちらに真剣な眼差しを向けている美少女(刹那)

そしてその相手から涙目and上目遣いで光夜自身予想もしていなかったような言葉を告げられる

そんな状況のなかこの時光夜は思った


(なにこのシュチュエーション……なんか萌えるやん、まぁうちの雛に頼み事された時の方が萌えるけど。それに流石にこの状況で何もしなかった死ねるな、てかこれから学校来れなくなる。……仕方ないなぁ、軽ーくやるか)

とそんないつも通り阿呆で呑気な事を考えた光夜は刹那から離れつつ告げる


「りょーかい」

と言ったあと


「少しばかり俺の力を貸してやんよ」

と言い刹那を舞台の端へ残すと両手に何も持たないまま対戦相手てである3人の生徒が待つ舞台の中央へと歩み寄る


そんな光夜を見て全く油断することなく己の持つ武器を構え戦闘体勢をとる3人

だが……そんなもの意味は無い


「悪いな、うちの傍若無人で負けず嫌いなお姫様からの頼みなんだ。すぐに終わらさせてもらうよ」

そう光夜が言うと舞台、そしてアリーナ全てを包み込む光が発生する

あまりの眩しさに誰もが反射的に目を瞑り手を目の前に翳してしまう

そしてその光が消えた…と同時に3人の生徒は全員が自分が何をされたのかも分からないまま場外で尻餅をつくことになっていた

周りの生徒達も何が起きたのか分からない

ほんとうに気づけば3人が場外にいたとしか思えない

全くもって理解が出来ない

パッと眩い光が発生したことしか理解できない

それは審判役の教師も同じようで舞台の上の光夜と場外にいる3人を何度も何度も交互に見ることしか出来てやっとのことで落ち着いてから宣言する


「し、試合終了!!!勝者、チーム<下克上>!」

その宣言と同時にとりあえず何があったのかは分からないが盛り上がりを見せるアリーナの内部

決着については何がどうなったか全く分からないが勝者が審判役の教師によって宣言されたこと、更にさっきまで負けかけていたチームが逆転したということ、そしてそのチームがFクラスであることなど様々な要因からも今までにないほど盛り上がりを見せる

中にはFクラスのコールをするものまでいる


そんな光夜以外誰も理解出来なかった決着が付けられたこの試合の収拾は審判役の教師が他の教師に次の試合を要請されるまでつくことはなかったのであった






→ to be continued

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