第1章[裏]・私と契約して〇〇〇〇
「ねぇ!さっきのは何をしたの!それにどうしてそれだけの力を持ってるのに今まで隠していたの!?ねぇ!無視してないで答えなさいよ!!」
そんなことを大声でいい光夜の胸ぐらを掴んで壁に押し付けているのは刹那だ
今2人がいる場所は先程までいた第3アリーナから離れた校舎の裏側の場所で今はこの2人以外は周囲にいないと思われる
それを知ってか刹那は試合が終わるとすぐに光夜の手を掴みこの場所へと連れてくると冒頭のように怒り・焦り・不安といった様々な感情を顕にしながら光夜に問い詰めている現状だ
ここまで我を忘れている刹那を光夜は見たことはない…こともないような気もするけれど男子生徒の胸ぐらを掴んで壁に押し付け、周りに人がいるかもしれないといった状況で大声を出すような彼女は普段からは想像も出来ない
だがそんな刹那に対し光夜の対応は素っ気ない
「何をやったかは想像に任せるよ。俺は勝たせてと言われたから刹那を勝たせただけだ」
そう言外に刹那の質問にまともに答える気はないと伝えると流石に鬱陶しくなったのか刹那の手を掴み自分の胸ぐらから手を離させると続けて口を開く
「一旦落ち着きなって、今は誰もいないからいいけど他の人が来たら厄介だよ」
流石にそう言われればハッと気づいたような様子で次第に落ち着きを取り戻した刹那は一息整えてから言葉を発する
「ふぅ、さっきはごめんなさい。もう落ち着いたわ。でも一つだけ質問に答えて欲しい。さっき何をしたのかはもう聞かないから」
と言い真剣な目をして光夜を見つめる刹那
そんな刹那を見て一つだけぐらいなら答えてもいい、むしろ刹那の性格上ちょっとくらい教えて置かないと後々面倒くさそうな予感がした光夜は「…一つだけだからね」と渋々ながらも答える
とはいえもちろん答えられない質問も少なからずある光夜
そして一つだけ答えることが確約された質問の内容は簡潔なものだった
「光夜は私より強いの?」
そう刹那が問うと少し驚く光夜
予想していたよりも簡単に答えることができる質問だったので光夜は即答する…「今の刹那よりは強いと思うよ」と
(まぁこれくらいなら知られてもいいかな。さっきその場の雰囲気とはいえ簡単に終わらせすぎたし、多分何をやったかなんてあの場にいた人は誰一人として理解出来なかっただろうしね。頭の切れる人ならすぐさっきの現象の異常さに気づいて俺に対する疑惑を抱き始めると思う)
そう考えたうえでの簡潔な答えだ
これならば質問にはきちんと答えているし、光夜が刹那よりも実力が上であるといった事実以外は全く知られることは無いので問題あるまい
とたかを括っていた光夜に対して刹那は
「そう…。確かにさっき光夜が何をしたのかさっぱり分からなかったから私より上だと思っていたわ」
と少し落ち込み気味に呟いたあと何を考え込んだ様を見せたあと続けて光夜に告げた
「じゃあ光夜、私と契約しないかしら?」
「ん?」
突然の展開に流石の光夜も理解がついていってないのか説明プリーズミーと言わんばかりの視線を刹那に向ける
「ごめんなさい、流石に唐突すぎたわね」
「契約っていうのはあれよ…貴方にお願いしたいことがあるのよ。だけどただ私が貴方に借りを作るのはいや、だからこちからも何かしらの対価を払う。そこら辺を踏まえて契約、もとい取引を私として欲しいわ」
そう淡々と告げる刹那
それを聞いている光夜は面倒事の予感を胸にしながら問いかける
「言葉の意味は分かったよ。じゃあ刹那はいったい何を俺に求めるんだ?」
「簡単よ。私を鍛えて欲しい」
光夜の問いに対し刹那の答えはシンプルなものだった
「光夜は私よりも強い。なら私を今よりももっと強くすることが出来ると思うわ。だから私は貴方に鍛えて欲しい、私の目標が達せられるその時まで」
力強く、かつ真剣な眼差しを向けそう告げた刹那
そんな刹那の目を見て光夜は考える
(見た感じ嘘はついていない。まぁこの人の性格からしたら強くなるためにはなんだってするっていう感じがするしなぁ。それに同級生にこうやって頼むってことは思ったよりもプライド的にキツいと思う、頭は下げてないけど。うーん、どうしよっかなぁ)
刹那の気持ちが嘘でないことは容易く分かる
たった2ヶ月とはいえこの学校にいる誰よりも刹那と過ごした時間が多いのだ、彼女の性格の1部くらいは嫌でも理解させられている
だがそれがわかっているからと言ってただ彼女を鍛えるだけでは光夜としては全くメリットがないし、そもそもそんな面倒事をやる気は無い
ただでさえ対抗戦のために無理やり連れていかれた訓練ですらもかなり渋々であったのだ
これ以上雛と過ごす時間が減るようなことを光夜が選択するわけない
だからこそ光夜は刹那に聞く
「それに対するこっちへの対価は?」
契約と言うからには願いに対する対価は必要だ
片手間で済むような簡単な願いならばまだしも刹那の鍛錬して欲しいという願いは片手間で済むような生易しいものではなく、確実に光夜の時間を割く必要性がある
time is moneyという言葉があるように光夜にとって雛と過ごすための時間は掛け替えの無いものであり、それを削るとなればそれ相応の価値のあるものでないと光夜は納得しない
ここで刹那が金や物で対価を支払おうとしたならば確実に光夜はこの話を断っただろう
だがここで刹那の返した答えは予想だにしないものだった
「対価は……光夜がこの学校生活を穏便に過ごせつつ少しでも楽しむことが出来るようにすることよ」
その言葉に驚きを隠せない光夜
ハッキリ言って刹那の提案した対価は対価としてちゃんと成り立つようなものではなく、受け取り方次第では如何様にもなってしまう類のものだ
だからこそ光夜は呆気に取られた
そんな光夜を見て少し満足そうに刹那は言葉を続ける
「この2ヶ月、光夜を見て気づいたことがあるわ。それは貴方がこの学校生活に対して全くといっていいほど興味を持っていないということよ。そういうよりはやる気がない、楽しんでいないって言ったほうがいいかもしれないわね」
「この学校には普通最初からやる気のない人が合格するようなことは起きない、これは周りの人を見ても簡単にわかるわ。誰だって目標や夢を持ったうえでこの学校に来ることを望み選び今通っている、それは私だってその人達と同じよ。でも貴方は違う。私が最初に貴方を見た時から貴方はこの学校に対してまるで興味を持っていない感じだったわ。それに今回の対抗戦に向けての訓練でも普段の授業でもそう、全く全力を出てないようだった。そして今回のことで確信出来たわ。光夜は私よりもずっと強いしもしかしたら本職の人達と比べても遜色無いかもしれない、だけど貴方はそれを隠している。つまり目立ちたくは無いと考えていると思ったの」
そうやって自身の考察を述べる刹那
基本的には他人に対して興味を持っていなさそうな感じであったが以外にも光夜のことをよく観察しているようであながち間違ったことは言っていない
だが別に光夜のことを少し理解することが出来ているといってもそれは学校生活に関してのみ
光夜の本質についてはほぼ理解出来ていない
故に光夜は再度問いかける
「刹那の言いたいことは分かったよ。でもどうやって俺が学校生活を楽しめるようにするの?」
「それにそんな確証もない対価が成り立つと思ってるのかな?」
もとは雰囲気で実力の一端をさらけ出してしまったのは自分の責任なのでバッサリと切り捨てることなく刹那を試すかのような問いを掛ける
とはいえ内心光夜は刹那の提案に乗ってもいいかなぁと思い始めていたりする
それは単純な好奇心からか
もしくは気分屋である性格からか
どのような因子でそんな考えてになっているかは分からないが結局のところ1番大事な点であるメリットとデメリットを天秤にかけたうえで今の問答中に刹那をどう鍛えるかを考え、その結果デメリットがかなり少なくなることが分かった光夜はもう断ったら断ったで面倒くさそうだと考えてたのだ
結局面倒だという事が最重要な気もする
そしてそんな光夜の問いに対して刹那は答える
「まず一つ目として光夜は実力を隠したいのよね?ならこれからもし貴方が力を露見させるようなことになったらそれを私のせいにしても構わない。これなら貴方の実力が知られる可能性は少なくなると思う」
「確かに…それはありかもしれない。今回のこともそうだけど流石に長く学校生活をしてきたらボロが出るかもしれないが俺はあまり目立ちたくない。それを考えたら刹那が全部やったことにすれば全く問題ないね」
「そうよ、私がやったって言えば多分そこら辺の人達なら簡単に信じてくれるわ」
「1つ問題があるとすれば刹那よりも格上の人ならば気づかれる可能性が高いことかな。まっ、そこはこっちで何とかするよ。それで2つ目は?」
「2つ目は…その……〜〜よ。」
急に声が小さくなる刹那
しかも何故か頬を赤らめている
そんな刹那の様子を不思議に思いつつも光夜は尋ねる
「ごめん、何言ったか分からなかったからもう一度言ってもらえる?」
「だから……〜になってあげるといったのよ!」
少し語尾を強めながら刹那はそう言うが肝心なところはボソボソ言っているためまだ聞こえない
そんなに言い難い事なんだろうか
そして光夜が再三問いかけると刹那はついに吹っ切れたのかはっきりとその内容を告げた
「私が貴方の…こ、恋人になってあげるって言ったのよ!」
そう顔を真っ赤にして少し大きめな声で告げた刹那
またしても予想の斜め上を行く提案をしてきた刹那に対して光夜は反射的に答えてしまう
「えっ?やだよ」
そう答えた瞬間光夜は辺りの空気がまるで凍りついたかのような感覚に陥る
そしてそんな冷たい空気になったのも束の間
「光夜、死になさい」
そう底冷えする声で死刑宣告をしつつも、誰が見ても分かるくらいに激怒している刹那が光夜の目の前に降臨してしまった
「あっ、ごめん。つい反射的に答えたわ」
そう光夜が謝るがその内容は更に燃料を投下するもの
結局このあと光夜は激怒している刹那を宥める必要性が出てしまった結果1つ目の提案という対価だけで刹那を鍛える約束をさせられてしまい、キャラ崩壊しかけている刹那によって早速連行されていくこととなってしまったのであった
その間光夜を引っ張っていく刹那の顔は赤らめていながらも少し嬉しそうであったりなかったり
ちなみに何故刹那があんなことを考えるに至ったかは結局のところ分からずじまいであったりする
そんな今日は光夜にとって散々な1日となったのであった
……To be continued




