勇者の証と館の呪い①
依頼人が去り、他の雇われもそれぞれ案内されて部屋に向かった。僕たちは自分の番が来るまでしばらく休憩と雑談だ。
「お疲れ様、熱い交渉だったね、エロイーズ」
「お疲れリズっち! いい感じの依頼にまとめてくれてアリガト! おかげでやる気出てきちゃった!」
「はい、ありがとうございます、お二人とも。……依頼が何とかまとまって良かったです」
エロイーズが胸を撫でおろす。その顔にはまだ汗の跡が残っており、彼女の緊張が伝わってくる。
「それにしても、君たち……」
「はい?」
「ん?」
僕の視線に、ジグルドとエロイーズが不思議そうな顔で見返してくる。
「いや、魔道猟兵らしからぬ性格だなぁって思っただけさ。君たち、依頼人とケンカになったり、始まる前から交渉決裂したりしたこと無いかい?」
この二人、これまでの僅かな会話ですらわかるくらいの善人である。
しかし悲しきかな……魔道猟兵に依頼をよこす奴の半分(当社比)はクソ客であり、仕事の七割はクソ依頼(こちらも当社比)である。
僕らの事務所が客も仕事もロクに選べない零細だからじゃないか? という悲しき事実は一切無視だ。
そんな魔道猟兵の世界に善人とは、それだけで居辛いものがあるだろう。今回はシーゲル氏も結構な人格者だったから上手くいったけど、こんな依頼人はガチャ大当たりで、めったにある者じゃない。
ジグルドとエロイーズは顔を見合わせると、たはは、と二人で恥ずかしそうに笑った。
「実を言うとな、俺っちたち、まだ見習いなもんで、フィオナの姉御が紹介してくれた依頼をやってんだよ」
「私たちに相性の悪い依頼、依頼人は、所長が全て除いてくれていたのだと思います」
「ふぅん」
「成程ねぇ……」
イリスと顔を見合わせる。
「ん? なんだよ二人とも、その意味ありげな表情は」
「気にしないで、君たちが相当強いってことが確定しただけだから」
「んっふっふ~、君たち、フィオナっちに相当期待されてるんだねぇ。こりゃあ頼りにできそうだね」
うんうんと、薄い胸を張って偉そうにうなずくイリス。だけどまぁ、否定はできない。
フィオナもこの二人に負けず劣らず……というかさらにパワーアップした嫌味っぽいまでのマキシマム善人なんだけど、それ以上に歴戦の魔道猟兵であり、一事務所の主でもある。
彼女は猟兵の評価に一切の私情も感情も、同情も挟まない。「足りない」と判断すればどんな奴でも即座に切るし、その目利きは恐ろしく正確だ。
そんな彼女が依頼をわざわざ選別するほど気に掛ける……という時点で、この二人の実力と期待値のほどが伺える。
「えと、なんかよくわかんねぇけど、ありがとうございます?」
「なんか、正面からそのような評価を頂けると、照れますね」
エロイーズが顔を赤くして頷く。と、メイドさんが来た、雑談も一旦切り上げだ。
「失礼いたします。お客様方、お部屋でご案内をさせて頂きます」




