仕事仲間
「失礼いたします。ディアマンテ魔道猟兵事務所から派遣されてまいりました」
「ちっす! 失礼しやっす」
入って来たのは男女……と言うより少年少女二人組。年のころは僕らよりほんの少し上、十代後半から、ギリ二十代に入るか入らないかくらいだろう。
女性の方は160前後、細い体を包むのは聖職者が切るローブタイプの戦闘用魔道服……無宗教の僕にはどこの服だかは解らないけど、とりあえず相棒の実家の宗教ではない事だけは、イリスが死ぬほど嫌な顔をしなかったことから理解。
白銀と薄青の混じった髪の下には、水晶のような透明な輝きを秘めた瞳。
柔和な微笑みが浮かべたその佇まいは、出会った場所と紹介が無ければ完全にただのシスターさんだと思っただろう。
もう一人の少年は大柄だ、身長190に近く、しっかりと鍛えているようで、身長に負けない厚みを、軽装の鎧で覆っており、居るだけで威圧感がある。
短く刈り上げた金髪の下には緑の目。左目に残る傷跡が印象深い。
自信にあふれた、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべるその顔は、大柄な体とは裏腹にどこか幼い印象を与えてくる。……何というか、ガキ大将がそのまま大きくなっちゃったみたいな印象だね。
二人とも、第一印象では悪い感じは覚えない。…………ある一点を除けば。
「……あの、どうかなさいましたか? 何か……何とも言えない、すさまじい表情をされていますが?」
「あ~~、い~のい~の。こいつ、フィオナっちが嫌いなだけだから」
「は……はぁ……所長は立派な方だと私は思っていますが、万人に好かれることは不可能ですからね」
「ああいや、気にしないで良いよ、ごめんね。突然予想もしてない名前が出て驚いただけだから。仕事はきっちりするし、事務所で仕事仲間を差別はしないから安心して」
慌ててフォロー。今度は少年が割って入る。
「ん? 俺らと同年代で、所長が嫌いで、背負ってんのはでっかい剣……。もしかして、おま、じゃねぇ、貴方、ケイとイリス……じゃねぇじゃねぇ。ケイさんとイリスさんか?」
「正解。君の所の所長とも不本意ながら何度も一緒に仕事をさせてもらってるよ……え~~っと」
向こうはこっちの名前を知っていたのでばつが悪いけど、さすがに他事務所の一般所員まで覚えちゃいない。
そのことに気づいたのだろう、少年がぽりぽりと後頭部を掻く。
「あ……サーセ……じゃねぇ。すみませんでした。俺はジグルド・ガルギン。機盾士でフィオナの姉御のとこで勉強させてもらってます。んで、こっちが……」
「エロイーズ・ダフィールドと申します。聖晶術を嗜んでおります。以後、ご指導のほど、よろしくお願いいたします」
ぺこりと二人して頭を下げた。う~ん、僕らなんてそんなに偉いわけじゃ無いんだし、そんなに畏まられると逆にこそばゆいというか、やりにくいね。
「ありがと、知ってるみたいだけど、一応自己紹介をしておくと、僕はケイ。職業は前衛剣士、よろしくね」
「やっほ~、私はイリス。後衛で専攻は光と熱の魔術だよ、よろしくね、エっちゃん、ジグちゃん」
軽く頭を下げる僕の横で、イリスもぶんぶんと手を振る。エロイーズがつられたように小さく手を振り返した。
「さて、じゃあ自己紹介も終わった所で、これから仕事をしていく上で、一番大事な取り決めをしたいんだけど、良いかな?」
僕の一言に、二人の顔に緊張が走る。そっか、二人からすれば僕らは自分たちの所長とも肩を並べる、歴戦の先輩に写ってるのか。
ちょっとした意地悪で沈黙、少しの引き延ばし。
「僕らにはタメ口で良いよ。特にジグルドは大分無理してるみたいだし、年も似たようなものだしね。あんまり肩肘張られると僕も正直やり辛いし、気楽にいこうよ」
一瞬の沈黙。イリスも隣でさも当然とばかりにニコニコしている。
先に僕の言葉の意味を理解したジグルドが、にかっと豪快な笑みを浮かべる。
「っしゃ! 俺もそっちのが助かるぜ。よろしくな! ケイ!」
握手を求められたので、素直にその手を握り返す。
見れば、隣のエロイーズもおずおずと、目の前のイリスと握手を交わしていた。
うん、今日の仕事仲間は、おそらく大当たりだろう。




