第6話:ふたりの距離を縮めるカタチ
それは、限られた時間のなかでようやく会えたときのことだった。 何ヶ月ぶりかの再会だったとしても、お互いに「久しぶり」「髪伸びたね」と、照れくささをごまかすようにあえていつも通りの、ごく自然な言葉を交わす。 遠く離れた離れ離れの日常から、一瞬で同じ空間にワープしたような、不思議で愛おしい空気感がそこにはあった。限られた数日間のデートの時間は、驚くほどの速さで過ぎ去っていき、別れ際の駅のホームではいつも名残惜しさが胸を締め付けた。
一緒に過ごせる時間が限られているからこそ、会えない時間を埋めるように、お互いのかたちを目に見えるものにしようと、ふたりは色々なことを試した。 そのひとつが、ペアリングを一緒につくることだった。 もちろん、相手の指のサイズなんて分からない。だから私は、Amazonでリングゲージを手配し、相手の家に直接送り届けた。 突然届いたリングゲージに、彼女からは「初めてリングゲージ送る人見たよ!」なんて笑い交じりの連絡が来たのを覚えている。「自分も初めて送ったよ、これからもずっと使えるものだと思うから使ってやって」と伝えると、彼女は迷うことなく、最初からすんなりと「左手の薬指」のサイズを測って教えてくれた。その自然な仕草に、どれだけ胸が熱くなったことか。お互いの誕生石を指輪に埋め込んで完成したお揃いの指輪は、離れていてもお互いを指先で感じられる、かけがえのないお守りとなった。
そして、さらに思い切ったことも仕掛けた。 SNSで見かけた、コピーして使える「結婚宣言書」のフォーマット。「練習用だからね」なんて照れ隠しの言葉を添えつつ、そこに自分の名前をしっかりと書き込み、付き合った日付を丁寧に記した。そしてそれを、レターパックライトで彼女の住所へと郵送したのだ。 数日後、それを受け取った彼女から連絡がきた。 「本当に名前が書いてある……!」 「なに? ちゃんと形として残してくれるの……?」 「そんな事までしてくれるの……?」 驚きと、隠しきれない喜びが入り混じったような彼女の声。後日、「わざわざダイソーでフレームを買ってきたんだよ」と、そこに大切に入れて部屋に飾ってくれている写真が送られてきた。そのフレーム越しに写る宣言書を見て、照れくささと同時に、愛おしさがこみ上げてきた。
遠く離れた場所からでも、こうして本気の想いを形にして届けること。 派手なサプライズや、いつでもすぐに会える環境ではないからこそ、不器用ながらも自分たちなりのやり方でお互いの存在を確かめ合い、未来へと結びつけていく。 それは、遠距離という歯痒さを乗り越えようとする、ふたりだけの愛おしい足跡だった。




