表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二百代目勇者、今日は低気圧につき休みます  作者: 灯吉郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第三話 名前のない勇者

「……じゃあ、今後のためにも、各自の野営道具は必要ってことですね」


「そうなるね。とりあえず、馬だけ買っちゃおうか」


スイの問いかけに、勇者が答える。

ほぼ液体になったシャーベットを、スプーンで弄ぶ。



「馬車を引かせるならば、やはり二頭は欲しいですな。一頭は儂が買いましょう」


「わらわの分は、圧縮魔法を使うので気にするな」


「ラナも、旅慣れてそうだね」


「まぁ、そこそこな」


少し得意げに胸を張る。



「じゃ、俺がもう一頭買って、スイの荷物も乗せよう」


「いいんですか……!?」


「誘ったの、俺だし」


ドーガが目を細める。



「では、また一度解散ですかな」


「依頼ってさ、受けた街じゃないと報告ムダ?」


「薬草などの採取系でしたら、どこの

街でも同じ内容ですな。

依頼は受けずに、採取しておくといいですぞ」


「なるほどねー!」


ドーガの言葉に、勇者が頷く。



「ラナ、明日の天気は?」


「しばらく晴れじゃ」


「じゃ、今日は荷物買って、明日確認して、大丈夫そうなら出発しよう」


「分かりました」


頷き、席を立つ。



「明日は、酒場の方で待ち合わせしようか」


「かしこまりました」


「では、また明日」


食堂を出て、それぞれ歩き出す。



「……あの、勇者、様……!」


スイが、追いかけて来た。


「うん? どうかした?」


「はい。あの、良かったら、一緒に野営道具を見ませんか……?」


少し息を切らせながら、伝える。


「あーそっか、何が必要か分からないよね」


「はい、すみません……」


「気にしないで、俺もこれから選ぶし。ふたつ買ったら、オマケしてくれるかもだし」


楽しげに片目を瞑る。


「ふふっ」


(勇者様なのに、意外と庶民的……)



この国に生まれたなら、まず聞かされるのが、『二千年前の勇者』の冒険譚だった。


自然に憧れ、それぞれの役職を目指し、自己研鑽に励む。


(憧れの勇者様……)


だけど、今代の勇者の評判は、あまりよくなかった。


(噂だけじゃ、分からないな……)



道具屋に入る。


「おいちゃーん。野営道具、見繕って。あと、値引きして」


「おお、勇者よ。いよいよ出発すんのか! よし、餞別な!」


(すごい、お得意様なのかな……?)



「あとさ、馬ってどこで買えるの?」


「一頭でいいなら、お前の家から持っていけるだろ」


「あ、そうなの? ラッキー」


「相変わらず適当だな」


道具屋の店主が、背負い袋をふたつ用意する。



「今代。そこのお嬢ちゃんの分だが、鍋は無しでいいよな?」


「確かに、そんないくつも要らないか。保存食と、水筒と、毛布、ロープ、ランタン、寝袋、テント?」


「そんなもんだな、結構あるぞ」


「それを馬に持たせたくてさ。で、ゆくゆくは馬車にしたくて」


「なるほどな。そりゃ大事だな」


店主が頷いて、別の袋を持ち出してくる。


「それなら、馬に乗せる用と、持ち歩き用と分けるべきだな」


「おいちゃん! 助かるー!」


「はは。うちも老舗の道具屋だからな」


(そっか。歴代の勇者様たちが、このお店を利用していたのかな……)


「はい、お嬢ちゃんの分ね」


「ありがとうございます!」


「今代は、こっち」


「ありがと!」


「おう。生きて帰ってこいよ! その頃には、お前の子も大きくなってるだろうしな」


「確かに! 抱っこ出来るといいなぁ」


「毎日祈っててやるよ」


「助かるー」


(……え……?)


「勇者様って、ご結婚されてたんですか……?」


「してないよ」


サラッとした答えに、一瞬戸惑う。



「……え、でも」


「『勇者の家』は、まぁ、ちょっと特殊だもんな」


「結婚してなくてもさ、後継者は出来るんだよね」


道具屋の店主と、勇者の言葉。


単語として耳には入る。


しかし、理解が追いつかない。



「じゃあね、おいちゃん」


「おう。またな、今代」


勇者が、ひらりと手を振る。


(勇者様の旅って、私が思っていたのよりも──遥かに、)



「スイ」


「はい……!」


勇者と目が合う。



「……ルシンダに言えば、パーティ抜けられるから。無理そうだったら、言って」


じっと見つめられた。


言葉が見つからない。



「……あとさ」


「はい……」


一歩、近づく。



「勇者、様……?」


耳元に、唇。



「……おいちゃん、会計忘れてる」


「……あ」


「じゃ、また明日」


スッと離れて、悪戯な笑みを浮かべる。


ひらりと手を振り、二人分の荷物を持って歩いていく。


(──私、は)




──翌日。


酒場に、四人が集まっていた。


「じゃあ、最終確認。このパーティから外れたい人は、手を挙げてください!」


「わらわは立候補ゆえ、無い」

「儂の死出の旅路として、申し分ございません」


「デスロード辞めてくれる?」


「私も、行きます」


「いいの、スイ?」


「はい。不束者ですが──」


「そういえば、それぞれのレベルも知らなんだな」


「そっか、忘れてた」


勇者が頷く。


「じゃあどうする?」


「ステータス見るなら、二階の部屋使いな!」


ルシンダが声を掛ける。


「ありがとう!」


個室の鍵を受け取り、二階へ上がる。


扉を開けると、談話室だった。


丸いテーブルに、椅子が四客。


それぞれ腰を下ろす。


「じゃ、ステータスフルオープン出来るね。嫌だったら、フルじゃなくていいよ」


「儂は構いませぬので、失礼致す」


ドーガのステータスが、目の前に展開される。


実際には触れられないが、脳が魔力を感知し眼前に広げている。



【ドーガ】

種族:人間、職業:戦士

年齢:48、レベル:42


HP:高、MP:低

筋力:A、耐久:A

敏捷:C、魔力:E


保有技能:

・斧術Lv7 ・盾術Lv6 ・野営Lv5 ・索敵Lv4


状態:

《古傷:右膝》

雨天時、敏捷・持久力低下


称号:

《元・国境警備兵》 《百獣殺し》



(デバフまで見えるんだ……)


初めて見るフルオープンに、スイが喉を鳴らす。



「結構高いね」


「デバフが掛かりますが……」


「承知の上だよ」


「わらわもフルで良い」



【ラナ】

種族:ハーフエルフ、職業:魔法使い

年齢:120、レベル:35

HP:C、MP:A

筋力:E、耐久:D

敏捷:C、魔力:A+


保有技能:

・氷魔法Lv6 ・空間圧縮Lv5 ・生活魔法Lv5 ・湿度制御Lv4 ・魔力感知Lv4


状態:

《長命種》 老化速度低下

《混血》 一部高位精霊魔法の使用不可


称号:

《北の放浪者》 《霧森の魔女》 《百年生存者》



「わ、私は……」


「いいよー。無理しなくて」


「……ですが、パーティですし……」


手を握りしめ、念じる。



【スイ】

種族:人間、職業:僧侶

年齢:21、レベル:19

HP:D、MP:B+

筋力:E、耐久:D

敏捷:C、魔力:B

精神:A


保有技能:

・回復魔法Lv4 ・浄化魔法Lv3 ・補助魔法Lv3 ・祈祷Lv2 ・薬草知識Lv2


状態:

《雨天弱》 長時間の雨天環境下で精神力低下

《実戦経験不足》 複数敵との戦闘時、魔法成功率微減


称号:

《癒しの芽》 《聖鐘教会・見習い僧侶》



「最後は俺ね、見てもあんまり楽しくないけど……」



【今代】

種族:人間、職業:勇者

年齢:20、レベル:40

HP:A、MP:A

筋力:A、耐久:A

敏捷:A、魔力:A

精神:A+


保有技能:

・剣術Lv7 ・体術Lv7 ・魔力感知Lv5 ・野営Lv5 ・索敵Lv5 ・危機察知Lv6 ・対魔物戦闘Lv6 ・生活魔法Lv3


状態:

《低気圧弱》 雨天・低気圧環境下で頭痛発生

集中力・行動意欲低下

《勇者適性》 対魔族・対魔物時、全能力微上昇

《次代継承済》 勇者因子継承完了


称号:

《今代の勇者》 《勇者の家》 《魔王討伐適性》 《二百代目》



沈黙が落ちる。


(儂とレベルがふたつしか違わぬとは……!)


(え……名前は……ないの?)


「これはこれは、壮観ではないか」


「そう? ありがと」



ラナの言葉に、勇者が微笑む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ